軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ねーミリア! ガチで月額三千円なの?

そこから先は、特に変わり映えしない進行だった。

俺は武器の温存を考え、しばらくは出てくるモンスターをひたすら殴っていた。

『骸骨剣士が五匹出現しました』

「オッケー!」

『巨大リオックが三匹います』

「うわ!? 気持ち悪!」

『地獄ムカデが一匹出、』

「これ殴って大丈夫か?」

『レッドジャイアントコウモリの群れが』

「飛んでるのはむずい!」

とにかく色々とバタバタしてるけど、今のところは俺の素手だけでどうにかなってる。

気がつけば中層にやってきて、あと一、二階ほど地下に降りれば下層らしい。

氷堂さんが徐々に汗ばんだ顔になってるのが、ちょっと気になる。

「か、景虎君。君はとんでもないアタッカーだな。僕が予想していたより、遥かに凶悪な力を持っている」

「え、いや。そんなことないですよ」

AIの知識によればそこまでじゃないっぽいので、お世辞として受け取っておこっと。

「景虎さん、手は痛くありませんか?」

「ああ、大丈夫」

こういう場所でも心配してくれる葵ちゃん、優しいなー。

「虎がついに来るところまで来ちゃったかぁ。もう一人でいいんじゃね? 状態じゃん」

「来るところまで? いやいや、まだ全然だって」

「違うね! きっとAIの嘘っしょ。騙してるんだって虎のこと」

「ミリアが?」

急にどうした? AIが騙したりするかな。

「そーそー! ねえ氷堂氏もそう思うっしょ?」

「……分からないが、どうも普通のAI音声とは違う気はする。詳しすぎるとは思う。なんのデータから引っ張ってきているのか、僕が探しても分からないものが多々あったよ」

「ね? 葵ちゃんどう思う?」

どんどん話を振っていく玲奈。すげーミリアのこと疑ってる。

「え? 私としては、とっても頼りになるAIさんだなって思いました。騙してるとは思えないんですけど……」

『この付近にブラッドモグラの反応あり。ご注意ください』

「ブラッドモグラって、あのクマみたいにでかいモンスターか。これは気をつけないとやばいかもな」

ブラッドモグラっていうのは、中層でもなかなかに厄介なモンスターで、地面から急に現れて襲いかかってくるタイプだ。

『トラップもありますのでお気をつけください』

「ねーミリア! ガチで月額三千円なの?」

杖を構えて周囲を警戒しつつ、玲奈が今度はAIに直接質問してた。これは視聴者も気になってたらしく、いくつかコメントがきてる。

:そういえばサブスク問題が解決されてなかった

:この際はっきりさせよ

:どこの店で買ったのか知りたいっす

:俺もミリアちゃんのサポートを受けたい

:私も!

:カゲ君ばっかりずるい

:ミリアちゃんの声癒される

:三千円で破格の高待遇ってほんと?

:ミリアちゃん、実際どうなの?

:いくら探索界隈が羽ぶり良いとはいえ、流石にありえないような

:ウチにもミリアちゃん紹介して!

:探索者みんなサブスク探してるけど、見つからないってよ?

:ミリアーーーーーー!

なんかサブスクというより、ミリアを気にしてるコメントが多くない?

あと三千円についても質問あったけど、これは俺でも答えられるわ。

「三千円で間違いないぞ。もう俺払ってるし」

「マジー? めっちゃサービスありまくりなのに? 追加料金とか請求してない?」

『玲奈さん、止まってください』

「え?」

『止まってください』

「きゃあ!?」

いきなり玲奈の姿が消えた! と思って駆け寄ってみると、ちょっとした穴に落ちてたっぽい。

「イタタタ」

『落とし穴です。迅速に脱出してください』

「ちょ、こんなとこに!?」

『ブラッドモグラがきます』

「え、ええー!? ちょい待てし!」

直後、俺たちの周囲が膨れ上がり、赤いモグラが姿を現した。普通のモグラとはサイズ感が違うし、何より強烈すぎる殺意がある。

そして発達した爪を、こちら目掛けて振り下ろしてきた!

