軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やった? やったっしょ!?

深層に入って最初に襲いかかってきたのは、巨大化した昆虫モンスター達だった。

真っ赤なカマキリやムカデっぽいウニョウニョしたやつ、人間よりも大きくなったクワガタやメガスズメバチなど、殺意も半端じゃない化け物揃いだ。

「きゃああ!?」

葵ちゃんは虫が苦手らしく、涙目になって近づいてきた虫を杖で叩いてる。不謹慎だけどかわいい。

「たぁっ!」

ヒーラーに迫る虫を火が出る剣で薙ぎ払っていく。その間、玲奈が爆発魔法で遠方のモンスターを蹴散らし、他に迫ってきた奴は氷堂さんが二本の刀で切り倒して行った。

彼はさっきまでレイピアだったけど、本気の戦いになると日本刀を使うようにしてるらしい。

「景虎君、今の感じで行こう。みんなから離れすぎないように」

「うっす!」

「ん? 彼らは、ダンジョンブレイカーズじゃないか?」

ふと、背後から猛烈な勢いでダッシュしてくる四人組がいて、俺たちが相手してるモンスターを倒すのを手伝ってくれた。

ダンジョン・スーツを白地に青で統一してて、チームとしてまとまってる感があるわ。

「氷堂さん、お久しぶりです!」

「カノンさんか。久しぶりだね。随分調子を上げていると聞いている」

なんかピンク髪をショートカットにしてる女の子が、氷堂さんに挨拶してる。

「まだ全然ですよ。あ、こちらの人があのカゲトラさんですか! 初めまして! 僕は雅カノンっていいます」

「あ、どうも。初めまして!」

「やっぱり強そう。でも僕たちは負けませんよ。じゃあお先に!」

そう言い残すと、四人は風のように去っていった。爽やかだなー。

「最近力をつけてきているチームでね。スロースターターだが、最終的な探索スピードが凄まじい。おそらく今トップを走っている袋小路は、彼女達に抜かれるだろう。タイムアタックで一位は固い」

「はえー! ガチスピード狂じゃん」

「私だったら絶対についていけないです。アスリートって感じです」

玲奈と葵ちゃんも驚いてる。たしかに、あんなに速く進む連中はなかなかいなそう。ってか、エンジンかかるまでは俺たちの後ろだったわけか。

いろんな攻略の仕方があるんだなぁと感心していると、AIミリアからのお知らせが入った。

『ヘルオオカブト【狂】が出現しました』

「ん? お、おおお……!」

俺は見るなりビックリしてしまった。さっき見た闇竜ほどじゃないけど、ゾウくらいの大きさのカブトムシがゆっくりこちらに近づいてきてる。

コメント欄でもけっこう騒ぎになってるけど、たしかかなり強かった気がする。

「角と前足に気をつけていこう。かなり危険なモンスターだ」

「は、はい!」

「オケー! ってかあたしからいくわ!」

言うなり玲奈が両手を前に突き出し、フレアをモンスターめがけて放った。あっという間に大爆発が生じ、俺は呆気に取られてそれを見てる。

「やった? やったっしょ!?」

『攻撃がきます』

「え、ひゃああ!?」

煙がなくなる前に、突然尖った何かが襲ってきた。それすぐに引っ込んだけど、俺たち目掛けて何度も何度も攻撃が来る。

「まさか。これほどスピードが上がっているのか」

「か、景虎さん! 下がって!」

氷堂さんと葵ちゃんも驚いてるようだ。一番前にいた俺は咄嗟に攻撃をかわしながら、後方に下がってみた。

:はええ!

:ヘルオオカブトの角アタックか

:こんなに速かったっけ?

:多分闇竜の影響やな

:エグいくらいスピード上がってる

:ってかフレア効いてなくね?

:通常のヘルオオカブトよりずっと強い

:これ普通のチームだったら太刀打ちできないぞ

:カゲトラもやばいんじゃ?

:当たったら即死かも

:このモンスターは避けたほうがいいと思うよ

:逃げよ!

