作品タイトル不明
EP 4
【設営】カイトのSランク農業スキルで作る『有機野菜ステージ』
「よし! 曲は決まったね! 次はステージ作りだ!」
カイト農場の中央広場。
カイトはツルハシを担ぎ、自信満々に仁王立ちしていた。
その背後には、リーザ、ルチアナ、ラスティア、リベラ、そして元勇者リュウが集まっている。
「カイト、ステージと言っても……大工仕事なんてできるのか?」
リュウが心配そうに尋ねる。
通常、ライブステージの設営には鉄骨や照明機材、音響設備が必要だ。農夫の領分ではない。
だが、カイトはニカっと笑った。
「大丈夫だよリュウさん。……『野菜』があれば何でもできるから!」
「は?」
カイトは懐から、見たこともない色の種を大量に取り出した。
「いくよ! 『 超速栽培(グロウ・アップ) 』!!」
カイトが種をばら撒き、ジョウロで水をかけた瞬間。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!
大地が鳴動し、植物たちが爆発的な勢いで成長を始めた。
「うわっ!? 何だこれは!?」
リュウが腰を抜かす。
地面から突き出したのは、鉄骨のように硬く、黒光りする巨大な『トウモロコシの茎』だった。
「まずは骨組み! 『アダマンタイト・コーン』の茎だよ! 硬度は鉄の10倍あるから、どんなに激しいダンスでも揺れないよ!」
数十本の巨大トウモロコシが複雑に絡み合い、あっという間にドーム状の骨組みを形成していく。
「次は照明! 『七色発光マッシュルーム(ゲーミング・キノコ)』!」
ボッ、ボッ、ボッ!
ステージの天井や床から、ネオンカラーに輝くキノコが次々と生えてきた。
赤、青、緑、ピンク。
それらが激しく明滅し、最新鋭のLEDライトも裸足で逃げ出すほどの光量を放つ。
「ま、眩しい!? 目がチカチカする!」
「そして音響! 『ハイパー・メガホンひまわり』!」
ステージの四隅に、直径3メートルはある巨大なひまわりが咲いた。
その花弁はスピーカーのように振動し、中心部からは重低音が響いている。
「このひまわりはね、歌声を100倍に増幅して、しかも美声補正をかけてくれるんだ!」
「便利すぎるだろ!?」
「仕上げは特効(特殊効果)だよ! 『ドライアイス大根』!」
カイトがステージ脇に植えた白い大根から、シューーーッ! と冷たい白煙が噴き出した。
幻想的なスモークがステージを覆い尽くす。
「……完成だ!」
カイトが汗を拭った。
目の前に出現したのは、極彩色の光を放ち、大根の香りが漂う、国立競技場規模の『超巨大・有機野菜ステージ』だった。
「…………」
全員が口を開けて絶句している。
「……すごいですわ」
リベラが眼鏡を直した。
「機材費ゼロ。電気代ゼロ。すべて光合成と魔力で稼働する、究極のエコ・ステージです」
「いや、ツッコミどころ満載だろ!」
リュウが叫ぶ。
「全部野菜じゃねーか! ステージからサラダの匂いがするぞ!?」
「でもリュウ、見て」
リーザが、呆然としながらステージに近づいた。
七色のキノコの光を浴び、スモークの中を歩く。
その姿は、確かに神々しいまでに「アイドル」だった。
「……すごい。私が……輝いて見える」
リーザが震える手でマイク(形をしたアスパラガス)を握る。
「これなら……いけるかも。この野菜たちの生命力が、私の強欲さを後押ししてくれる気がするわ!」
「でしょ!? しかもライブが終わったら、全部食べられるんだよ!」
カイトが無邪気に付け加えた。
(非常食にもなるなんて、なんて経済的なの……!)
リーザの「節約魂」にも火がついた。
「ありがとうカイト! このネギ臭いステージで、私は銀河一になるわ!」
「うん! 応援してるよ!」
器は完成した。
あとは 中身(パフォーマンス) だ。
ここから、神と魔王による、地獄のスパルタレッスンが幕を開ける。