軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十一章 健康第一国家とレジスタンス

【悲報】新オーナーの勅令。タバコ・酒・二度寝、すべて死刑

『おはようございますぅ~! 朝ですよ~! 起きてくださぁ~い!』

カイト農場(および天魔窟全域)に、けたたましい魔導放送が響き渡った。

時刻は、午前6時00分。

夜更かしや二度寝を愛する農場の住人たちにとって、それは拷問にも等しい時間だった。

「……んあ? なんだ、空襲警報か?」

元勇者リュウが、目やにをつけたまま寮の窓を開ける。

すると、校庭の中央に巨大なステージが設置されており、そこにはジャージ姿のエルフの少女・ルナと、純白のスーツを着た理事長リベラが立っていた。

『皆さん! 早起きは三文の得ですぅ! 今日から朝6時に全員集合でラジオ体操をしますよぉ!』

ルナが爽やかに叫ぶ。

その背後には、昨日の麻雀で勝ち取った**「全権委任状」**が額縁に入れられて飾られている。

「……正気か?」

「まだ眠い……」

ゾロゾロと集まってくる住人たち。

魔族、獣人、そして神々。全員がゾンビのような顔をしている。

だが、ルナは許さない。

『はい! 手足を伸ばして~! 元気にぃ!』

「……屈辱だ」

「なんで我(竜王)がこんな動きを……」

デュークとフェンリルが、死んだ魚のような目でラジオ体操第一を踊らされていた。

地獄の体操の後、さらに残酷な現実が待っていた。

朝食の時間である。

「腹減った……昨日の焼肉の残りで飯にするか……」

フェンリルが食堂の暖簾をくぐる。

だが、そこには絶望が広がっていた。

「……すまん。今日はこれしかないんだ」

厨房の奥で、鬼神・龍魔呂が憔悴しきった顔で立っていた。

彼の手にあるお玉が、震えている。

カウンターに並べられていたのは、

青汁(特濃・苦味成分マシマシ)

温野菜(味付けなし)

玄米(硬め)

以上である。

「……は?」

フェンリルが硬直する。

ベーコンは? 目玉焼きは? 炊きたての白米は?

「肉は……? 俺の肉は……?」

「禁止だ」

龍魔呂が苦渋の表情で答える。

「ルナ様の勅令だ。『朝から脂っこいものは胃に悪いですぅ。野菜中心の生活こそがジャスティスですぅ』……だそうだ。塩分も糖分も極限までカットされている」

「ふざけんなぁぁぁ!! 俺は肉食獣だぞぉぉぉ!!」

フェンリルが叫ぶが、そこへリベラが現れた。

「静粛になさい。規則正しい生活こそが人間(および獣人)を作るのです」

リベラは腕章をつけていた。そこには**『風紀委員長』**の文字。

「カイト様たち、最近不摂生が過ぎますわ。昨日も深夜に焼肉だの、ラーメンだの……内臓脂肪の数値を見てごらんなさい!」

リベラが健康診断の結果を突きつける。

確かに、ここ数日の暴飲暴食で全員の数値はレッドゾーン寸前だった。

「だ、だからって、これはないだろう!」

ルーベンスが青汁を前に涙目になる。

「私のコーヒーは……? 朝のカフェインがないと脳が起動しないのだが」

『カフェインは刺激物ですぅ! 代わりに果汁100%オレンジジュースをどうぞぉ!』

ルナが満面の笑みでピッチャーを持ってきた。

『ビタミンCたっぷりですよぉ。お酒もタバコも体に悪いので、農場内では全面禁止にしましたぁ☆』

「……は?」

その言葉に、男たちの動きが止まった。

「……おい、今なんて言った?」

龍魔呂が低い声で尋ねる。

『ですからぁ、禁煙・禁酒ですぅ』

ルナは悪びれもせず、恐ろしい 布告(ルール) を読み上げた。

『本日より、農場および天魔窟でのタバコの販売・喫煙を禁止します。もし吸いたい場合は……タバコ税として一本につき100万ゴールド(約1億円)を徴収しますねぇ』

「いっ、一億……ッ!?」

「実質、死刑宣告じゃないか……!!」

愛煙家である龍魔呂、ルーベンス、そしてデュークが膝から崩れ落ちた。

一本一億。吸えるわけがない。

「そ、そんな馬鹿な……!? カイト! お前からも何か言ってやれ!」

ルーベンスがカイトに縋りつく。

だが、カイトは青汁を飲みながら「んー、苦いけど体に良さそうだね!」とニコニコしていた。

「カイトぉぉぉ! 貴様は味覚まで健康優良児かぁぁぁ!」

「あら、良い傾向ですわ」

リベラが満足げに頷く。

「ルナ様の方針は理にかなっています。健康的で、規則正しく、清廉潔白な世界……これぞ私が求めていた 理想郷(ユートピア) ですわ!」

リベラは完全にルナ側に寝返っていた。

彼女の「正義感」と「管理癖」が、ルナの「健康志向」と悪魔合体してしまったのだ。

『さあ皆さん! 残さず食べてくださいねぇ! お残ししたら、校庭100周追加ですよぉ!』

「うぷっ……ま、不味い……青臭い……」

「肉……脂……糖分をくれぇ……」

食堂は、健康という名の地獄絵図と化した。

野菜を咀嚼する音だけが、虚しく響き渡る。

だが、これはまだ序章に過ぎなかった。

ルナの純粋すぎる善意は、次に女性陣の「 聖域(コスメやファッション) 」へと牙を剥くことになる。