「うわっと、あぶね!」

向かってきた爪を盾で弾くと、モンスターは慌てて地中に潜っていく。気づけば玲奈もしっかり落とし穴から脱出してた。

『合計六匹います』

「分かった!」

「二人は後方に下がってくれ。僕と景虎君でやる」

「は、はい!」

「りょ!」

開けたフロアの中に、ズブズブと嫌な音が響く。どうやら地中を掘り進みながら、こっちを襲う腹づもりらしい。

「一匹は倒した! 後五匹だ」

ちらっと後ろを見ると、氷堂さんがレイピアでモンスターの頭に一撃を喰らわせていた。

「より警戒してくるだろう。時間はかかるが、慎重に戦おう」

同士討ちになるかもだから、魔法メインの葵ちゃんと玲奈は下がらせていた。

『ここは景虎様が引き付け、一気に倒すのが効率的です』

「だよな。でもこの地面ウロウロされるのめんどいな。なんか手が……そうだ!」

ここでダッシュ。みんなから離れて、開けたフロアのど真ん中に立つ。

『武器を準備しますか?』

「なしでいい! おーい、こっちだこっち!」

モグラ達を挑発してみる。すると地面を蠢く音が、徐々に近づいてくるのが分かった。

「ちょ、虎ー! 大丈夫!?」

「景虎さん!」

玲奈と葵ちゃんの声が聞こえるが、俺は挑発をやめない。

『ブラッドモグラが一斉に来ます』

「オッケー! 来た!」

恐らく残りのモグラが一気に襲いかかってきたんだと思う。背後までは見えてないが、直感的に全員で潰しにきてるのが分かる。

「うおーーー」

要するに囲まれちゃってるわけだが、これは逆にチャンス。

俺は拳を握って、両腕を広げて回転した。そのままモンスター達をひたすらにぶっ飛ばし、二秒くらいで奴らはダンジョンの壁にぶち当たって倒れた。

「やっば便利だな! 回転斬りって!」

以前習得したスキル、回転斬りを素手でやってみたんだけど、思っていたより効果は抜群だった。

この前、剣じゃなくてデモリッション・スティックっていう棒でもやれたので試してみたんだ。ちゃんと倒せたので一安心だ。

『素晴らしい応用力です』

「やったぜ! みんな無事か!?」

AIミリアのちょっぴり嬉しそうな声が響く中、俺は三人のところに戻って行ったんだけど、みんな目を白黒させてる。

「景虎君、今のはプロレス技か何かかな?」

「一瞬でしたね……不思議な光景でした」

「ねー! プロレスっぽい。虎、ちょっと……ウケる」

なんで玲奈は笑ってんの? そんな変な動きだったかな。まあ、そうかもしれんが。

そういえばコメント欄も騒ぎまくってる。

:回転技か……!

:すげーーー! 一発じゃん!

:メタル系モンスターとやった時のやつ?

:中層でも普通に素手で無双ってヤバいやろ

:五匹一瞬で仕留めてなかった?

:カゲトラ強すぎ

:これ、武器使ったらどうなっちゃうの

:あああああ

:なんか画面が回ったと思ったら終わってた

:絶対格闘技チャンピオンになれる逸材

:プロレス技??

:強い強い強い強い強い

:これにはミリアもほっこり

:そもそも格闘タイプではなかったと思うんですが

:スキルの使い方合ってた?

:ミリアちゃんの声弾んでたな

:確実に言えるのは、中層モンスターも瞬殺続きってこと

:強い(確信)

:間違いなく上位ランカー狙える!

:くううううう

:今日どこまで潜るんやろ

:凄いよカゲトラさん!

:トラーーーー!

:マジで目が離せない!

「ああ、そうそう! 前に使ったスキルなんだ。じゃあ、そろそろ次に行くかー」

「君の力は一体……そうだね。次は下層に入っていく。ここからが面白いところだよ」

なんか氷堂さんにやたらと見られてる気がしたけど、あんま気にせず進むことにした。変わったことばっかしてる自覚はあるし。

それと同接もめっちゃ増えてそうだけど、なるべく見ないようにした。マジ人が増え過ぎてて怖い!