作品タイトル不明
27.四つの素材(1)
筋肉の伸縮性を助ける成分を含む、グラストの実。
成分の働きを高める性質を持つ、ミシングの葉。
魔力を回復させる成分を宿した、ハイリンドの種。
血の循環を促進する成分を含む、ウリックの根。
まず、グラストの実とミシングの葉。この二つを組み合わせれば、筋肉そのものを強化する成分へと変化するはずだ。
次に、ハイリンドの種とウリックの根。こちらは魔力の循環を助け、体内の魔力の流れを整える成分になる。
そして、その二系統の成分をさらに統合する。
筋肉を強化しつつ、その動きを魔力で補助する。無理に力を引き出すのではなく、自然な動作を支える方向で。
そうすれば、ファルスお兄様が普通に体を動かすことが出来るはずだ。
頭の中で、完成形がはっきりと描けた。手順も、目的も、すべて揃っている。
これなら……大丈夫。
作るものが明確になると、不思議と迷いは消える。代わりに、胸の奥からやる気が湧き上がってくるのが分かった。
「よし……素材集め、頑張ろう!」
私は小さく拳を握り、次の行動へと意識を切り替えた。
今回集める素材は、どれも森に自生しているものばかりだ。私は太めの木の枝を一本拾い、足元を確かめながら森の中を歩き始めた。
「えーっと……木に絡んだ蔦に生っているグラストの実は……」
周囲をきょろきょろと見渡しながら進んでいると、ほどなくして視界の端にそれらしいものが映る。
「あ、あれじゃない?」
一本の木に絡みつく蔦。その先に、小さな実がいくつか生っている。近づいて確認するため、私は枝を持ち直した。
「鑑定っと」
【グラストの実】
・蔦に生る実
・筋肉の伸縮性を助ける成分を含んでいる
「うん、間違いない。グラストの実だ」
目的の素材が見つかって、自然と頬が緩む。私は慎重に実を摘み取り、そのまま【素材保管】へと収めた。
「これで、残りは三つ。よし、この調子で見つけていこう」
まだまだ集める素材はある。気合を入れ直し、再び森の奥へと足を進めた。
それから十数分――。
「……なかなか見つからないな」
やはり広い森の中で、特定の素材だけを探すのは簡単じゃない。一つ一つ目を凝らして歩いていくしかないのが、少しもどかしい。
「この間みたいに、人手があれば……」
そんなことを考えていた、その時。
「わーっ!」
遠くから、元気な声が響いてきた。
「この声……もしかして」
私は声のする方へ向かって歩いていく。すると、森の小道を進む村の子供たちの集団が目に入った。
「あっ、ルイだ!」
「また今日も素材集め?」
「今日は何を探してるんだ?」
私に気づくと、子供たちは嬉しそうに駆け寄ってくる。
「うん、そうだよ。今日も素材集め」
「俺たちは魔物駆除なんだぜ! 立派な仕事だろ?」
「この間、魔物の被害があったからね」
そう言って、私はにこりと笑う。
「みんな、お手伝い出来て偉いね」
「うん! 頑張るとみんな喜んでくれるし、お駄賃もくれるし!」
胸を張って言うその姿が、なんだか頼もしく見えた。こんなに小さくても、立派に村のことを考えてくれる、頼もしい村人だ。
「そうだ! また、素材探しを手伝ってやろうか?」
「えっ、いいの? 丁度手が欲しかったところなんだ。でも、魔物駆除はいいの?」
「あっ、そうだよねー。魔物駆除もやらないといけないんだった」
「でも、ルイが困っているなら力になってやりたいなー」
ここの子供たちとは良く遊んでいたから、何かと思いやってくれるところが嬉しい。子供たちが難しい顔をして相談し合っている姿を見るだけで、気持ちがいっぱいになる。
「じゃあ、私も魔物駆除のお手伝いをするから、魔物駆除をしながら素材探しを手伝ってくれる?」
「ルイが手伝ってくれるなら、百人力だ!」
「それだったら、ルイの事も手伝えるよ!」
「よし、村とルイのために頑張ろうぜ!」
私が提案をすると、子供たちからやる気に溢れた声が上がった。本当にここの子供たちは逞しいし、思いやりに溢れている。
「じゃあ、これが私が集めている素材だよ」
私は生活圏素材辞典を子供たちに見せると、子供たちは真剣にそれを確認してきた。
「なるほど、これを探せばいいんだな。魔物の駆除と一緒にでも出来そう!」
「なんか、どこかで見たことのあるものだね。すぐに見つかりそうだよ」
「じゃあ、みんな。やってやろうぜ!」
「「「おーっ!」」」
子供たちは威勢のいい声を上げた。本当にここの子供たちは頼りになる。その子供たちのためにも、魔物駆除の方も頑張らないと。
「今回、被害を出したのはホーンラビット。だから、ホーンラビットを集中して叩いていくよ」
「分かった!」
「まずは巣穴を片っ端から潰していくよ。みんなで協力すれば、一網打尽に出来るよ」
「一網打尽! それ、やってみたい!」
ホーンラビットを叩くなら、巣穴を探した方がいい。私がホーンラビット狩りというものを、ちゃんと子供たちに叩きこんでやろう。そしたら、今後のためになるだろう。
「じゃあ、行くよ!」
「「「おーっ!」」」
子供たちとの共同戦線が始まった。