軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 10

【結末】天魔窟、新オーナー誕生。その名はルナ

「あ、あぁぁ……私の天魔窟がぁ……私のカジノ帝国がぁぁ……」

麻雀卓の下で、元・賭博王キュルリンが真っ白な灰になって崩れ落ちていた。

彼女の全財産、地位、名誉。その全てが、エルフの少女の気まぐれな「ツモ」によって消滅したのだ。

その一方、勝者であるルナの周りには、現金な連中が群がっていた。

「ルナちゃん!? 私たち、親友よね!?」

魔王ラスティアが、ルナの肩を揉みながら必死に媚びを売る。

さっきまで自分が「賭けの 対象(メイド) 」にされていた恐怖から逃れるため、プライドをかなぐり捨てたのだ。

「うんうん、僕たちはズッ友だよ! ね、ルナ?」

カイトもニコニコと便乗する。彼に悪気はないが、とりあえず「お友達」であることは強調しておきたいらしい。

「う~ん……どうしましょう~」

ルナは困ったように頬に手を当てた。

突然、裏社会のドン(オーナー)になってしまった。学校の宿題もあるのに、街の経営なんて分からない。

そこに、シュッとした足音と共に、二人の「有能な参謀」が進み出た。

「ルナ様。僭越ながら、このリベラが提案させていただきますわ」

リベラが眼鏡を光らせ、素早く作成した『雇用契約書』を提示した。

「経営の素人が現場に出る必要はありません。まずは天魔窟の運営を……そこの**キュルリンに『管理委託(雇われ店長)』**として任せるべきかと。もちろん、売上の9割はルナ様が徴収するという条件で」

「えっ……私、雇われ店長……?」

キュルリンがピクリと反応する。オーナーから社畜への転落だ。

「それと、農場の作物の販路拡大(増産)も着手するべきかと」

事務長ルーベンスが、電卓を叩きながら割り込んだ。

「天魔窟の食堂やホテルに、カイト農場の野菜を独占卸しするのです。そうすれば、我々の利益は現在の300倍……いや、500倍は見込めます。素晴らしいビジネスモデルだ」

「ね、寝返っていく……! さっきまで私の味方だったはずの二人が……!」

床に転がっていた創造神ルチアナが、涙目で叫んだ。

権力が移動した瞬間、この世界の「大人たち」は雪崩を打って勝ち馬に乗ったのだ。

「なるほどぉ~。よく分かりませんけど、リベラさんとルーベンスさんに任せますねぇ」

ルナは無邪気に判子(拇印)を押した。

これにより、キュルリンは「死ぬまで天魔窟で働き、利益をカイト農場に吸い上げられる」という地獄の労働契約が成立した。

「うわぁぁぁん! 覚えてろぉぉぉ!」

キュルリンの絶叫が虚しく響く。

「じゃあポチ。私を運んで。疲れちゃった」

ルナは当然の権利として、傍らで震えていた始祖竜ポチの背中にピョンと飛び乗った。

『ぐるるる……(マジかよ……俺、今度はエルフのタクシーかよ……)』

ポチは涙を飲み、プライドを捨てて四つん這いになった。トリプル役満の覇者には逆らえない。

そんなカオスな光景を、少し離れたカウンターバーから眺めている男たちがいた。

「……ふぅ」

鬼神・龍魔呂が、ジッポーで火を付け、紫煙を深く吸い込んだ。

Larkの煙が、カジノの空調に吸い込まれていく。

「やれやれ。……敵わんな、あの嬢ちゃんには」

「全くだ。我らがブレスを吐こうが、あの『天然』には勝てん」

隣でバーボンを煽っていた竜王デュークが、呆れたように笑う。

「ま、結果オーライだろ。これで美味い飯の販路も増える」

狼王フェンリルが、氷の入ったグラスをカランと鳴らした。

彼らにとって、誰がオーナーになろうが関係ない。美味い酒とタバコ、そして仲間がいればそれでいい。

「龍魔呂、デューク。……飲みに行こうぜ。今日は朝までな」

フェンリルがニヤリと笑い、騒がしいカイトたちを顎でしゃくった。

「コイツらのドタバタ劇を 肴(さかな) にしたら、酒が美味そうだ」

「違いない」

「フッ、付き合おう」

男たちはグラスを掲げ、静かに乾杯した。

欲望の街・天魔窟。

その支配権が入れ替わっても、男たちの友情とタバコの味は変わらない。

「えぇーっ!? 僕たちが酒の肴ぉ!?」

遠くでカイトの悲鳴が聞こえた。

「勘弁してぇぇぇぇ!!」

その叫び声と共に、天魔窟の夜は更けていく。

カイト農場は今日、新たな「資金源」と「最強のオーナー(ルナ)」を手に入れ、ますます手がつけられない組織へと進化したのだった。