軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【女子会】スイートルームのマウント合戦(エステ付き)

天魔窟の中心にそびえ立つ、超高級カジノホテル「バベル」。

その最上階にあるVIP専用スパルームは、下界の喧騒とは無縁の天国だった。

最高級の泥パック、アロマオイルの香り、そして凄腕のエステティシャンたち。

「……はぁ、生き返るぅ~♡」

マッサージベッドにうつ伏せになった不死鳥フレアが、とろけるような声を上げた。

日頃のアイドル活動(と世界管理)の疲れが、熟練の指圧によって溶かされていく。

「悪くないわね。……地球の高級スパより技術が高いんじゃない?」

隣のベッドでは、創造神ルチアナが背中にホットストーンを乗せられ、満足げに呟いた。

「あら、素材が良いからですわ。この泥、私の領土の魔界火山から採取した最高級品ですもの」

魔王ラスティアも、優雅にパックを顔に塗りたくっている。

男たちがサウナで裸の付き合いをしている頃、女性陣は美を磨きながら、さらにドロドロとした「本音の探り合い」を始めていた。

「ねぇねぇ、ところでリベラさん」

ラスティアがパック越しの目だけで、離れたベッドのリベラを見た。

「貴女、本当は誰を狙ってるの? カイト様?」

「……えっ?」

突然の恋バナ。

バスローブ姿で足湯に浸かっていたリベラは、少し顔を赤らめ、視線を泳がせた。

「そ、それは難しい所ですわ。カイト様は尊敬していますけれど……」

彼女は少し言い淀んでから、小声で告白した。

「……龍魔呂さん、とか。……守ってあげたい、みたいな」

「へぇ~!」

「意外ね!」

「彼、過去に傷を持っていますでしょ? 料理をしている時の背中が少し寂しそうで……私が法的に、そして精神的に支えて差し上げたいと言うか……」

リベラの「ダメンズ・ウォーカー」の素質(あるいは母性本能)が露呈した瞬間だった。

だが、それに噛み付いたのがフレアだ。

「まぁ! 龍魔呂は私も狙ってるのよ!?」

フレアがガバッと身を起こした(背中のタオルが落ちかけた)。

「あの寡黙で職人気質な所が良いのよ! 私の情熱的な愛で、あのクールな男を焼き尽くしてあげるんだから!」

「あらあら、モテるわねぇ龍魔呂も」

ラスティアが面白そうに笑う。

「でもフレア、龍魔呂は競争率が高いわよ? あんたはデュークかフェンリルにしなさいよ。お似合いじゃない?」

「ふざけんじゃないわよ!?」

フレアが柳眉を逆立てて叫んだ。

「誰が好んで、あのラーメン親父や駄犬と恋仲になるの!? デュークなんて加齢臭が豚骨スープだし、フェンリルなんて雨の日の犬小屋の臭いがするのよ! 生理的に無理!」

「(ひどい言われようだ……)」

リベラが苦笑する中、今度はルチアナが鼻を鳴らした。

「ふふん、甘いわねアンタたち。龍魔呂なんて、アタシのこの魅力的なボディを使えばイチコロよ?」

ルチアナはバスローブをはだけさせ、豊満な肢体を誇示してみせた。

創造神の完璧なプロポーション。確かに破壊力は抜群だ。

だが、ラスティアが冷ややかな一言を突き刺した。

「……何億年と生きてる『 干物(ひもの) 』じゃなくって?」

ピキッ。

ルチアナの笑顔にヒビが入った。

「誰が干物よ! あんただって似たような物でしょ!? 魔王歴何千年よ!」

「残念でした~。貴女とは1万年は若いですぅ~!」

「私は9000年若くってよ!?」

フレアも参戦する。

億単位のルチアナに対し、数千歳単位のラスティアとフレア。

五十歩百歩だが、彼女たちにとってその「差」は絶対的な優位性らしい。

「きぃぃぃ! 年齢なんてただの数字よ! 大事なのは肌年齢よ!」

「あら、近くで見ると目元の小ジワが目立ちますわよ、創造神様?」

「なんですってぇぇ! ブラックホールに放り込むわよ!?」

エステルームに殺気が充満し、エステティシャンたちが震え上がる中。

プルプル、という効果音が聞こえてきそうな肌を持つ少女が、口を挟んだ。

「……まぁまぁ、お姉様たち」

エルフのルナだ。

彼女は顔の泥パックを洗い流し、鏡の前で自分の頬を指で弾いた。

ピーン! と水滴が弾け飛ぶ。

「不毛な争いは、この『水玉も弾く肌』になってからと言う事で。……ね?」

キィィィィィィィィィッ!!(超音波)

ルチアナ、ラスティア、フレアの三柱が、同時に歯ぎしりをした。

圧倒的若さ。

神の力でも再現できない、天然のコラーゲン。

「……くっ、生意気なエルフめ……!」

敗北感に打ちひしがれる古代兵器たち。

そこに、リベラが優雅にハーブティーを置き、静かに微笑んだ。

「まぁ、20歳の私なら対抗出来るかしら? お肌の曲がり角とは言いますけれど、まだ『現役』ですもの」

「ぐふっ……!」

「20歳……人間族の若さが眩しい……!」

リベラの「リアルな若さ」がトドメを刺した。

勝負あり。

今日の勝者はリベラかと思われた、その時。

ガチャッ。

スパルームのドアが開き、札束(スパチャの稼ぎ)を抱えたリーザが入ってきた。

「みんな~! エステ気持ちいい~? 私も奮発して一番高いコースにしちゃおっかな~!」

無邪気な笑顔。

リベラが余裕の笑みで尋ねた。

「あらリーザさん。貴女、おいくつでしたっけ?」

「え? 私、16歳ですけど?」

ズガァァァァァァァン!!!(精神的核爆発)

「「「「オイ!?!?」」」」

全員がリーザを睨みつけた。

16歳。

ピチピチという言葉すら生温い、圧倒的な青春の輝き。

ここにいる全員(リベラ含む)が、その数字の暴力に殴り飛ばされた。

「……え、なに? 私、何か変なこと言った?」

リーザがキョトンとする。

ルチアナが震える声で言った。

「……リーザ。あんた、後で私の部屋(説教部屋)に来なさい」

「え~!? 何でもございませ~ん!!」

リーザは危険を察知し、札束を抱えて脱兎のごとく逃げ出した。

残された大人の女性たちは、深く、深くため息をつき、全員で一番高い「アンチエイジング・コース」を追加注文したのだった。