軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【特訓】ルチアナのボイトレと、ラスティアのダンス指導

カイト農場の特設野菜ステージ。

その裏手にある 控室(ビニールハウス) から、断末魔のような悲鳴が轟いていた。

「ぎゃあああああああッ!! 折れる! 背骨が! 物理的に不可能な方向に曲がってるぅぅッ!」

「甘ったれるな! アイドルは笑顔よ! 股関節が外れようとも、カメラの前では微笑むのよ!」

バキィッ!!

鈍い音が響く。

「ひぐっ……!」

フロアで海老反りになっているのはリーザだ。

そして、彼女の背中に乗り、無理やり柔軟体操をさせているのは、ジャージ姿の魔王ラスティアである。

「いい? 優勝するためには、AIアイドルの正確無比なダンスに勝たなきゃいけないの。……必要なのは、『悪魔的柔軟性』と『 魅了(チャーム) 』よ」

ラスティアがリーザの顎をクイッと持ち上げた。

その瞳が妖しく赤く光る。

「私の目を見なさい。……そして、この空間の全てを支配するつもりでウインクしなさい」

「こ、こう……?」

リーザが引きつった笑顔でウインクする。

「違う! それじゃただの目の痙攣よ! もっとこう……『あんたの全財産、私が使ってあげるわ♡』っていう強欲さを瞳に込めなさい!」

「ぜ、全財産……!」

リーザが脳内で100億ゴールドを想像する。

瞳孔が開く。ギラリとした光が宿る。

「そう! その目よ! 獲物を狩る目!」

「(これアイドルのレッスンなの……?)」

ダンスレッスンの次は、ボイストレーニングだ。

担当は、優雅に紅茶を飲んでいる創造神ルチアナ。

「リーザちゃん。貴女の発声は、喉だけで歌っているわ」

「え? 腹式呼吸は意識してますけど……」

「お腹? ……レベルが低いわね」

ルチアナは呆れたようにカップを置いた。

「神の 歌声(ゴッド・ボイス) とは、『魂』と『宇宙』を共鳴させるものよ」

「宇宙……?」

「手本を見せるわ」

ルチアナが軽く息を吸い、声を放った。

『♪アァァァァァァ――――――……』

ズズズズズズ……!!!

空気が震え、ビニールハウスが振動し、外のガラス温室が一斉に共鳴音を上げた。

ただの発声練習なのに、天地創造のファンファーレのような神々しさだ。

「す、すご……!」

「さあ、やってみなさい。……このハウス内の『ドライアイス大根』を、声の波動だけで粉砕するつもりで」

「無茶言わないでよ!?」

「100億、欲しくないの?」

「……ッ!!」

その魔法の 言葉(キラーワード) に、リーザがマイクを握りしめた。

100億。

不労所得。

石油王。

「やってやるわよぉぉぉ!!」

リーザが大きく息を吸い込んだ。

腹の底から、いや、欲望の底から声を絞り出す。

「『あぁぁぁぁぁぁぁい(愛)もぉぉぉぉッ!!』」

「『かぁぁぁぁぁぁね(金)もぉぉぉぉッ!!』」

バリィィンッ!!

隅にあった大根の葉っぱが衝撃波で散った。

「悪くないわ! その調子よ! 欲望を音波に乗せて!」

「もっと腰を回して! 札束をかき集めるような動きで!」

ルチアナとラスティアの檄が飛ぶ。

歌え。踊れ。

欲望のままに。

地獄のレッスンは、三日三晩続いた。

そして、フェス当日の朝。

「……おはよう、みんな」

カイト農場の食堂に現れたリーザを見て、全員が息を呑んだ。

「……リーザちゃん?」

カイトがポカンと口を開ける。

そこに立っていたのは、以前の「貧乏アイドル」ではなかった。

肌は発光するように白く輝き、立ち振る舞いには王者の風格が漂っている。

何より、その瞳。

見る者すべての視線を吸い寄せ、財布の紐を緩ませるような、魔性のオーラ(覇気)を纏っていた。

「すげぇ……」

元勇者リュウが呟く。

「あれはもう、人じゃねぇ……『アイドルという名の魔物』だ」

「仕上がりましたわね」

リベラが満足げに頷いた。

リーザはニヤリと笑い、髪をかき上げた。

「ふふ。……見えるわ。私に向かって飛んでくる、無数のスパチャの雨が」

覚醒完了。

カイト農場が作り上げた最強の 集金兵器(アイドル) が、いよいよ銀河のステージへと出撃する。