軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 7

【開幕】It's Show Time! 1LDKから銀河へ

静寂。

カイト農場の特設野菜ステージの中央で、リーザはうつむいていた。

視聴者数50億人。

コメント欄には、『なんだこの小娘?』『AIの方が良かった』『天使ちゃんの余韻に浸らせろ』という辛辣な言葉が流れている。

だが、リーザはもう、それらの言葉に怯えてはいなかった。

彼女はマイク(アスパラガス)を強く握りしめ、背後のバンドメンバーに合図を送った。

(……いくわよ。私の「 現実(リアル) 」を、あんた達に叩きつけてやる!)

リーザが右手を振り上げた瞬間。

ベンッ!!

竜王デュークが、極太のベース(素材:鉄のゴボウ)をスラップ奏法で弾いた。

ファンキーで重厚な低音が、ビリビリと空気を震わせる。

ドコドコドコッ!

元勇者リュウが、ドラム(素材:巨大カボチャ)を叩きまくる。

イントロが始まった。

リーザが顔を上げた。その瞳は、獲物を狙う猛獣のようにギラついている。

『All: 愛!アイ!愛!アイ!ラ~ブラブ!』

リーザが叫ぶ。

それに合わせて、ステージ袖のカイト、ルチアナ、リベラ、ラスティアたちが一斉に合いの手を入れる。

『All: (Fu Fu!)』

『All: マネー!マネ!ローン!ダーリン!グ!』

『All: (Yeah!!)』

会場がざわめいた。

『おい、今なんて言った?』

『マネーは分かるが……**ローン(借金)**って言わなかったか?』

『アイドルの歌詞に「ローン」が入ることある?』

だが、そんな困惑を置き去りにして、リーザはステップを踏み始めた。

七色に光るキノコの照明が、彼女の激しいダンスを彩る。

【1A】

『♪朝に目覚ましがなったわ』

(カイトたち:『ジリリリ!』)

『♪私はまだ眠いわ』

(カイトたち:『おはよー!』)

リーザの歌声は、先ほどのAIのような完璧さも、天使のような清らかさもなかった。

だが、そこには生々しい「生活感」があった。

髪を振り乱し、「眠い!」という表情で歌う姿。それは、銀河中の誰もが経験する「朝のダルさ」そのものだった。

『♪朝シャンしなきゃ』

(カイトたち:『Fu!』)

『♪朝メニュー食べなきゃ』

(カイトたち:『パクパク!』)

『♪鏡の前で メイクをしなきゃ』

(カイトたち:『魔法をかけて~!』)

リーザが、必死にメイクをするパントマイムを見せる。

クマをコンシーラーで隠し、笑顔を作り、アイドルという「虚像」を作り上げる工程。

それを見た視聴者たちの反応が、少しずつ変わり始めた。

『……なんか、分かる』

『俺も毎朝これだわ』

『AIにはこの「必死さ」は出せないよな……』

そして、曲はBメロへと突入する。

ここからが、リーザの真骨頂だ。

【1B】

『♪さぁショーの始まりよ』

(カイトたち:『It’s Show Time!』)

リーザがステージの前方へ走り出した。

彼女はカメラ(浮遊する目玉の魔物)を指差し、自身の「現状」を高らかに歌い上げた。

『♪のんびりな私は 1LDKに置いて行くわ』

(カイトたち:『バイバイ!』)

『い、1LDK!?』

『アイドルが間取りを公表したぞ!?』

『庶民だ! 俺たちと同じ庶民だ!』

コメント欄が爆発的に加速する。

1LDK。

それは狭く、慎ましく、しかし夢が詰まった空間。

リーザは、そんな「みすぼらしい自分」を部屋に置き去りにして、今この瞬間だけは輝くのだと宣言したのだ。

『♪扉を開ければ 私が主人公』

リーザがポーズを決める。

背後から「ドライアイス大根」の白煙がドォォォン! と噴き上がり、彼女の姿を神々しく包み込んだ。

それに合わせて、最前列でペンライト(大根)を振っていたカイトが、喉が裂けんばかりに叫んだ。

『オ・レ・の! アイドルー!』

その熱狂は、電波に乗って全次元へと伝播した。

完璧な偶像ではない。

金に汚れ、生活に疲れ、それでも輝こうとする泥臭い少女。

『推せる……!』

『頑張れ1LDK! 負けるなローン!』

50億人の心が、リーザの方へと傾き始めた。

そして、曲はいよいよ、彼女の欲望が爆発するサビへと突入する。