作品タイトル不明
EP 3
【作詞】「愛も金も欲しい!」 本音全開の新曲作り
「……書けない」
カイト農場の女子寮、リーザの部屋。
机の上には、クシャクシャに丸められた失敗作の歌詞ノートが山積みになっていた。
「う~ん……『夢見る乙女の虹色ハート』……『魔法のステッキで世界を平和に』……」
リーザがペンを走らせるが、すぐに手を止める。
「……違う。何かが違う」
部屋の隅では、プロデューサー陣(ルチアナ、ラスティア、リベラ、カイト)が腕組みをして見守っていた。
「つまらないわね」
創造神ルチアナがバッサリ切り捨てた。
「ありきたりな言葉ばかり。そこに『 魂(ソウル) 』がないわ。……そんな歌で、全銀河の視聴者から100億を巻き上げられると思って?」
「うぐっ……!」
「そうですわ」
風紀委員長兼マネージャーのリベラが、眼鏡をくいっと上げた。
「今のリーザさんの歌詞は、どこかで聞いたような綺麗事ばかり。……それでは、AIアイドルや天使には勝てません」
「じゃ、じゃあどうすればいいのよぉ!」
リーザが頭を抱えて叫ぶ。
「私だって書きたいわよ! でも、アイドルっぽい歌詞って言ったら、夢とか希望とか愛とか……そういうフワッとしたものじゃないの!?」
「フワッとしているから響かないのです」
リベラが冷徹に告げた。彼女は電卓を叩きながら、リーザに問いかけた。
「リーザさん。……貴女が、今、心の底から欲しいものは何ですの?」
「え?」
「飾らない言葉で、本音を吐き出してください。……さあ、何が欲しいのです?」
「欲しいもの……」
リーザはペンを置いた。
脳裏に浮かぶのは、キラキラした夢……ではない。もっと切実で、生々しくて、ギラギラしたものだ。
「……ダイヤ」
「はい?」
「ダイヤが欲しい。あと、土地も欲しい。値上がり確実な株券も欲しい」
リーザの口から、アイドルの口から出てはいけない単語が次々と溢れ出した。
「お城みたいな家に住みたい! 働かずに暮らしたい! スーパーで値段を見ずに買い物したい! ……あと、みんなからの『愛』も欲しい!」
「……強欲ですわね」
リベラがニヤリと笑った。
「ですが……それこそが『真実』です」
「えっ?」
「その『愛』も『金』も、両方欲しいという浅ましいまでの強欲さ……それこそが貴女の魅力(武器)ですわ! そのまま歌詞にしなさい!」
「そ、そのまま!?」
「ええ! 『愛か金か』ではありません。『愛も金も』です! どっちも手に入れる、それが新時代のアイドルですわ!」
リベラのアドバイス(煽り)に、リーザの脳内で何かが弾けた。
そうだ。なんで遠慮していたんだろう。
私は強欲アイドル。清純派なんてガラじゃない。
「……書いてやるわよ!」
リーザが新しいノートを広げた。
ペンが走る。迷いはない。魂の叫びをそのまま文字にする。
『朝に目覚ましがなったわ(ジリリリ!)』
『私はまだ眠いわ(おはよー!)』
「いい滑り出しだね!」
カイトが覗き込んで拍手する。
「そして……ここよ!」
リーザが震える手で、自身の最も辛い現実を歌詞にした。
『夕方の鐘が鳴ったわ(キンコンカン!)』
『スーパーのシール見なきゃ(半額!)』
『家賃のために 節約しなきゃ(ガマン!)』
「うっ……!」
その歌詞を見た瞬間、後ろで見ていた魔王ラスティアが口元を押さえた。
「なんて……なんて悲痛な叫びなの……」
「『スーパーのシール』……この一行に込められた哀愁とリアリティ……。全米が泣くわ」
ルチアナも目頭を拭っている。
神や魔王ですら心を揺さぶられる、圧倒的な生活感。
「そしてサビは……こうよ!」
リーザが立ち上がり、書き殴った歌詞を叫んだ。
『愛も富も一つの物(どっちもちょーだい!)』
『ダイヤが欲しい♪ 土地も欲しい♪ (Want You! Want You!)』
『貴方の 愛(とキャッシュ) で生きていける(Fuuu~!)』
「素晴らしい……!!」
リベラがスタンディングオベーションをした。
「それですわ! その清々しいまでのクズっぷり! それこそが視聴者が求めている『人間味』です!」
「タイトルは……『Love & Money』」
リーザが書き終え、ペンを置いた。
ノートには、彼女の欲望と苦悩、そして覚悟が刻まれていた。
「……できた。これが、私の 本音(すべて) よ」
「最高だよリーザちゃん!」
カイトが目を輝かせた。
「この曲なら、きっとみんな応援してくれるよ! だって、みんなお金も愛も大好きだもん!」
「ふふ……そうね」
リーザは吹っ切れた顔で笑った。
もう迷いはない。
私は歌う。欲望のままに。
そして、その歌声で銀河のすべて(特に金)を手に入れてみせる。
「さあ、曲はできたわ! ……次はステージよ!」
リーザがカイトを指差した。
「カイト! あんたのSランク農業スキルで、私の欲望を受け止める最高のステージを作りなさい!」
「任せてよ! 農場の野菜を総動員して、伝説のステージを作るから!」
楽曲は完成した。
次は、その歌を響かせるための「器」を作る番だ。
カイト農場が誇る、非常識な農業技術が火を吹く時が来た。