軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 7

【遭遇】帰ろうとしたら、カイトたちがダンジョン掘ってた

朝日が眩しい『デモンズ・ガスト』の駐車場。

そこには、財布の中身が空になり、真っ白な灰になった風紀委員長の姿があった。

「……私のお金が……。へそくりが……」

リベラが膝から崩れ落ちる。

35万ゴールド。Sランク肥料が山ほど買える金額だ。

「リベラちゃん、あざっす! いやー、他人の金で食うパフェは格別ね!」

創造神ルチアナが、爪楊枝をシーハーさせながら軽い調子で礼を言った。

悪魔よりもタチが悪い女神である。

「さぁて……帰って寝ましょうか。タクシーのポチは……」

不死鳥フレアが駐車場を見渡すが、あの巨大なドラゴンの姿がない。

「あら? 居ないわ」

「何処に行ったのかしら?」

魔王ラスティアとアイドル・リーザが首を傾げる。

あんな目立つ巨体が消えるはずがない。

「……飽きて居なくなったのかしら? 12時間も待たせては当然ね」

リベラが涙を拭いながら呟く。自分なら30分で帰る自信がある。

だが、オーナーのルナが、駐車場の隅にある看板を指差して無慈悲な事実を告げた。

「あのですねぇ、ここは天魔窟ですよぉ? 時間制ですのよ」

「え?」

「駐車料金は、最初の1時間は無料。以降、1時間ごとにチャージ料が金貨5枚発生しますぅ。……ポチさんは12時間以上停まっていた上、巨体で枠をはみ出していたので……」

ルナは遠い目をした。

「『駐禁』でドナドナされました」

「ドナドナぁ!?」

全員が絶叫する。

始祖竜がレッカー移動(強制連行)される光景を想像し、戦慄した。

「そ、それでポチは何処へ?」

「地下の『 魔物収容所(ダンジョン) 』ですぅ。違反金を払うまで出てこれませんよぉ」

「つまり……天魔窟のダンジョンを突破しないと、地上のカイト農場に帰れないってこと!?」

ルチアナが青ざめる。

ポチ(タクシー)がいない今、徒歩で帰るしかない。しかも地下ダンジョン経由で。

パフェで膨れた腹を抱えて歩くなど、神としてあり得ない。

その時だった。

「――おーい! みんなー!」

上空から声がした。

見上げると、竜王デュークが飛来し、着地した。

その背中には、ツルハシを持ったカイトがおぶさっている。

「もう! 何処に行ってたのさ? 探したよ!」

カイトがデュークから降りて駆け寄ってくる。

どうやら、脱走した彼女たちを連れ戻しに来たらしい。

だが、女性陣の目はカイトを見ていなかった。

彼女たちの瞳は、カイトの後ろにいる「屈強なドラゴン(デューク)」にロックオンされていた。

「デューク! (新しいタクシーが来た!)」

ルチアナの目が輝く。

「ねぇカイト」

ラスティアが素早くカイトに詰め寄った。

「ポチって、カイトの所有物よね?」

「え? 所有物っていうか……ポチは友達だけど?」

カイトがキョトンとして答える。

その純粋な答えを聞いた瞬間、リベラが眼鏡をカチャリと押し上げた。

「……言質を取りましたわ」

「え?」

「素晴らしいですわ、カイト様。友情、美しいですわね。……つまり、友人の不始末は友人の責任。ポチの駐車違反金・金貨60枚(60万円)は、飼い主……いえ、友人のカイト様支払いということでよろしいですわね?」

「ええええっ!?」

カイトがのけ反る。

いきなり60万の借金を背負わされた。

「さあデューク! 貴女の 主(カイト) の借金返済のためにも、私たちを乗せて働きなさい!」

ラスティアがデュークの背中を叩く。

デュークは「やれやれ」と肩をすくめると、瞬時に変身した。

ボォォォォォンッ!!

黄金の鱗を持つ、巨大なドラゴン形態へ。

ポチより一回り小さいが、乗り心地は抜群の高級車だ。

「わーい! 乗り心地良さそう!」

「お尻が痛くな~い!」

ルチアナ、ラスティア、フレア、リーザ、ルナ、そしてリベラが、素早い動きでデュークの背中に乗り込んだ。

あっという間に満員御礼だ。

「あ、あれ? 僕は? 僕の席は?」

カイトが地上でオロオロする。

デュークの背中は美女たちで埋め尽くされており、カイトが乗るスペースはない(ことになっている)。

「カイト。……じゃあ、はい」

ルチアナが、デュークの背中から「ボロボロのツルハシ」を放り投げた。

カランコロン。

カイトの足元に転がる鉄塊。

「……え、これ……?」

「こ、これで……」

ラスティアが満面の笑みで、サムズアップした。

「ここの地下はダンジョンになってるの。レアな鉱石とか魔物が沢山いるわ。……それを倒して換金しながら帰れば、60万なんてすぐよ!」

「えええええええ!?」

「頑張ってくださいねぇ~カイトさぁ~ん! 違反金払わないとポチさん出られませんからねぇ~!」

ルナが無慈悲に手を振る。

「では、参りましょうか。安全運転でお願いしますわ」

リベラが冷徹に告げると、デュークが大きく翼を広げた。

バサァァァッ!!

「行ってらっしゃ~い!」

「お土産よろしくね~!」

黄金のドラゴンは、カイトを残して優雅に空の彼方へ飛び去っていった。

残されたのは、ファミレスの駐車場の真ん中で、ツルハシを持って立ち尽くす農夫が一人。

「……ひどいよぉ……」

カイトは涙目でツルハシを握りしめた。

「ポチ……待っててね。僕が稼いで助けてあげるからね……!」

カイトは決意の表情で、駐車場のマンホール(ダンジョン入り口)を開けた。

こうして、カロリー消費のために掘るはずだったダンジョンは、「借金返済のための強制労働施設」へと変わったのだった。