軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 10

【和解】チートデー制定。そして全員太る

「おかわりですぅ! ポテトが足りません! あとコーラもピッチャーで持ってきてくださいぃぃ!」

夜明けの食堂に、新オーナー・ルナの絶叫が響き渡っていた。

彼女の目の前には、空になったバーガーの包み紙と、ポテトの山が築かれている。

「ちょ、ちょっとルナ様!? 食べ過ぎですわ!」

すっかり「こちら側」に堕ちたはずのリベラが、慌ててルナからケチャップを取り上げた。

「さっきまでの健康志向はどうしたのです!? 急にそんなに油物を摂取したら、胃がびっくりしてしまいますわ!」

「うるさいですぅ! 私は今まで失われていた20年分のカロリーを取り戻すのですぅ! 野菜なんて滅びればいいんですよぉぉ!」

ルナはケチャップまみれの顔で叫び、リベラの手からポテトを奪い返した。

完全に「リミッター」が外れてしまった大賢者。その姿は、森の精霊というよりは、冬眠前の熊のようだった。

「……カイト。俺たち、とんでもないモンスターを目覚めさせてしまったんじゃないか?」

龍魔呂が遠い目をして呟く。

レジスタンスは勝利した。だが、その代償として、彼らは「暴食の化身」を生み出してしまったのだ。

それから数日後。

カイト農場の食堂は、以前のような活気を取り戻していた。

だが、一つだけ大きな変化があった。

食堂の壁に、リベラ直筆の新しい「校則」が貼り出されたのだ。

【新校則:週に一度、好きなものを好きなだけ食べて良い『チートデー』を設ける。その他の日は、野菜中心のバランスの良い食事を心がけること】

「……これが、我々とルナ様の妥協点だ」

ルーベンスが、久しぶりのコーヒー(砂糖マシマシ)を啜りながら、満足げに頷いた。

「平日は健康的に。週末はジャンクに。……完璧な『アメとムチ』の運用だよ」

「だな。これなら文句はない」

龍魔呂も厨房で、青汁とコーラを交互に仕込みながらニヤリと笑った。

こうして、カイト農場に平和が戻った。

男たちはタバコと酒を取り戻し、女たちは化粧品とジャージを買い直した。めでたしめでたし。

――と、誰もが思っていた。

それから、一ヶ月後。

カイト農場に、穏やかな午後の日差しが降り注いでいた。

「……ふぅ。最近、体が重い気がするなぁ」

カイトが畑仕事の合間に、切り株に座って汗を拭った。

彼のお腹周りが、心なしかポニョっとしている気がする。

「……奇遇ねカイト。私もよ」

隣に座った創造神ルチアナが、苦しそうに息を吐いた。

彼女が新調したはずのジャージは、なぜかパンパンに張り裂けそうになっており、ファスナーが途中までしか上がっていない。

「……おかしいわ。先週買ったばかりのドレスが入らないの」

魔王ラスティアが、背中のチャックと格闘しながら現れた。その顔(厚化粧復活済み)は、以前より二回りほど丸くなっている。

そして、極めつけは――。

「むぐむぐ……ポテト美味しいですぅ……コーラ最高ですぅ……」

食堂の隅で、常に何かを食べているエルフの少女がいた。

ルナだ。

かつての「儚げな森の賢者」の面影はどこにもない。頬はリスのように膨らみ、制服のボタンは弾け飛び、健康的な(?)わがままボディへと変貌を遂げていた。

「……皆さん」

そこに、体重計を持ったリベラが現れた。彼女のスーツも、心なしかタイトになっている。

「先日の健康診断の結果が出ましたわ。……全員、**『 肥満(メタボリック) 』**判定です」

「「「えぇぇぇぇッ!?」」」」

全員が絶叫した。

「チートデー」にかこつけて、毎日がチートデー状態になっていた結果である。

「そんな……! 私は神よ!? 神が太るなんてあり得ないわ!」

「私も魔王よ!? ただのむくみよ!」

現実逃避する女性陣。

だが、そこへ地獄の使者が現れた。

ドォォォン!!

地面を揺らして着陸したのは、筋肉ムキムキの竜王デュークだ。彼だけは、日々の鍛錬(と基礎代謝の高さ)により、鋼の肉体を維持していた。

「……フン。嘆かわしい」

デュークが、たるんだ体型の住人たちを冷徹に見下ろした。

「平和ボケも大概にしろ。そのだらしない体はなんだ。豚小屋かここは」

「うぐっ……!」

「返す言葉もない……」

デュークはニヤリと笑い、牙を剥き出しにした。

「安心しろ。貴様らのその『贅肉』……俺が根こそぎ削ぎ落としてやる」

彼は懐から、新しいメニュー表を取り出した。

【デューク教官の『地獄のブートキャンプ』メニュー】

早朝ランニング(山頂までダッシュ)

ドラゴンブレス耐久スクワット(1000回)

昼食:ササミとブロッコリーのみ(味付けなし)

午後:対人戦闘訓練(実戦形式)

「ひぃぃぃッ!? し、死ぬぅぅぅ!」

「青汁の方がマシだったわぁぁぁ!」

阿鼻叫喚の農場。

健康帝国が崩壊し、ジャンク王国が滅び、次に訪れたのは**「 筋肉(マッスル) の時代」**だった。

「さあ、いくぞ豚共! まずは校庭100周だ! 遅れた奴はブレスで焼く!」

「「「イエッサー!!!」」」

カイト農場の明日は、どっちだ!?(たぶん筋肉痛)