軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 6

【開演】ライバルは『完全AIアイドル』と『清純派天使』

『――さあ、 刻(とき) は来た!』

『全次元の視線が今、ここカイト農場に注がれる!』

上空のホログラムスクリーンに、司会者の熱狂的な声が響き渡った。

視聴者数カウンターは、開始直後にして**『50億人』**を突破。

神界、魔界、人間界、そして未知の異世界からもアクセスが集中し、サーバー(魔導クリスタル)が悲鳴を上げている。

「す、すごい数……」

ステージ袖で出番を待つリーザは、モニターの数字を見て震えていた。

彼女の心臓は早鐘を打ち、手汗でマイク(アスパラガス)が滑りそうだ。

『それではトップバッターの登場だ!』

『機械帝国からの刺客! 感情なき歌姫、コードネーム:マキナ!』

ウィィィィン……。

ステージに転送されてきたのは、全身が銀色の金属で構成された、美しいアンドロイドだった。

「ターゲット確認。歌唱プログラム、起動」

マキナが口を開いた瞬間。

ピピピピピ……♪

一分の狂いもない、完璧な電子音が響き渡った。

音程、リズム、ビブラート。全てが数値的に「正解」とされる、ミスのないシンフォニー。

『おおっと! これは完璧だ! 人間には不可能な超高速ボイス!』

『コメント欄も「機械こそ至高」「ミスがないから安心して推せる」と絶賛だァ!』

リーザが息を呑む。

(……勝てない。あんな正確無比なパフォーマンス、生身の私には無理よ……)

『続いてのエントリーは、神界代表!』

『清貧こそ正義! 質素倹約の歌姫、大天使セラフィナ!』

パァァァァァ……!

次に現れたのは、純白のドレスと翼を纏った、眩いばかりの天使だった。

彼女は竪琴を奏でながら、清らかな声で歌い始めた。

『♪お金なんていらないわ~ 霞(かすみ) を食べて生きましょう~』

『♪贅沢は敵よ~ 清貧こそが魂の輝き~』

その歌声を聞いた瞬間、会場(農場の魔物たち)や視聴者たちが涙を流し始めた。

『あぁ……心が洗われる……』

『俺、金なんて汚いもの捨てるよ……』

『スパチャなんてやめて、募金しよう……』

リーザの顔色が土気色になった。

(や、やばい……! 営業妨害よ! あんな「金は敵」みたいな歌が流行ったら、私の100億計画が……!)

「……無理」

リーザが後ずさりした。

「勝てないわ。完璧なAIに、心を浄化する天使……。私なんて、ただ金とダイヤが欲しいだけの、強欲な小娘じゃない」

彼女の足が、逃走ルート(出口)へと向く。

100億は惜しいが、ここで恥をかくよりはマシだ。

半額シール生活に戻ろう。それが私の分相応なんだ。

ガシッ。

その時、誰かがリーザの肩を強く掴んだ。

「……カイト?」

振り返ると、そこにはペンライト(発光大根)を両手に持ったカイトが立っていた。

彼は真剣な眼差しで、リーザを見つめていた。

「リーザちゃん。逃げるの?」

「だ、だって……あんな完璧な連中に勝てるわけ……」

「完璧だから何さ!」

カイトが珍しく声を荒らげた。

「機械は間違えないかもしれない。天使は綺麗かもしれない。……でもね!」

カイトは、ステージで清らかに歌うセラフィナを指差した。

「みんな、本当は『お腹いっぱい食べたい』し、『お金持ちになりたい』んだよ! 綺麗事だけじゃ、お腹は満たされないんだ!」

「カイト……」

「リーザちゃんは違うでしょ? 『あれも欲しい、これも欲しい』って、誰よりも正直に叫べるでしょ? ……そんな君だからこそ、みんなの『 本音(よくぼう) 』を代弁できるんだよ!」

カイトの言葉が、リーザの胸に突き刺さった。

そうだ。

私は強欲だ。

でも、それは恥じることじゃない。生きる 力(エネルギー) だ。

『さあ、最後のエントリーだ!』

『カイト農場の最終兵器! 彼女は一体何を歌うのか!?』

「……行ってこい、リーザちゃん!」

ドンッ!!

カイトがリーザの背中を、思いっきり突き飛ばした。

「きゃあっ!?」

勢いよくステージの中央に飛び出すリーザ。

無数のスポットライト(キノコ)が彼女を照らし出し、50億人の視線が突き刺さる。

もう、逃げ場はない。

リーザは覚悟を決めた。

彼女はゆっくりと顔を上げ、マイクを握りしめた。

「……そうよ。清貧? 完璧? 知ったことじゃないわ」

リーザの瞳に、ギラリとした『¥』マークの炎が宿った。

「私が教えてあげるわ。……この世で一番気持ちいいのは、『愛と金(Love & Money)』だってことをね!」

バンドメンバー(リュウ:ドラム、デューク:ベース、ラスティア:キーボード)が楽器を構える。

さあ、伝説のライブの始まりだ。