軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 6

【飯テロ】仁義なき焼肉会。上タン塩を巡る神々の戦争

時刻は夜の帳が下りた頃。

天魔窟のカジノリゾートの一角にある、貸し切りのオープンテラス。

そこに漂うのは、ギャンブルの鉄火場の熱気など吹き飛ばすほどの、暴力的かつ芳醇な「脂と炭火の香り」だった。

「……いいか、お前ら。心して聞け」

七輪の前に陣取った鬼神・龍魔呂が、トングをカチカチと鳴らしながら低い声で告げた。

その目は、かつて数千の軍勢を前にした時よりも鋭い。

「焼肉とは遊びではない。命との対話だ。……そして、早い者勝ちの戦争だ」

彼の前には、山盛りの生肉が鎮座している。

ただの肉ではない。カイト農場で育てられたSランク食材『エンペラー・バッファロー』の希少部位たちだ。

「ゴクリ……」

七輪を囲むのは、風呂上がりで空腹が極限に達した猛者たち。

サウナで整ったデューク、フェンリル、ルーベンス。

エステでツルツルになったルチアナ、ラスティア、フレア、リベラ。

そして、遊び疲れたカイトとアレンたち。

「最初は『上タン塩』からだ」

龍魔呂が、透き通るようなピンク色の薄切り肉を網に乗せた。

ジュゥゥゥゥ……!!

脂が炭に落ち、香ばしい白煙が立ち昇る。

「わぁ! 僕が育てた『深淵の長ネギ』を使った特製ネギ塩ダレもあるよ!」

カイトがボウルいっぱいの刻みネギを差し出す。

輝く肉。

香るネギ。

全員の理性が焼き切れる音がした。

「……今だッ!!」

誰かが叫んだ瞬間、テラスは戦場と化した。

バシィッ!!

「甘い! その肉はまだ片面焼きだ!」

ルーベンスが箸で神速のガードを見せる。彼は「焼肉奉行」として、焼き加減に命を懸ける男だ。

だが、その隙を野生の獣が突く。

「いただきぃッ!」

狼王フェンリルが残像を残すスピードで、半生のタン塩を箸で掠め取った。

「ああっ!? 貴様フェンリル! それは私が育てていた(焼いていた)肉だぞ!」

「へっへー! 焼肉は食ったもん勝ちなんだよオッサン!」

フェンリルが口に放り込もうとした、その刹那。

ゴォォォォッ!!(業火)

「――させん」

竜王デュークの口から、ピンポイントで「黄金のブレス」が放たれた。

「熱っ!? 何しやがる!」

「我の肉を奪う報いだ。……炭になるがいい」

フェンリルの箸の上で、上タン塩は一瞬にして黒焦げの炭素へと変わった。

「あぁぁぁッ! 僕のネギがあぁぁぁ!」

カイトが悲鳴を上げる。

肉に乗っていた特製ネギもろとも消滅したからだ。

「ちょ、何やってんのよ馬鹿男ども!」

ルチアナが叫ぶ。

「アタシたちが食べる分がないじゃない! こっちはエステ後でお肌がタンパク質を求めてるのよ!」

「うるさい! 女子供はサンチュでも食ってろ!」

「なんですってぇぇ!? 戦争よ!」

ルチアナが魔法(重力操作)で網を浮かせようとし、フレアが炎で直接肉を炙り、リュウが「アクセル(加速)」を使って隙間から肉を盗む。

神権とスキルが飛び交う、カオス極まる食卓。

「……お前ら、いい加減にしろ」

カチッ。

龍魔呂の額に青筋が浮かんだ。

「せっかくの肉を粗末にする奴には……こうだ」

彼は網をひっくり返し、残っていたタン塩を回収すると、新しい網を叩きつけた。

「タン塩は終了だ。没収する。……次は『ホルモン(ミノ)』だ」

ドサァッ!

脂たっぷりのホルモンが網に投下された。

ボワァァァァッ!!

滴り落ちる脂で、七輪から火柱が上がる。

ファイヤー。

それはまさに地獄の業火。

「熱っ!? 龍魔呂さん、火力が強すぎますわ!」

リベラが悲鳴を上げながら後ずさる。

「ホルモンは皮目から焼くんだ! 焦げるぞ! 引っくり返せ!」

「見えん! 煙で肉が見えん!」

「アレン、氷魔法だ! 網を冷やせ!」

「えーい! ブリザード!」

カチンコチン。

燃え盛るホルモンが一瞬で凍りついた。

「……ふぅ」

龍魔呂はタバコ(Lark)に火をつけ、遠い目をした。

「……カイト。やはりこいつらに高級肉は早かったようだ。次はカルビ(並)でいいか?」

「うん……そうだね。僕のネギが燃えちゃったし……」

カイトは涙目で、黒焦げになったネギの残骸を突っついていた。

仁義なき焼肉会。

その勝者は、カオスの中でちゃっかり白飯の上に肉を確保していた、ルナ(大賢者)だけであった。

「ん~♡ 役満の味がするわね」

こうして腹を満たした一行に、ついに天魔窟の主からの「本番」の誘いが届く。

焼肉の煙が晴れた後、そこには不敵に笑うキュルリンの姿があった。