軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

薬師ココ、犬を拾う(※Web版)③

毒の成分をつきとめてから、数日後。

調合した薬を飲んだ犬は、どんどん元気になっていった。

ぺたっと垂れていた耳もピンと立ち、ハッハッハと楽しそうに裏庭を探検するようになった。

ご飯も食べるようになり、心なしか毛艶も良くなり、更にふわふわ感が増した気がする。

おやつが大好きでちょっと意地汚いところはあるが、それも含めてとても可愛い。

クロエは感心した。

もともとつぶらな瞳が愛らしかったが、まさかここまで可愛い犬だとは思わなかった。

(よほど体調が悪かったのね)

犬が庭の隅で楽しそうに骨をガジガジとかじっているのをながめながら、彼女は思った。

拾ってもう数日経つ。

迷い犬の届け出もないらしいし、そろそろうちの犬ということにしても良いのではないだろうか。

(となると、名前ね。呼ぶ機会が増えて不便になってきたところだし、まずは名前をつけましょう)

クロエは、むむむ、と唸りながら犬をながめた。

白と茶色の毛並みがどことなく品が良さげだわと考える。

そして熟考の末、彼女は決めた。

「オスカーがいいわ、オスカーにしましょう」

由来はもちろんコンスタンスの兄であるオスカーだ。

毛並みの良さに何となく彼を思い出したのだ。

きっと上品で強い犬になるわねと思いながら、クロエはおやつのお代わりを強請りにきた犬を笑顔で撫でた。

「オスカー、今日からよろしくね」

オスカーはキラキラした目で「わん」となくと、おやつの入った袋をチラ見しながら尻尾を振った。

一方その頃。

サイファのギルド本部の会議室では、緊急の打合せが行われていた。

出席者はサイファの冒険者ギルド長と職員、王都から来た医師と薬師、ギルド本部職員だ。

皆一様に深刻な顔をしている。

医師が口を開いた。

「サイファでの感染者12名のうち、回復したのは2名。残りは高熱で苦しんでいる状態です。新たに加わった3人も熱が上がり続けています」

「彼らの共通点はないのか」

「回復した2名と新たに加わった3人に対して聞いたのですが、行った場所も食事もバラバラでして、共通点が見つからない状態です」

職員の言葉に、深刻な顔をする一同。

このまま発生源が分からない状態で患者が増え続ければ、地下洞窟の全面封鎖になりかねない。

そして発生源の解明か特効薬の開発ができなければ、その封鎖はずっと続くことになる。

これは地下洞窟からの資源で潤っているルイーネ王国としては非常にマズイ状態だ。

ギルド長が重々しく口を開いた。

「とにかく調査を続けよう。来週になれば本部から役員が来る。それまでに何かしら掴むよう努力するしかない」

その場にいる全員が、重々しくうなずいた。

犬との生活を始めて、約2週間後。

曇り空の下クロエが犬と一緒に楽しそうに歩いていた。

「今日は涼しくて快適だね、オスカー」

「わんっ」

るんるんと楽しそうに歩く犬を見下ろしながら、クロエは軽く口角を上げた。

前世と合わせて初の犬と共に暮らす生活は、思いの外楽しいものだった。

オスカーは思った以上に賢い犬で、クロエが古代魔道具の分析に夢中になっているときは決して邪魔せず大人しくしていてくれた。

毎日の散歩も楽しいし、おやつを巡っての駆け引きも楽しい。

彼女は完全に犬のいる生活にはまっていた。

(前の飼い主はなぜこんな可愛い犬を手放したのかしら)

そんなことを考えながら城門を潜り抜けて、街のすぐ近くにある湖に向かい、周囲をオスカーと共にぐるりと回る。

そして「おやつでも食べましょう」と木陰のベンチに腰掛けると、クロエは鞄から小さなおやつを取り出した。

「オスカー、お手」

おやつを右手に持って左手を差し出すと、オスカーが急いで前足をその手にのせる。その後すぐに逆の前足を乗せて伏せをしたあとにぐるりと回った。これから言われることを予測して全て済ませる。

「オスカーは賢いわねえ」

半ば感心しながらおやつをあげて、自身は鞄から水筒を取り出すと、木漏れ日をながめながらのんびりとお茶を飲み始めた。

運動をしたせいか、お茶がいつもより美味しく感じる。

(こういう生活も悪くないわね)

そして、さて帰ろうとベンチを立とうとした、そのとき。

「トビー!」

突然若い男性の大声が聞こえてきた。

オスカーがピクリと耳を立てて周囲を見回し、「わんわん!」と嬉しそうにほえる。

その視線の先を見ると、そこには茶色いコートにフードを被った大柄な男性が立っていた。

オスカーが夢中で男性の元へと駆け寄った。

「トビー! お前無事だったんだな!」

「わんわん!」

ぴょんぴょん跳ねて喜ぶオスカー。

(あれは、誰……?)