軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.四つの素材(2)

「じゃあ、行くよ」

私が小さく声をかけると、蔦を編んで作った即席の網を構えた子供たちが、こくりと無言で頷いた。表情は強張っているが、目は真剣だ。逃げ道を塞ぐ位置も、事前に打ち合わせた通り。

私は繋げて長くした木の棒を両手で握り、地面に掘られた穴へと深く差し込んだ。そして、力を込めて何度も激しく揺する。

――キィッ!

苛立ったような甲高い鳴き声が、穴の奥から響いた。

「来るよ」

そう言ってすぐに距離を取る。棒を引き抜いた瞬間、土が弾けるように舞い上がり、穴の中からホーンラビットが勢いよく飛び出してきた。一本角を突き出し、周囲を威嚇するように跳ね回る。

「今だよ!」

合図と同時に、待ち構えていた子供たちが一斉に網を投げかけた。蔦の網は空中で広がり、飛び出したばかりのホーンラビットたちを包み込む。

絡め取られたホーンラビットは、地面の上でもがき、脚をばたつかせた。しかし、網が角と脚に絡み、思うように動けない。

「叩いて!」

私の声に、残っていた子供たちが一斉に駆け寄る。手にした木の棒を振り上げ、狙いを定めて振り下ろす。

ゴッ、ゴッ、と鈍い音が重なり、ホーンラビットは短く鳴いたあと、力を失って動かなくなった。

網の中が静かになり、土埃だけがゆっくりと落ち着いていく。

「やった! まとめて三体もやっつけた!」

「このやり方、いい!」

「簡単に倒せる!」

ホーンラビットを簡単に倒した子供たちは喜びの声を上げた。

「まともにやり合うと、やりにくいんだよね。だから、網を使って動きを封じて、棒で叩くのがいいよ」

「うん、うん。それがいい!」

「まともにやり合うと、動きが素早くて、倒すのに時間がかかるんだよな」

「でも、これだったらすぐに倒せるからいい!」

私が昔使っていたやり方を子供たちに教えると、子供たちは効果的なやり方を知ってご満悦だ。

このやり方が広まれば、今まで以上にホーンラビットの駆除が進むだろう。そうなると、村のためにもなる。

「じゃあ、ホーンラビットは一度私の方で預かるね」

網をどけると、倒したホーンラビットを【素材保管】に入れておく。こうすることで、後でまとめて手渡すから、手が塞がらなくていい。

「次の巣穴を探しに――」

そう言いかけた時だ。

「ルイ、ちょっと来て!」

子供が私を呼んだ。私はすぐにその子供のところに行くと、子供は地面を指さしていた。

「これって、辞典に載っていたものじゃない?」

そう言われて確認をしてみると、地面には茎の長い草が生えていた。この形、辞典で見たことがある。すぐに、鑑定を使ってみると――。

【ウリックの根】

・血の循環を促進する成分を含む

「あ、そうそう! これは素材だよ! 良く見つけてくれたね、偉い!」

「えへへ」

子供が見つけてくれたのは、今回探している素材で間違いなかった。その子供の頭を撫でて褒めてあげると、とても嬉しそうな顔をしてくれた。

子供たちとあちこちに移動をして、魔物駆除を行う。と、同時に素材探しを手伝ってもらっている。そのお陰で、素材は沢山見つかっている。

やっぱり、森を遊び場として活用している子供たちがいれば百人力だ。お陰で、魔物駆除も捗っていて、村の被害も減ってくれるだろう。

素材を丁寧に採取し、【素材保管】に収納した。

「みんな、良い調子だよ。このまま魔物駆除と素材探しをよろしくね」

「おう! 任せておけ!」

「ルイのお陰で、今日のお駄賃が増えそうだよ!」

「過去の記録を塗り替えようぜ!」

声をかけると、子供たちは俄然としてやる気を見せた。この様子なら、今日は良い感じに作業が進みそうだ。

私たちはその場を離れ、次の巣穴を探しに歩いた。

その後、私たちは勢いに乗ったまま快進撃を続けた。ひとつ巣穴を叩けば、また次、さらにその奥と、ホーンラビットの巣を見つけては同じ手順で確実に仕留めていく。逃げ場を失った魔物たちは次々と網に絡め取られ、気が付けば数えるのも面倒になるほどの数を駆除していた。

結果として、討伐したホーンラビットの数は軽く何十体を超えた。素材はすべて【素材保管】へと収めていく。意識を向けるたび、保管枠の中にぎっしりと並ぶ肉と皮が増えていくのが分かる。

この量なら、しばらくの間はどの家でもホーンラビット肉を使った料理が並ぶだろう。焼いても良し、煮ても良し。ちょっとした祭り騒ぎになるほどの収穫だ。

魔物の駆除が順調に進む一方で、素材の採取もまた、驚くほど捗っていた。森を遊び場として育った子供たちにとって、素材探しは作業ではない。草の陰や木の根元、岩場の隙間を覗き込みながら、どんどんと素材を見つけていく。

宝物を見つけたような顔で次々と持ってきてくれる。楽しみながらも、教えたポイントはしっかり守っていて、必要な部分だけを丁寧に採取してくれるのが頼もしかった。

そのお陰で、私が一人で森を歩き回るよりも、遥かに短い時間で大量の素材が集まった。意識を【素材保管】へ向けると、そこには山のように積み上がった素材の気配がある。

今回の調合に必要な分は、量も質も申し分ない。むしろ、余りが出るほどだ。

「今日は手伝ってくれてありがとう。お陰で、素材が見つかったよ」

「こっちの方こそ、手伝ってくれてありがとう! お陰で今日は沢山褒められそう!」

「過去最高だもんな!」

「流石、ルイだね!」

声をかけると、子供たちは自慢げに背負ったホーンラビットの束を見せつけてきた。一人十体近くは持っているので、今日は大量だ。

「今度はゴブリンの倒し方も教えてくれよ!」

「一人でゴブリン倒したい!」

「ゴブリンを一人で倒せば、一人前の村人だって認められるしな!」

「ふふっ、そうだね。じゃあ、今度はゴブリンの退治の仕方を教えてあげるよ」

「「「やったー!」」」

私の言葉に子供たちは大喜びだ。帰り道は賑やかな子供に囲まれて、私は帰路に付いた。

素材も十分に見つかったし、今度は調合の時間だ!