軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十四章 熱闘!男達の炒飯対決

【開戦】カイトの炒飯と、元サラリーマンの矜持

カイト農場の昼下がり。

今日のランチは、カイトが腕を振るった「特製・ 黄金炒飯(チャーハン) 」だった。

「はい、お待たせ! Sランクの『 極(きわみ) たまご』と『癒やしネギ』をたっぷり使ったよ!」

カイトが中華鍋を振り、湯気の立つ皿をテーブルに並べる。

黄金色に輝く米粒。

鮮やかなネギの緑。

そして、食欲をそそる焦がし醤油の香り。

「まぁ! なんて美しい色ですの!」

リベラが目を輝かせる。

「いただくわ! ……ん~っ! 美味しい!」

ルチアナがスプーンを口に運び、頬を緩ませた。

「パラパラで、ふわふわね! 卵の甘みが口いっぱいに広がるわ!」

ラスティアも絶賛だ。

カイトの料理スキルとSランク食材の暴力的な旨味が融合した、まさに非の打ち所がない一品。

「ふふ、よかった! おかわりもあるからね!」

カイトがエプロン姿で微笑む。

平和なランチタイム。

……だが、一人だけスプーンを止めている男がいた。

元勇者リュウである。

彼は一口食べたところで動きを止め、眉間に深い皺を寄せて震えていた。

「リュウさん? どうしたの? 口に合わなかった?」

カイトが心配そうに尋ねる。

リュウはゆっくりと顔を上げ、カイトを睨みつけた。

「……甘い」

「え? 砂糖は入れてないよ?」

「違う! 味じゃない……『 精神(スピリット) 』が甘いと言っているんだカイトォォッ!!」

ダンッ!!

リュウがテーブルを叩いて立ち上がった。

その背後には、かつて日本のブラック企業で働き、深夜の残業飯に命を救われてきた「社畜・シンジ」の亡霊が揺らめいている。

「いいかカイト。この炒飯は確かに美味い。Sランク食材の旨味が上品にまとまっている。……だがな!」

リュウが熱弁を振るう。

「これは『炒飯』じゃない。高級ホテルの『ピラフ』だ! こんなお上品な味じゃ、男の疲れた胃袋は満たせねぇんだよ!」

「えええ!? ど、どういうこと!?」

「俺が求めているのは……もっとこう、『暴力』だ!」

「ぼ、暴力!?」

リベラが聞き捨てならない単語に反応する。

リュウは遠い目をした。

「深夜2時。終電を逃し、タクシーで帰る途中に寄る、ガード下の汚い中華屋……。床は油でヌルヌルし、換気扇は唸り声を上げている……」

リュウの語りに、謎の哀愁が漂う。

「そこで出される炒飯は、ラードでギトギトにコーティングされ、化学調味料(魔法の粉)が致死量スレスレまで投入されている! ……だが、それこそが! 疲弊したサラリーマンの魂を癒やす『男の炒飯』なんだよォォッ!!」

「り、リュウさん……?」

「どけカイト! 俺が見せてやる……。本当の『炒飯』というやつを!」

リュウがカイトから中華鍋とお玉を奪い取った。

彼は着ていたシャツの袖を捲り上げ、冷蔵庫(氷室)を指差した。

「おいリベラ! 在庫にある『オークキングの 背脂(ラード) 』を持ってこい!」

「は、はい!?」

「あと塩だ! 岩塩じゃない、精製された食卓塩だ! 胡椒もだ! 粗挽きじゃない、粉末の安いテーブルコショーだ!」

リュウの目に狂気が宿る。

彼は、カイト農場自慢のSランク 食材(オーガニック) を拒絶し、あえてジャンクさを求めた。

ゴオォォォォッ!!

コンロの火力を最大にする。

「見てろ……! 鍋肌から煙が出るまで熱するんだ!」

ジュワァァァァァッ!!

大量のラードが溶け出し、厨房に背徳的な脂の匂いが充満する。

「うわっ、すごい匂い……! でも、なんかお腹が空く匂いだ!」

カイトが鼻をクンクンさせる。

「そうだ……これだ! この匂いこそが『街中華』の真髄!」

リュウが米を投入する。

ガコンッ! ガコンッ! ガコンッ!

鍋を振る音が、戦場の砲撃音のように響き渡る。

「オラオラオラァッ! 米の一粒一粒に脂を吸わせろ! カロリーこそが正義だァァッ!」

元勇者の腕力で振られる鍋の中で、米たちが激しく舞い踊る。

それはもはや料理ではない。格闘技だ。

「……ほう。面白そうじゃないか」

その時、食堂の入り口から、黒いスーツ姿の男が現れた。

財務卿ルーベンスである。

「競馬場帰りで小腹が空いていたところだ。……その『男の料理』、私も一口噛ませてもらおうか」

「ルーベンス!?」

「フッ……私とて独身貴族。『競馬場横のボロい店』の炒飯の再現には、少々うるさいぞ?」

さらに、奥の座敷から竜王デュークも立ち上がった。

「笑止。……貴様らの火力は 温(ぬる) い」

デュークの口元から、チラチラと炎が漏れている。

「炒飯とは『炎の芸術』。……竜のブレスで仕上げてこそ、真のパラパラ感が生まれるというもの」

カイト農場の厨房に、男たちが集結する。

ただ「美味い炒飯」を作るために。

プライドとカロリーを懸けた、仁義なき「最強炒飯決定戦」の火蓋が切って落とされた。