軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もう……

同接数があまりにも増えすぎて、最近いろいろと感覚が麻痺してる気がする。

俺はちょっとばかり呆然としつつも、チームメンバー三人が無事か確かめに行った。

ちなみに亀から助けた探索者二人には、めちゃくちゃ感謝された。ちょっと照れる。

三人は無事だったし、他の探索者も死んだ人はいなかった。葵ちゃんはなんか目がキラキラしてて、玲奈は口をアングリさせてビックリしてたけど、俺はとりあえず笑って誤魔化す。

「どうやら危機は乗り切ったらしい。それにしても、尋常ではない耐性を誇るアサシンタートルを一撃とは……君はどうやら選ばれた人間のようだ」

「い、いや。そんな大したことないですよ」

『世界の探索者の中には、アサシンタートルを一撃で倒せる方は多く存在します』

最近ミリアが急に話に入ってくることが増えたなぁ。普通に人が一人増えてる感があるんだが。違和感がないあたり、最近のテクノロジーすごすぎ。

「僕は間違いなく天才だと思うがね。さて、どうやらみんな動き出したらしい。とはいえ、消耗が多い人たちは離脱するようだし、ライバルはかなり減ったな。このような展開になったのは初めてかもしれない」

探索者達がある程度無事なことを確認すると、氷堂さんは腕を組みながらこの先について考えていた。

「マジみんなヘロヘロじゃん。ってかあたし達チャンスかも? でもさー、あの竜がまた出ちゃったらと思うと、ガチビビるよね」

「イレギュラーとして登場するのは分かっていましたが、もう一度会った時は多分、もっと強くなっていますよね? 怖いです」

玲奈と葵ちゃんが不安を口にしてる。確かにそうだよな。あんな化け物がまた出てきたらって思うと、進むのは気が引ける。

「そうだね、闇竜は地下にいるほど力を増す。これは既に共有されている有力な情報だ。この先は想定よりも、」

言いかけたところで、氷堂さんは通路の奥を見て固まった。そういえば、なんか壁が妙な色になってるけど。

「確認したいことがある。ひとまず少しだけ、この先に行こう」

彼の指示のもと、俺たちは通路を進み階段を降りていった。その先はどうやら深層と呼ばれる場所らしく、さっきまでとは別格のモンスターが登場するらしい。

「闇竜はどうやら本気で、僕らを止めようとしているようだ」

ふと、壁や地面を丁寧に調べながら氷堂さんが呟いた。まさに現場検証って感じの動きをしてて、ここで事件でもあったのかっていう雰囲気。

『バーサーカーミストを確認。ダンジョンのモンスター達に大きな変化が生じています。闇竜は先ほど退避している時から、ミストを噴出していました』

「バーサーカーミストってなんだ?」

『闇竜ジャーマの特殊能力の一つです。モンスター達を狂わせ、本来よりも強く攻撃的な状態にします。レベルが約10上がったステータスになります』

「え、やべえじゃん!?」

そんな厄介な霧を、あのわけわからん闇竜は振り撒いているのか。

「え、じゃあこの先進むのマジヤバくね? どうする虎?」

「いや、俺は……まだ……」

「ここで撤退するのも選択肢の一つだ。十分な経験は得られている。ただ、ダンジョン奥に存在する秘宝を手に入れたわけでもなければ、ダンジョン組合に認められるような功績も残してはいないが」

氷堂さんは渋い顔だ。俺としても、ここで帰るのはなんか悔しい。兄貴を見返せているかは分からないし、チーム袋小路の連中はまだ進んでるってコメント欄に書いてあった。

『この先のモンスター達は、本来存在する深層モンスターより強化されています。危険なため、皆様はここでお帰りになられることをお勧めします。後は景虎様がソロで進行します』

「え……あ、俺は続行なのか。てっきりみんなで帰ろうっていう話かと思った!」

『景虎様は問題ありません』

AIミリアから謎の信頼を寄せられている俺。考えこむ氷堂さん。なぜかゴーグルと額当てをツンツンしだすギャル。そわそわしてる葵ちゃん。

「やっぱここまできて引いたら、アガんないってかさ。後悔すんじゃん? もうちょい行かね?」

玲奈はここで終わりにするのは良くない、と判断したみたいだ。行けるところまで突き進むのが玲奈のやり方であることは、昔から知っていた。

続いて意を決した葵ちゃんが、真剣な顔で前に出た。

「私も進みたいです。今まで探索している時、怖くなってきたら帰ることばかり考えていたんです。そんな自分が本当は嫌で。でも、今日前に進めたら変わる気がするんです。もう少しだけ、お付き合いしてもらえないでしょうか」

葵ちゃんは、怖がりな自分にコンプレックスがあるようだ。

「僕もここで引いてしまったら、いつまでも他のランカー達に追いつけない。それに、二人の気持ちに負けてしまうのも我慢できない。大人気ない性格でね」

この氷堂さんの発言は意外だった。どこか達観しているようなところがあったけど、心の中では負けず嫌いみたい。

「じゃあ決まりだな! みんな、行けるところまで潜ろうぜ!」

「オッケ! じゃあ虎、先頭よろしくー!」

そう言いながら玲奈は俺にくっつきながら拳を上げ、陽キャ特有の叫びを上げた。

『もう……』

「ん? なんかミリア喋んなかった?」

『! 喋っていません』

「嘘? なんか言ったっしょ今」

『いいえ』

「えー、なんか言ったし!」

ギャルの追求に、なんとなく慌てた声で答えるAI。確かに俺もちらっと声がしたと思う。

ってか最近たまに音声の調子が変になってるから、バグってるのかな。

さて、じゃあ進もうかっていうタイミングで、もう一つ不思議なことが。空からひらひらと何かが降ってきてる。

『ミッション報酬のマジックカードです。装備をおすすめします』

「お! またミッション達成してたのか。なんか、見たことない絵だな?」

こういうタイミングでミッション報酬がもらえるのは初めてかも。しかも受け取りとか選んでなかったけど。まあ、そういうこともあるのか。

とにかく俺たちはさらに進むことにした。コメント欄はみんな大盛り上がりで、背中を押してもらえる気持ちになる。

「みんなのコメントにも反応できてなくてごめん! 楽しんでもらえるよう張りきって行くから、よろしくな!」

ここから先は修羅場が待ってるんだろうけど、みんなと一緒ならきっと大丈夫。

俺は今までになく高揚した気分で、ダンジョンの奥へと進んでいった。