軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 2

【乱入】競馬場メシの財務卿 vs 竜王の火力

「甘いな、リュウ。貴様のラード使いは、まだ理性のブレーキがかかっている」

黒いスーツの男――財務卿ルーベンスが、不敵な笑みを浮かべて厨房に足を踏み入れた。

彼は懐から、怪しげな「銀色の小袋(謎の白い粉)」を取り出した。

「な、何だそれは……?」

リュウが手を止める。

「これは、帝都の競馬場の横にある、薄汚い中華屋台だけで流通している『魔法の粉(中毒性調味料)』だ」

「ま、魔法の粉ぉ!?」

カイトが震え上がる。

ルーベンスは遠い目をした。

「負けた日の競馬場帰り……。懐も心も寒い時に食べる、あの店の炒飯。古米の臭みを消すために大量に投入される胡椒、具材の少なさを誤魔化すための濃い味付け、そして脳髄を直撃するこの白い粉……!」

ルーベンスが、カイトの用意した中華鍋を奪い取る。

「それこそが、私の求める『背徳の炒飯』だ!」

ジュワァァァァッ!!

ルーベンスは、リュウ以上の油を鍋に注ぎ、さらに「魔法の粉」をドサッ! と投入した。

厨房に、食欲をそそると同時に、少し頭がクラクラするような刺激臭が広がる。

「くっ……! なんてジャンクな香りだ! 財務卿のくせに、舌が庶民すぎるぞ!」

リュウが驚愕する。

「黙れ! ストレス社会を生き抜くには、この『毒』が必要なのだよ!」

ルーベンスが鍋を振る。

ラードと謎の粉が舞い踊る、財務卿渾身のインモラル・クッキング。

だが、その時。

「――笑止!!」

ドォォォォォンッ!!!

厨房の奥から、凄まじい熱波が吹き荒れた。

あまりの熱さに、カイトの前髪がチリチリと焦げる。

「熱っ!? なに!?」

「炒飯の『炒』は、火偏に少ないと書く。……つまり、水分を飛ばし、極限まで火を通すことこそが真髄!」

黄金のオーラを纏って現れたのは、竜王デュークだった。

彼は腕組みをしたまま、第三のコンロの前に立った。

「貴様らの火力は、所詮ガスコンロの火遊びに過ぎん。……見せてやる。竜の『火力』というものを」

デュークがカッ! と口を開いた。

喉の奥で、赤熱した光が収束していく。

「え、ちょ、デュークさん!? ここ屋内だよ!?」

カイトが叫ぶが遅い。

「『 竜王爆炎覇(ドラゴン・ブレス・フライ) 』ッ!!!」

ゴォォォォォォォォッ!!!

超高熱のブレスが、中華鍋の米を一瞬で包み込んだ。

数千度。

鉄鍋が赤く発光し、米の水分が一瞬で気化する。

「おおお! 米が……米が空中で踊るどころか、浮いている!?」

リュウが実況する。

「爆発的な熱対流で、米粒が重力から解放されているのだ! ……これぞ、究極のパラパラ炒飯!」

デュークは鍋を振らない。

ただブレスの風圧と熱だけで、米をコントロールしている。

もはや料理ではない。製鉄所の光景だ。

「くっ……! 負けてたまるか!」

リュウがラードを追加投入する。

「この粉を食らえぇぇ!」

ルーベンスがさらに白い粉を振りかける。

「燃えろぉぉぉ!!」

デュークが火力を上げる。

カイト農場の厨房は、地獄の業火と、ラードの煙と、謎のスパイス臭が入り混じる、カオスな空間へと変貌した。

「けほっ……けほっ……! 目が、目がぁぁ!」

カイトは煙の中で涙目になっていた。

(僕の作りたかった、平和な黄金炒飯はどこへ……?)

だが、男たちの戦いは止まらない。

そこに、最強にして最恐の「料理番長」が、静かに包丁を研いで近づいてくることを、彼らはまだ知らない。