作品タイトル不明
7.痛み止め薬の調合
昨日、森でロキニン草を大量に採取してきた。そして今日――人生で初めての薬の調合が始まる。
「絶対に、この調合を成功させる」
小さく拳を握りしめ、私は作業机に向き直った。まずは【素材保存】からロキニン草を数枚取り出す。調合の前に、状態確認は欠かせない。
【ロキニン草】
・品質:100/100
「よし……品質劣化なし」
申し分ない数値だ。この状態なら、素材そのものの効能は最大限に引き出せるはず。問題は、ここから。
ロキニン草は「痛みを抑える」薬草だが、使い方を間違えれば効能は半減する。最悪の場合、ただの苦い草汁で終わってしまう。
「処理方法はいくつもある……」
私は頭の中にある知識を整理しながら、指を折っていった。
「一つ目、乾燥させて粉末化する方法」
水分を飛ばし、成分を安定させる古典的なやり方。保存性は高く、扱いやすい。ただし、即効性はやや落ちる。
「二つ目、すり潰して抽出液にする方法」
こちらは新鮮なうちに細胞を壊し、成分を直接取り出すやり方。効果は高いが、劣化が早く失敗もしやすい。
「三つ目……煮出し」
鍋で加熱し、有効成分を湯に溶かし出す方法。錬金術としては定番だが、火加減を誤ると成分が壊れる危険がある。
「まずはこの三つで処理して、様子を見よう」
一つずつ確認する必要がある。まずは乾燥させて粉末化にしよう。
全てのロキニン草を【洗浄】で綺麗にする。次に【乾燥】で水分を抜く。そしたら、葉っぱがカサカサになった。
【道具召喚】で容器を召喚して、その中にロキニン草を入れる。最後に【粉砕】で一瞬にロキニン草を粉末にした。
「これだと、いつも飲んでいる薬だけど……。効果はどんなものかな? 鑑定!」
【痛み止め】
・効能:痛みを和らげる(弱)
・ロキニン草を乾燥させ、粉末化した薬
・乾燥により有効成分の一部が失活
・吸収効率が低い
・品質:77/100
「イザベルお母様が飲んでいた薬よりも少し品質が上がったかな。だけど、やっぱり乾燥によって有効成分がなくなっている」
試しにやってみたけれど、乾燥はダメだ。有効成分が抜け出ている時点で、私の作りたい痛み止めとは違う。
「乾燥はなし、だね。じゃあ、次はすり潰す方法で」
すぐに次に取り掛かる。容器に新鮮なロキニン草を入れて、【粉砕】で一瞬にロキニン草をすり潰した。
「ただ、すり潰しただけだけど……どうかな? 鑑定!」
【痛み止め】
・効能:痛みを和らげる(中)
・ロキニン草をすり潰した薬
・有効成分が十分に含まれている
・とても苦くて、このまま飲むと体にダメージが入る
・吸収効率が高い
・品質:98/100
「効果が上がったし、品質もいい! だけど、苦すぎてこのままだと使えない……」
もしかして、生で使えないから乾燥させて粉末にしたんだろうか? 使えないんじゃ、薬にはならないよね。でも、これでロキニン草は生で使った方が効果があるって分かった。
「じゃあ、最後に煮出す方法をやろう」
錬金術師としては、この方法で薬を作りたいけれど……どうなるか。
まな板上にロキニン草を置くと、【切断】で葉っぱを小さく切る。ビーカーの中に水と切ったロキニン草を入れる。それから【温度上昇】を使い、お湯にして煮出していく。
混ぜ棒で混ぜながら【成分抽出】を発動させていった。
「どれどれ、どんな様子かな? 鑑定!」
【品質:21】
【品質:25】
【品質:28】
「上がっているけど……鈍いな」
【品質:30】
【品質:27】
「あっ!」
【品質:23】
「ダメだ、下がっている!」
慌てて【成分抽出】の魔法を止め、再度詳しく鑑定した。
【失敗した痛み止め】
・正しく成分抽出が行われなかった
・熱によって痛み止めの効能は失われた
・苦味が過剰に抽出されている
・品質:21/100
「なるほど……ロキニン草は熱には弱いってことか」
失敗はしたが、知見は得られた。
「乾燥だと成分が失われ、すり潰しだと効果はあるけれど苦すぎて使えない、煮出すと成分が失われる」
この中で一番可能性があるとすれば、それはすり潰すこと。苦味をどうにかすれば、薬になるということだ。
「苦味を取るには、どうしたらいいだろう? 何か、便利な魔法はないかな?」
私はステータス画面を開いて、錬金術の魔法の欄を確認した。一つずつチェックしていくと、気になる魔法を見つけた。
「あっ……【成分消去】? 説明は……」
【成分消去】
・対象物に含まれる特定の成分・性質のみを選択的に消去する魔法。
・使用者は成分構成を感知・理解した上で、不要と判断した要素を指定できる。
「これだ!」
思わず声が弾んだ。これがあれば、邪魔な成分だけを取り除ける。効能を損なうことなく、必要な部分だけを残す。まさに、今の私が欲しかった力だ。
「これがあれば、不要な成分を消去できる……!」
私はすり潰したロキニン草に意識を集中し、【成分消去】を発動した。見た目に変化はない。色も匂いも、そのまま。けれど、内側で確かに何かが削ぎ落とされた感覚があった。
直後、鑑定結果が更新される。
【痛み止め】
・効能:痛みを和らげる(中)
・ロキニン草をすり潰して精製した薬
・有効成分が十分に含まれている
・吸収効率が高い
・品質:98/100
「やった! 痛み止めの完成だ!」
思わず拳を握りしめる。いつも飲んでいる薬よりも効能は上。品質も高く、吸収効率が良い分、即効性も期待できる。
「これなら……ちゃんと薬として通用する」
初めての薬の調合。失敗の不安もあったけれど、それを乗り越えて形にできた。
これで、イザベルお母様の痛みを和らげることが出来る!