軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6.痛み止めの薬を求めて(2)

ロキニン草なら、見たことがある。お医者さんが「いざという時のために」と、以前見せてくれた薬草だ。

真っすぐに伸びた茎に、枝分かれするように葉が付いている。その葉に、痛み止めとして使われる成分が含まれている。そう説明されたのを覚えている。

つまり、採取するなら葉が目的だ。茎ごと引き抜く必要はない。何十枚か集められれば、今日の目的は果たせる。

「んー……ロキニン草、どこかな?」

森の中を見渡しながら、少しずつ歩を進めていく。その途中、何度かスライムに遭遇しては、きちんと駆除した。魔物の放置は村にとって害になる。薬草探しのついでとはいえ、疎かには出来ない。

――けれど。

「……ないなぁ」

いくら探しても、それらしい草が見当たらない。本当に、この森に生えているのだろうか。胸の奥に、じわりと不安が広がっていく。

それでも足は止めなかった。気持ちを奮い立たせ、森の中を注意深く探し続ける。ただし、無理はしない。

森の奥に行けば、より強力な魔物が出てくる。私は森の浅い場所までしか行動するな、ときつく言われている。本当は、奥へ行けば薬草が豊富だと分かっている。でも――。

「……我慢、我慢」

自分に言い聞かせ、浅い範囲だけを丹念に探す。

「えーっと……あれ?」

視線を巡らせていると、木の陰に、どこか見覚えのある草が生えているのが目に入った。思わず駆け寄り、しゃがみ込む。

「……これ」

記憶と一致した。間違いない。

「やった! 見つけた!」

ようやく、一株目のロキニン草だ。胸が少し弾むのを感じながら、私はすぐに鑑定を使った。

「鑑定」

【ロキニン草】

・痛みを和らげる成分を含む薬草

・新鮮な状態ほど効能が高い

・品質:100/100

「うん、確かにロキニン草だ」

……それに。私は、表示された内容をじっと見つめた。

「新鮮な状態ほど、効能が高い……」

さっき鑑定した痛み止めは、乾燥させすぎて成分が失活していた。でも、このロキニン草は――。

「品質、百」

文句のつけようがない。少なくとも、素材そのものは最高級だ。

「ってことは問題は、やっぱり加工工程だよね」

乾燥させすぎることで、有効成分が飛ぶ。粉末にすることで、空気に触れ、さらに劣化する。

「だったら新鮮なまま、使えばいい」

あるいは、乾燥させるにしても最低限。成分を壊さない温度と時間で処理する。

「……どんな処理がいいかなぁ」

葉から成分を直接引き出して、液体として使う。それを錬金術で整えれば、吸収効率も上げられるはずだ。

「今の薬より、絶対に効く」

イザベルお母様の痛みを、今より確実に和らげられる。その可能性が、はっきりと見えた。私はそっと、ロキニン草の葉に触れる。

「ありがとう。ちゃんと、役立てるから」

そう呟いてから、必要な分だけ葉を丁寧に採取した。ここで、私は新しい魔法を発動させた。

「【素材保存】」

【素材保存】とは、素材の品質を一定に保つことが出来る空間のこと。その空間に入れれば、素材の品質は保障され。尚且つ、大量の素材を保管できるので、運搬の役目もある。

私が錬金術の項目を見ていて見つけた優れものだ。私はこの中に採取したばかりのロキニン草を入れた。これで、使う時まで品質が保たれて、新鮮な状態で使うことが出来る。

「よし、次に――」

「キィーッ!」

立ち上がろうとした、その瞬間だった。甲高い鳴き声が森に響き、私は反射的に振り向く。

そこにいたのは、ホーンラビットが三体。赤い目でこちらを睨みつけ、角を突き出して威嚇している。

「……三体か」

正直、少しきつい。そう思いながらも、私は立ち上がり、木の棒をしっかりと構えた。

どれから行く……?一体ずつ確実に――そう考えた、その時。

「ルイ!」

聞き慣れた声が、風を切るように響いた。

次の瞬間、ものすごい勢いでアマリアお姉様が飛び出してくる。目にも留まらぬ速さでホーンラビットとの距離を詰め、自慢の剣を一閃。

――シュッ。

鋭い音と共に、三体のホーンラビットが次々と切り伏せられた。あまりにも一瞬の出来事で、私はただ呆然と立ち尽くす。

森に静けさが戻り、戦闘の緊張が一気に解けた。

「アマリアお姉様、ありが――」

「ルイ! 大丈夫だった!? 怪我とかしてない!?」

「わっ!?」

言い終える前に、アマリアお姉様が勢いよく駆け寄ってきて、私をぎゅっと抱きしめた。

「魔物に襲われて怖かったわよね! でも、もう大丈夫! 私がいるから!」

「ア、アマリアお姉様……ちょっと、苦しい……」

「ご、ごめんなさい! でも、本当に大丈夫!? どこか怪我してない!?」

「もう、心配しすぎだよ。ほら、ちゃんと無事だから」

そう言って両手を広げて見せると、アマリアお姉様はようやく安心したように、大きく息を吐いた。

「……本当ね。良かった……」

けれど、すぐにその表情は引き締まる。

「ここは森の奥に近いの。浅い場所でも油断できないわ。いつ、強い魔物が奥から出てくるか分からないもの」

「でも、普段は大丈夫でしょ?」

私はにこっと笑って言った。

「だって、アマリアお姉様が魔物を駆除してくれてるんだもの。すごく頼りにしてるよ」

「……そ、そう?」

素直に褒めると、アマリアお姉様の表情が一気に柔らかくなる。

「ふふっ。ルイにそう言われると、不思議と力が湧いてくる気がするわ」

「だったら、何度でも言うよ。アマリアお姉様は凄い! 強い! 頼りになる!」

「え、えへへ……」

褒めすぎたのか、アマリアお姉様の顔は蕩けるような笑顔になっていた。

「ところで、ルイはここで何をしていたの?」

「お母様のための薬の素材を探してたの」

「……それは、とても大事なお仕事ね」

アマリアお姉様は一瞬考えてから、力強く頷いた。

「だったら、私が護衛するわ。ルイの仕事が捗るようにね」

「いいの? 助かる!」

アマリアお姉様がいてくれるなら、これ以上心強いことはない。

「ルイは素材採取に集中して。周囲の警戒は任せて」

「ありがとう! よし、素材採取、再開だ!」

その後は、アマリアお姉様の完璧な護衛のおかげで、ロキニン草を十分な量だけ採取することが出来た。

あとは、調合するだけ。次はいよいよ、薬を作る番だ。