軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 3

【脱走】男たちの地下集会。最後のタバコを回し吸い

深夜2時。

健康帝国ルナの監視の目が光るカイト農場の地下深く。かつて魔王軍がワインセラーとして使っていた隠し部屋に、男たちが集結していた。

部屋の中央には、頼りない魔法ランタンの灯りが一つ。

その周りを囲むのは、この世の終わりのような顔をした「レジスタンス(反乱軍)」の戦士たちだ。

「……追手は?」

「ない。リベラの見回りは、今の時間は女子寮の方だ」

魔族宰相ルーベンスが、分厚い鉄扉に鍵をかけながら答えた。

部屋にいるのは、ルーベンス、鬼神・龍魔呂、竜王デューク、狼王フェンリル。そして、元勇者リュウだ。

「……で、あるのか? 『ブツ』は」

デュークが渇望した瞳でリュウに詰め寄る。

ここ数日、彼らは禁煙の禁断症状で指先が震え、情緒不安定になっていた。

「ああ……あるぜ」

リュウは真剣な表情で頷き、自分のズボンのゴムに手をかけた。

「おい、何を脱ごうとしている」

「ここしか隠す場所がなかったんだよ! リベラのボディチェックを抜けるには、パンツの中しかなかったんだ!」

リュウはボクサーパンツの裏側から、クシャクシャになった赤い箱を取り出した。

『Lark』。

箱の中には、ひん曲がったタバコが一本だけ残っていた。

「おぉ……!」

「神よ……!」

男たちが拝むようにその一本を見つめる。

それは彼らにとって、聖剣エクスカリバーよりも尊い、自由の象徴だった。

「誰からいく?」

龍魔呂が震える手でジッポーを取り出す。

「……年長者からだろう」

フェンリルが唾を飲み込む。

龍魔呂が火をつけた。シュボッ。

小さな炎が先端を焦がし、紫煙が立ち昇る。

「……スゥゥゥゥ…………」

龍魔呂が深く、肺の底まで煙を吸い込んだ。

その瞬間、彼の強面が、仏のように穏やかに緩んだ。

「……ふぅ。……生き返る」

「早く回せ! フィルターが燃え尽きるぞ!」

次にデュークが奪い取るように吸う。

「……くぅぅぅッ! 五臓六腑に染みるわ……! これだ、この有害な煙こそが文明の味よ……!」

「次は俺だ! よこせ!」

フェンリルが吸い、ルーベンスが吸い、最後にリュウが吸う。

一本のタバコを、世界を統べる王たちが必死の形相で回し吸いする。

その光景はあまりにも惨めで、そして美しかった。

「……終わっちまったな」

リュウがフィルターギリギリまで吸い、名残惜しそうに火を消した。

部屋に沈黙が落ちる。

「……もう限界だ」

ルーベンスが頭を抱えた。

「青汁と温野菜だけの生活……私の脳細胞が糖分を求めて悲鳴を上げている。これ以上続けば、私は発狂して魔界の全予算で砂糖を買占めてしまうかもしれん」

「俺もだ。肉が食いてぇ。脂が滴るような、ギトギトの肉が……」

フェンリルが腹をさする。

健康になればなるほど、精神が死んでいく。

このまま、ルナとリベラの管理下で飼い殺しにされるのか。

「……みんな、暗い顔してるね」

その時、天井の通気口がガコッと外れ、そこからカイトが逆さまに顔を出した。

「うわっ!? カ、カイト!?」

「なんでここが分かった!?」

「匂いだよ。タバコの匂いがしたから」

カイトはストンと床に降り立つと、男たちの絶望的な顔を見渡した。

「みんな、辛そうだね。……やっぱり、お腹いっぱい好きなものを食べたいよね?」

「当たり前だ! だが、ルナ様の勅令は絶対だ。逆らえば天魔窟の収益(農場の運営費)を止められる!」

ルーベンスが嘆く。

金と権力を握られた今、正面からの反乱は不可能だ。

だが、カイトはニカっと笑った。

「じゃあ、バレないようにやればいいじゃない」

「え?」

「ルナちゃんやリベラちゃんは、『本当の美味しさ』を知らないだけだよ。僕たちが教えてあげようよ。……**とびっきりの『 毒(ジャンクフード) 』**をさ」

カイトの瞳には、かつて魔王を倒した時のような、あるいは新しい遊びを思いついた子供のような、純粋な光が宿っていた。

「みんなで反撃の 狼煙(のろし) を上げよう。……作ろうよ、夜食を」

「夜食……だと……?」

その甘美な響きに、龍魔呂の目が鋭く光った。

「……面白い。ルナ様の清浄な舌を、脂と糖で汚染しろと言うんだな?」

「そう! 堕落させちゃえば、こっちの勝ちだよ!」

カイトが提案した「下克上」。

それは血を流さない、カロリーと背徳感による革命だった。

「乗った!」

リュウが立ち上がった。

「俺たちの『チートデー』を取り戻すんだ! ジャンクフードこそが正義だと証明してやる!」

「フン、悪くない余興だ」

デュークも不敵に笑う。

地下室の熱気が変わった。

男たちは固く握手を交わし、打倒・健康帝国のための極秘プロジェクト、『オペレーション・ミッドナイト・カロリー』を発動させた。