作品タイトル不明
EP 2
【没収】ルチアナのジャージが焚き火に。ラスティアの化粧品が海へ
朝食(青汁)の悲劇から数時間後。
カイト分校の校庭には、不穏な「焚き火」が焚かれていた。
その前で、風紀委員長の腕章をつけたリベラが、氷のような無表情で仁王立ちしている。
「次。創造神ルチアナ様、前へ」
「い、嫌よ……! これだけは……これだけは渡せないわ!」
創造神ルチアナが、自分の着ている**「薄汚れた緑色のジャージ」**の裾を握りしめ、涙ながらに抵抗していた。
「往生際が悪いですわ。そのジャージ、何年着ていますの? 襟元はヨレヨレ、袖にはポテチの油汚れ。……教育現場(学校)の長として、恥ずかしくありませんの?」
リベラが冷徹に指摘する。
「うっさいわね! これは私の皮膚よ! アイデンティティなのよ! これがないと落ち着かないのぉぉ!」
「規則正しい生活こそが人間(および神)の基本です。そのダルダルな精神を叩き直すには、まず形から入るべきですわ」
リベラが指をパチンと鳴らすと、屈強なゴーレムたちがルチアナを取り押さえ、ジャージを剥ぎ取った。
「ああっ!? やめてぇぇぇ!」
リベラは無慈悲に、そのジャージを焚き火の中に放り込んだ。
ボッ……メラメラメラ!!
化学繊維が燃える臭いと共に、創造神の 聖衣(ジャージ) が黒煙となって空へ昇っていく。
「私のお気に入りがぁぁぁ! 限定カラーだったのにぃぃぃ!」
ルチアナはその場に崩れ落ち、灰になったジャージに向かって絶叫した。
代わりに支給されたのは、糊の効いた窮屈な「 制服(ロングスカート) 」だった。
「……ひっく。信じられない……悪魔よ……」
◇
「次。魔王ラスティア、不死鳥フレア」
続いて呼び出されたのは、この世の春を謳歌していた美女コンビだ。
彼女たちの前には、「廃棄ボックス」が置かれている。
『お二人ともぉ、お顔の色が不自然ですよぉ?』
ルナが近づき、ラスティアの顔をジロジロと覗き込んだ。
『ファンデーション、コンシーラー、マスカラ……。そんなに塗りたくっては、お肌が呼吸できません。素材の味を殺していますぅ』
「なっ……!?」
ラスティアが青ざめる。
彼女にとって化粧は「武装」だ。数千年の時を経た肌を、最新のコスメで誤魔化……いや、彩っているのだ。
「ルナちゃん、これは身だしなみなのよ? 大人の女の嗜みで……」
「言い訳無用ですわ」
リベラが六法全書(校則版)を開く。
「校則第5条。『過度な装飾は禁止。ありのままの 姿(すっぴん) こそが美しい』。……さあ、そのポーチの中身、全て出しなさい」
「嘘でしょ!? 限定のクリスマスコフレなのよ!?」
「私のリップは一本金貨10枚するのよ!?」
抵抗も虚しく、山のような高級コスメが廃棄ボックスへ投げ込まれていく。
ガシャン、ゴトッ。
瓶が割れる音は、彼女たちのプライドが砕ける音だ。
「あああ……私の『顔』が……!」
「すっぴんで外を歩けと言うの……!?」
『大丈夫ですよぉ! お野菜を食べて早寝早起きすれば、私みたいにプルプルになりますからぁ☆』
ルナ(実年齢20歳・肌年齢10歳)の無邪気な一言が、ラスティア(数千歳)とフレア(3000歳)の心臓を深々と抉った。
◇
「……ふふ、私は関係ないわよね? アイドルだもの」
列の最後尾で、リーザがそろりと逃げ出そうとしていた。
彼女は「賽銭箱(スパチャ入れ)」を大事そうに抱えている。
「待ちたまえ、リーザ君」
リベラが逃走経路を塞いだ。
「アイドル(偶像)とは、人々に夢を与える清廉潔白な存在であるべきです」
「そ、そうよ! だから私は夢を……」
「『金』という不純物は、貴女の輝きを曇らせています」
リベラが賽銭箱をガシッと掴んだ。
「この皆様から頂いた浄財は、全額『天魔窟の緑化募金』および『ユニセフ(異世界福祉)』へ寄付させていただきますわ」
「はぁぁぁぁぁッ!?!? ふざけんなぁぁぁ!!」
リーザが鬼の形相になった。
「私の金よ! 私が汗水垂らして、五円玉の雨に埋もれて稼いだ金なのよぉぉ!」
「その執着心が罪なのです。……手放しなさい、楽になりますよ?」
「嫌だぁぁぁ! 金のないアイドルなんてただの無職よぉぉ!」
ズルズルと引きずられていく賽銭箱。
地面には、リーザの爪痕が長く残された。
◇
数十分後。
校庭の隅には、魂を抜かれた女性たちの姿があった。
ジャージを燃やされ、制服を着せられたルチアナ。
すっぴんを晒し、顔を隠して震えるラスティアとフレア。
全財産を没収され、虚空を見つめるリーザ。
「……終わった……私の人生……」
「……鏡が見れない……」
その地獄絵図を、校舎の影から見つめる男たちがいた。
「……おい、見たか」
龍魔呂が震える声で囁く。
「次は俺たちだ。……隠し持っている『アレ』が見つかったら、俺たちも終わるぞ」
「ああ。……やるしかないようだな」
ルーベンスが決意の眼差しで頷く。
もはや、ただ従うだけの時間は終わった。
男たちは目配せをし、静かに地下への階段を降りていった。
残された希望は、リュウのパンツの中に隠された「最後の一本のタバコ」のみ。
レジスタンスの結成前夜である。