作品タイトル不明
EP 8
【攻略】カロリー消費型ダンジョン。歩くだけで痩せる!?
上空数千メートル。
黄金のドラゴンとなった竜王デュークは、背中に美女軍団を乗せて優雅に飛んでいた。
……はずだった。
『……重い』
デュークが低く唸った。
『おい貴様ら。昨夜どれだけ食った? 重力が通常の3倍になっておるぞ』
「失礼ね! 昨日のパフェは別腹よ!」
「レディに向かって重いなんて、デリカシーの欠片もないわ!」
創造神ルチアナと魔王ラスティアが抗議する。
だが、デュークは冷酷に告げた。
『……限界だ。これ以上は高度を維持できん。よって、積み荷を投棄する』
「「「はぁぁぁ!?」」」」
『安心しろ。ちょうど真下は、カイトがいるダンジョンの「深層部」だ。……そこで食べた分を消費してこい!』
デュークが空中で 一回転(バレルロール) した。
「「「きゃああああああッ!!!」」」
遠心力で振り落とされる女神、魔王、不死鳥、アイドル、オーナー、そして風紀委員長。
彼女たちは悲鳴を上げながら、地上のマンホールへと吸い込まれていった。
◇
ドサッ……ボヨヨンッ!
彼女たちが落下したのは、地下深くに広がる奇妙な空間だった。
床はトランポリンのように柔らかく、壁はピンク色に発光している。
「……痛くない? 生きてる?」
リベラが恐る恐る目を開ける。
すると、目の前でカイトがツルハシを持って立っていた。
「あ、みんな! 奇遇だね! 空から降ってくるなんて」
カイトは爽やかに汗を拭った。彼の足元には、既に倒された魔物の山が築かれている。
「カイト! よかった、助けてぇ!」
ルチアナがカイトに抱きつこうとする。
だが、カイトは真剣な顔で、壁にある「石碑」を指差した。
「待って。このダンジョンのルールが分かったんだ」
石碑には、古代魔界語でこう刻まれていた。
【脂肪燃焼の迷宮へようこそ】
【ルール:運動エネルギー(消費カロリー)を魔力と金貨に変換する】
【出口:合計10万キロカロリーを消費せよ】
「……は?」
全員が凍りついた。
「しょ、消費カロリーが出口の鍵……?」
リベラが震える声で読み上げる。
「つまり……歩いたり、走ったり、戦ったりして痩せないと、一生ここから出られないということですの!?」
「嘘でしょぉぉぉ!!」
「私は楽して帰りたいのよぉぉ!」
ルチアナとラスティアが絶叫する。
だが、カイトは目を輝かせた。
「すごいよみんな! 昨日のパフェが、そのままポチの借金返済(金貨)になるんだよ!?」
カイトは、ルチアナのお 腹(ちょっとポニョっている) をまじまじと見つめた。
「ルチアナさん……今、すごい『財産』を持ってるね!」
「やめて! 私の贅肉を『埋蔵金』みたいな目で見ないで!」
ルチアナが腹を隠す。
だが、ダンジョンのシステムは容赦ない。
ズズズ……と、床から魔物が湧き出してきた。
現れたのは、ブヨブヨとした脂肪の塊のようなスライム――『メタボリック・スライム』の大群だ。
「ヒャッハー! 糖分よこせぇ!」
スライムたちが襲いかかってくる。
「ひぃぃッ! 来ないでぇぇ!」
リーザが逃げようと走り出した瞬間。
ピロン♪
頭上に数字が浮かんだ。
『消費:5kcal → 獲得:銅貨1枚』
「えっ? お金が出た?」
チャリン。リーザの足元に小銭が落ちてきた。
「なるほど……動けば動くほど儲かるってわけか」
不死鳥フレアがニヤリと笑った。
彼女の中で「ダルい」という感情が、「稼げる」という欲望に書き換わった。
「やるわよ皆! 私たちの贅肉を、金に変える錬金術よ!」
「望むところですわ! 35万ゴールド、取り返させていただきます!」
リベラが眼鏡を外し、戦闘モード(バーサーカー)に入った。
彼女の拳が唸る。
「オラァッ! 昨日のティラミス分! パフェ分! そして深夜のポテト分んんんッ!!」
ドガッ! バキッ!
リベラがスライムを殴るたびに、『消費:50kcal』『消費:100kcal』と表示され、金貨がジャラジャラと湧き出る。
「すごい! リベラさんが輝いてる!」
「負けてられないわ! 私の『バベルの塔パフェ(2000kcal)』を食らえぇぇ!」
ルチアナも走り出した。
魔法は使わない。使うとカロリー消費が少ないからだ。
神々が物理で殴り、走り、汗を流す。
「カイトさん! どんどん先へ進みますよぉ!」
ルナも必死に走る。
カイトはツルハシを担ぎ、頼もしい仲間たち(元凶)を見守りながら微笑んだ。
「うんうん、みんな健康的だね! デュークさんも喜ぶよ!」
こうして、借金返済とダイエットを兼ねた、地獄のダンジョン・マラソンが始まった。
目指すは最下層。
そこには、彼女たちの食欲の「 業(カルマ) 」を具現化した、恐るべきボスが待ち受けているとも知らずに。