作品タイトル不明
EP 10
【結果】体重は減ったが、もっと大切なものを失った
朝日が眩しいカイト農場の校庭。
ドスゥゥゥン……!
黄金の竜王デュークが着地し、その背中から女性陣が次々と降り立った。
「ふふふ……見て! 私のウエスト!」
創造神ルチアナが、制服のスカートをくるりと回して見せた。
「キュッと締まってるわ! 昨日のパフェも、深夜のポテトも、全て魔力に変換して燃やし尽くしたのよ!」
「私もよ! 見なさいこの美脚!」
魔王ラスティアもポーズを決める。
リベラも、フレアも、リーザも、ルナも。
全員、ダンジョンの過酷な運動により、出発前よりもスリムな体型を取り戻していた。
「勝ちましたわ……! 35万の出費も、筋肉痛も、全てはこの『美』のため!」
リベラが勝利の拳を突き上げる。
ダイエット成功。
ファミレス女子会とダンジョン攻略のハイブリッド作戦は、大勝利に終わった――かに見えた。
「……あれぇ?」
トラック(ポチ)を牽引して戻ってきたカイトが、彼女たちの顔を覗き込んで首を傾げた。
「みんな、痩せたのはいいけどさ……」
カイトは、畑で枯れかけた野菜を見るような目で言った。
「なんか……『干からびた大根』みたいになってるよ?」
「「「は?」」」」
全員が慌てて鏡(ラスティアの魔法)を取り出し、自分の顔を映した。
「ヒッ……!?」
そこに映っていたのは、痩せてはいるが、生気を失った「ゾンビ」の群れだった。
ルチアナの肌は、ファミレスの乾燥した空調に12時間晒されたせいで、カサカサに粉を吹いている。
ラスティアの目の下には、徹夜の影響で、墨で塗ったようなドス黒いクマができている。
リベラの目はスマホと書類の見過ぎで充血し、血走っている。
ルナに至っては、糖分の過剰摂取とその後の急激な消費による 乱高下(シュガー・クラッシュ) で、白目を剥いて半開きになっていた。
「肌のツヤが……! ハリが消滅しているわ!?」
「クマが……コンシーラーでも隠せないレベルのクマがぁぁ!」
悲鳴が上がる。
体重という「数字」は減った。だが、「美しさ」という最も大切な要素が、徹夜と過労によって根こそぎ奪われていたのだ。
「……愚か者共め」
人間の姿に戻ったデューク教官が、腕組みをして冷酷に告げた。
「不健康な痩せ方だ。筋肉は萎み、肌は荒れ、内臓は疲弊している。……それは『美』ではない。ただの『劣化(老化)』だ」
「ぐふっ……!!」
正論のナイフが、彼女たちの心臓(と肌年齢)を貫いた。
「いいか。本当の美とは、規則正しい生活と、質の高い睡眠、そしてバランスの取れた食事から作られる。……徹夜でドリンクバーなど言語道断だ!」
デュークがホイッスルを口にくわえた。
ピピィーーーーッ!!!
「よって、これより『生活習慣改善合宿・シーズン2』を開始する!」
「いやぁぁぁぁッ!!」
ルチアナが頭を抱える。
「もう走りたくないぃぃ! 私は優雅に寝て過ごしたいのよぉぉ!」
「問答無用! まずは**『早寝早起き』**だ! 今夜から20時就寝! スマホ没収! 寝る前にホットミルクとストレッチだ!」
「小学生かぁぁぁ!!」
「私のスパチャ確認時間がぁぁぁ!」
リーザが泣き叫ぶが、デュークは聞く耳を持たない。
リベラも抵抗しようとしたが、鏡に映った自分の「疲れ切ったお局顔」を見て、ガックリと項垂れた。
「……従いましょう。この顔では、生徒(カイト様)に合わせる顔がありませんわ……」
「そ、そんなぁ……」
ズルズルとデュークに引きずられていく女性陣。
校庭には、彼女たちの悲痛な叫び声がこだました。
◇
「やれやれ。賑やかな奴らだ」
その様子を、鬼神・龍魔呂が軒先でタバコを吸いながら眺めていた。
「ま、痩せたんならいいじゃないか。今夜は祝勝会(リバウンド確定)の宴でも用意してやるか」
「いいね! 僕、採れたての野菜いっぱい持っていくよ!」
カイトがニコニコと笑う。
隣では、ようやく解放されたポチが、山盛りのフライドポテトを幸せそうに頬張っていた。
『ムシャムシャ……やっぱこれだぜ。ササミなんて食ってられるか』
「ポチ、食べ過ぎるとまたドナドナされるよ?」
『うっせー。明日から本気出す』
懲りない面々。
終わらない騒動。
カイト農場の日常は、今日も筋肉痛と笑い声と共に過ぎていく。
「さあみんな! 明日も早いよ! 畑仕事が待ってるからね!」
カイトの爽やかな声が、青空に吸い込まれていった。