作品タイトル不明
78.まずはレシピ作り
「こんな事もあろうかと、薬師協会の資料室で素材のことを書き写してきたもんね」
以前ロザンお父様から貰った本だけでは素材の知識が足りない。だから今後のためにと書き写しておいたのだが。まさか、こんなにも早く役立つとは思わなかった。
「さて、どの素材をメインにしようかな」
ノートを開き、丁寧に書き連ねた素材一覧を指でなぞる。
「攻撃系の効果がついた素材ってあるかな?」
ページを捲りながら特性を確認していくが、直接的に攻撃と呼べるような効果はほとんど見当たらない。毒や麻痺のような搦め手はあっても、即効性のある打撃力には欠ける。
「……やっぱり、この世界の攻撃方法って武器や魔力や魔法が前提なんだ」
だからこそ、素材単体で攻撃力を持つものは少ない。けれど逆に言えば、発想次第でいくらでも化ける余地があるということだ。
そう考えながらページを進めていくと、一つの素材で手が止まった。
「へー、強く擦り合わせると破裂する石、ショック石か……」
一見すると、ただの危険物。取り扱い注意の厄介な素材だ。少なくともそのまま使うことは想定されていない。
だけど――。
「これ、使い方次第じゃない?」
指先で軽くトントンとノートを叩きながら、思考を巡らせる。
衝撃で破裂する。つまり、内部にエネルギーを溜め込んでいる構造か素材そのものに特性がついている。
「だったら、その衝撃を人工的に増幅させれば……」
単なる破裂じゃなく、爆発に変えられる。例えば落下。投擲。圧縮。あるいは、魔力で瞬間的に内部圧を高める方法もあるかもしれない。
「……うん、いける」
これは当たりだ。さらに応用も利く。破裂のタイミングを制御できれば、罠にも使えるし、遠距離攻撃にも転用できる。
「ただの素材でも、組み合わせれば武器になるってことね」
攻撃用の素材がないなら、作ればいい。この世界の常識に縛られる必要なんて、どこにもないのだから。
「威力は……直接触れると、手の皮膚が少し抉れるくらいか。このままだとやっぱり不十分だから、どうにか効果を増幅させないといけないね。じゃあ、その為の素材は……」
さらにノートを捲る。衝撃を増やすような効果のある物を調べていく。
「直球に効果を増幅させるものはないか。んー、何か……あっ! 前に使ったミシングの葉はどう?」
ファルスお兄様の薬を作った時に使用した素材。確かミシングの葉の効果は、成分の働きを高める性質を持つ。この成分で衝撃の効果を高められないだろうか?
「ショック石とミシングの葉を調合すれば、きっと衝撃の威力の強いアイテムになる。これで、魔物を倒せるアイテムになるかも」
この二つの効果をかけ合わせれれば、きっと良い攻撃アイテムが出来るはずだ。
「あとは、どうやって調合するかだよねー。流石に液体で成分抽出する訳にもいかないし。調合って固形の物同士でもいけるのかな?」
今までは液体に成分を抽出して作っていた。だけど、今回は液体ではダメ。完成形が固形の物でなくてはならない。
初めての薬以外での調合。どんなものが出来るか分からない。でも、それが逆にワクワクした。
「どんな感じに仕上がるのか楽しみだなー。ゲームのように見た目が凄く変わったり、その素材はどこから出てきたっていうことになるのかな」
ゲームの中では、その素材でどうしてそんな物が出来るのかっていうくらいに補助がきいたアイテムが出来ていた。今使っている錬金術もどこからその物が出てきたっていう魔法が多いから、そういう補助が付きそうだ。
なんだか、前世のゲームを思い出してワクワクとした。それをリアルで出来るんだから、楽しさも倍増だ。
「こうしちゃいられない! 早く、素材を見つけて調合しなくっちゃ!」
勢いよく立ち上がると、私は部屋を飛び出していった。待っていて、新しい調合!