:でかいのに角で突くのが速すぎる

:連続で突きが来るのか

:魔法効かなくなってるのがキツすぎる

俺も以前どっかで観たモンスターなんだけど、たしか魔法は効いていたんだよな。隣にいる氷堂さんが、額に汗を滲ませていた。

フレアで生じた煙が消え去った後、禍々しいカブトムシの全身が顕になる。瞳が真っ赤に光っていた。

「闇竜の力のせいか。魔法が効かないのはかなりまずい」

「ちょっとこれ、一旦逃げたほうが良くない?」

「多分、物理的な攻撃にも強そうです」

どうやらみんなには、打つ手なしって感じに見えてるようだ。でも俺には、どうもそうは思えなかった。

「なあミリア、どう戦うと効果あるかな?」

『景虎様でしたら、どのような戦い方でも問題ありません』

「そうか。じゃあ適当にやるわ」

「え、え!? ちょっと虎!?」

ビビってる玲奈の声がしたけど、今は気にしてられない。俺はとりあえず剣を鞘に納めて、慎重に前へ歩いて行った。

当然待ち構えているカブトは、その長く鋭利に見える角で、俺をひたすら突きにかかる。

でも、どうもみんなが言うほどスピードがあるようには見えなかった。何度か横に移動してかわした後、渾身の一発と思われるものを放ってくる。

それを最小限度で交わしつつ、角を両手に抱えるようにしてキャッチしてみた。

「おっ、いけた!」

巨大すぎるカブトはバタバタしつつ、角を引っ張ろうとするんだけど、しっかり抱えているので抜けないようだ。

ちらっと後ろを見ると、みんなとの距離も十分離れていることが分かった。試しにゆっくりと持ち上げようとしてみる。

すると、黒くドデカい体が浮かび上がったのが分かる。これならいける。

「うおりゃああ!」

俺は思いっきり後方にぶん投げ、そのまま地面に叩きつけた。背負い投げに似た動きで叩きつけられたカブトは、ひっくり返った姿勢のままピクピク……とした後、シューシューと煙が出てきて消滅した。

「いけたー。意外と軽かったわ! ……あれ、みんなどうした?」

氷堂さんのメガネが心なしかズレていて、玲奈は「はああ!?」と叫んでいた。葵ちゃんはプルプルしてる。

:……え……

:な、何が起きた?

:もしかして単純に投げ飛ばしたの? あの巨体を?

:はああああああああ!?

:前から思ってたけど、カゲさん人間じゃないっす

:信じがたいものを目にしたわ

:嘘だろおおおおお!

:あのマッハ突きを……掴んだの?

:無理無理無理無理無理

:ナチュラルに人間辞めてる

:他の探索者じゃ絶対できない動きしてる

:あのモンスター何トンあるんや……

:ミリアちゃんはこれを分かってたのか

:コーヒー吹いた

:絶対切り抜き流行るよこれ

:ひえええええ

:パワーありすぎだわ

:多分探索者の中で一番剛腕かもしれん

:明日あたりカゲトラの動画で溢れ返りそう

:幻覚見てるのかと思ったわ

:自分視点だから、まるで自分が投げたみたいにスカッとした!

:他のモンスター「うわぁ……(ドン引き)」

:あまりにぶっ飛んでて笑った

:カゲトラは自分がおかしいと思わないんだろうか

:強すぎるってマジで!

:アサシンタートルをスキルで一撃、ヘルオオカブトを一本背負で一撃

:もしかして、一人で深層突破できる?

:やばいやばいやばい

:モンスターより怖い

:怖すぎて漏れそう

みんなまたビックリしてるなぁ。俺も思いつきでやったけど、意外とできたから戸惑ってるわけで。

『おめでとうございます。同接が二百七十万を突破しました』

「ま、マジ? もうすぐ三百いっちゃうじゃん……」

ちょいちょい配信してること忘れるけど、こんなに沢山の人に観られてるのはやっぱ怖い!

『シンプルかつ効果的な戦い方でした。今後さらに力をつけて、上位の探索者を目指していきましょう』

「もっと怪力の奴とかいるのか? やべーな探索界隈」

ミリアの反応はやっぱり変わらない。俺だけ異常なのかと思ってたので、なんとなく安心してきた。

いろいろあったが、とにかくこの階は終わりだ。さらに下に行くと、もっと強いモンスターがいるはず。

俺はまだビックリしてる三人に声をかけ、ようやく落ち着いてもらった後、一緒に地下へと降りて行った。