軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 9

【伝説】親番ルナ。天和・大三元・字一色(トリプル役満)

卓上の空気は、極限まで張り詰めていた。

いや、正確には「一方的な虐殺」の空気が支配していた。

「糞ッ! 次だ! 『魔王城の権利書』を賭ける!」

ルーベンスが血走った目で叫び、懐から新たな書類を叩きつけた。

彼は既に、魔王軍の予算、自分の退職金、そしてあろうことか「魔王ラスティアの身柄」まで賭けて負けていた。

「ちょっとルーベンス! 勘弁してよ!」

後ろで見ていたラスティアが悲鳴を上げる。

「さっきは私を賭けて負けたじゃない! 私、キュルリンのメイドになるなんて嫌よ!?」

「うるさい! 勝てば取り戻せるんだ!」

ギャンブル沼にハマった男の典型的な思考だ。

それを見ていたカイトも、なぜか対抗心を燃やして手を挙げた。

「じゃあ、こっちは**『農場の権利書』**だよ! あと、ポチの所有権も賭ける!?」

『ぐるるる……(マジかよこの雀鬼共は!? 俺をチップ扱いすんな!)』

足元でポチが恐怖に震えている。

カイト農場の全てが、この卓上に積まれていた。

「えへへ……いいねぇ、ゾクゾクするねぇ♡」

キュルリンは恍惚の表情を浮かべた。

彼女のイカサマは完璧だ。ルーベンスの手牌は透けて見えるし、自分のツモは自由に操作できる。

(馬鹿なカモたち。この局でトドメを刺して、皆まとめて吹き飛ばしてあげるよ♡)

そして迎えた、南場・オーラス。

親番(ディーラー) は、ここまで鳴かず飛ばずの東家・ルナだ。

全自動卓から牌がせり上がる。

ルナの前に、14枚の牌が並んだ。

その瞬間。

ゴゴゴゴゴ……ッ!

ルナの小さな背中から、**『七色のオーラ』**が立ち昇った。

「……ん?」

キュルリンの動きが止まる。

なんだ? このプレッシャーは。

ただの子供だと思っていたエルフから、神々しいまでの光が溢れ出している。

ざわ……ざわ……

卓上の空気が歪む。

イカサマで作られた磁場が、強制的に書き換えられていくような感覚。

「な、何……? 何が起きているの?」

キュルリンの額に冷や汗が伝う。

ルーベンスは眼鏡を拭きながら不思議そうに言った。

「ルナが親だろ? 配牌が配られただけだが、それが何か?」

「ま、まさか……」

立会人のリベラだけが、その異常事態に気づき、口元を押さえた。

「ルチアナ様! ルナさんの手牌を! あれを!」

「え? なになに?」

ルチアナが覗き込む。

「ルナ! あんたそれ!!」

「え?」

ルナはキョトンとして、自分の手元にある牌を見つめた。

「なんかぁ、全部キラキラしてて綺麗ですねぇ。……これ、あがってるんですかぁ?」

コトッ。

ルナは無造作に、配られたばかりの14枚の牌を倒した。

白・白・白 發・發・發 中・中・中 東・東・東 南・南

文字(漢字)の牌しかない。

しかも、三元牌(白發中)が全て揃っている。

そして何より、「第一巡目」。まだ誰も牌を捨てていない。

「……はい?」

時が止まった。

「て、 天和(テンホー) ……?」

キュルリンの声が裏返る。

配牌の時点でアガリ形が完成している、天文学的確率の役。

だが、それだけではない。

「 大三元(ダイサンゲン) ……そして、 字一色(ツーイーソー) ……!?」

リベラが震える声で役を読み上げた。

役満、役満、役満。

麻雀のルールにおける破壊神。

親のトリプル役満。

点数にして、14万4000点(※ローカルルール適用なら青天井)。

「ひ、ひいいぃッ!? な、なんだそれはぁぁぁッ!!」

キュルリンが絶叫し、椅子から転げ落ちた。

イカサマ? 積み込み?

そんな次元ではない。これは「世界そのものがルナに味方した」結果だ。

「つ、つまり……」

リベラは六法全書を開き、契約内容を確認した。

「この点数により、キュルリン殿はトビ(破産)……いや、即死ですわ。よって……」

彼女は呆然としながら宣告した。

「賭けられていた『ラスティア』『魔王城』『農場』『ポチ』……そして担保になっていた『天魔窟の全権利』は……全てルナさんの物になります」

「な、なんですってぇぇぇぇ!?」

全員が絶叫する。

ルーベンスは泡を吹いて気絶し、カイトは「すごい! ルナ天才!」と拍手している。

大陸最大の裏社会・天魔窟。

そのオーナーが、たった今、可愛らしいエルフの少女に変わった瞬間だった。

「わぁ~、私がオーナーですかぁ?」

ルナは状況をよく理解していないまま、首をコテンと傾げ、キュルリンに向かって無邪気に微笑んだ。

「てへ☆」

その笑顔は、どんな魔王よりも、どんな賭博王よりも、恐ろしく、そして最強だった。