軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武器を温存したい場合には、素手での攻撃も有効です

「みんなおはよう! 今日はダンフェスに参加してて、ちょうど今から闇竜の魔窟に入っていくよ。応援よろしく!」

とりあえず挨拶はいつもどおりな感じにしよっと。ゴーグルの画面右上を見ると、今日も沢山の視聴者が挨拶を返してくれてる。

:いよいよキター!!

:おはよう

:おはっす!

:お! お!? 葵ちゃんと氷堂氏がいる

:おはです!

:あれ? ギャルっぽい娘いない?

:とうとうダンフェスかー楽しみ!

:美人のギャルがおる!?!?

:え、だれ?

:ワクワクしてきたぁあああ

:今日トラブル多いみたいだけど、無事始まって良かった

:さあ、カゲはどこまで潜れるんかな

:カゲっち、ガンバ!

:おはよーーーーーー

:お!? 新メンバー?

:葵ちゃんの後ろ姿たまらん

:氷堂さーーーん

:初っ端から情報量多くて草

:新しいチーメン? スタッフの人?

:がんばれ!

:今日元気なカゲくん

:とうとう始まったか、ダンフェス!

最近配信のたびに思うけど、コメントが半端ないのが凄すぎてビビる。

この間、他のみんなもそれぞれ配信の挨拶をしており、小さな配信用ドローンが飛び交っていた。

それとどうやらみんなは、玲奈のことが気になってるらしい。ちょっとだけ紹介しておくか。

「今日なんだけど、メンバーが足りなくなっちゃってさ。友達に助けてもらうことにしたんだ。玲奈って言うんだ」

「よろー!」

ぐいっとゴーグル前に顔を出してピースする玲奈。ちょいビックリしたけど、この陽キャはよくやることではある。

『ダンフェスの開始時間です』

「では打ち合わせどおりに進んでいこう。景虎君と僕が先頭を行く。葵さんと玲奈さんは後方から支援を頼む」

「うっす。じゃあ行くぜ」

「はい!」

「オッケー!」

ミリアの連絡が入った後、氷堂さんにリードしてもらいつつ、俺たちはいよいよダンジョンへと足を踏み入れた。

ダンフェスの会場となるだけあり、入り口一つとっても、他のダンジョンよりずっと広いみたい。

ちなみに他の探索者たちは、俺たちと同じくゆっくり進む人もいれば、いきなりダッシュしていく人達もいる。

「あれはRTA部門の評価を狙っているんだろう。いかにして早く規定の階層まで到達できるか、それを狙って達成すれば早めに撤退するつもりだと思う」

俺はビックリしたけど、氷堂さんはわりと見慣れていたらしい。ダンフェスではいろんな要素でランキングを取っているみたいだけど、チームによって戦略は全然違うんだなぁ。

と言うわけで進んでいくなか、やっぱりお馴染みのモンスターたちが姿を見せてきた。

スライム、ゴブリン、キラービー、暴れ犬というよく見るメンツだ。

「ここはまだ序盤だから、できる限り力を温存しながら進んでいこう。魔法は使わず、武器だけで倒そう」

「うっす!」

氷堂さんはそういい、腰に下げていた武器の一つであるレイピアを抜いた。いくつも武器を用意しているみたいだけど、不格好にならないあたり流石だと思う。

「じゃあ俺は、火の剣だっけ? あれか槍か、その辺でいこうかな」

『武器を温存したい場合には、素手での攻撃も有効です』

「え、素手?」

素手かー。本当に大丈夫かな?

『今の景虎様は、体の耐久力が大幅に向上しています。そのため、素手でも十分に攻略が可能です』

「マジかー。じゃあ行くか」

「え、ちょっと虎ー?」

「景虎さん!?」

俺はまず先手を取るべく走り出した。モンスター達もこっちに気づいていたみたいだけど、構えるのが遅かったみたい。

「うおりゃあああ!」

一匹ずつ殴ってみたところ、なんか想像していたのと全然違うことが起きた!

「ギャギャーーーーー!?」

弓を構えようとしたゴブリンがまずぶっ飛び、続いて近くにいたゴブリン二匹、スライム三匹、キラービー二匹が、殴られるたびに想定よりずっと遠くに吹き飛んでく。

「なんかこいつら、軽くね?」

サッカーでボールを蹴っているみたいに、モンスターたちはめちゃくちゃ飛ぶので、マジで中身スカスカ疑惑がある。

「あ、終わりました」

とりあえず最初のモンスター集団がいなくなったので、振り返ってみると、みんな唖然とした顔になってた。

しかもコメント欄も、やたらとオーバーな声で溢れてる。

:倍速すぎて何が何だか分からんぞ!?

:は、はえーーーー!

:モンスターが次々飛んでいったな

:ロケットみたいに飛ぶやん

:カゲトラがパワーありすぎなのと、何より速すぎ!

:武器すら使わんのかーい!

:瞬殺すぎる……

:どうやったらこんな動きできるんだ?

:物理を無視しているかのような軽さ

:モンスター達が反応できてない?

:ゴブリン「ん? なんか来ーー……」

:正面から不意打ちしたような感じ?

:すげえ、普通もうちょっと交戦するでしょ

:えええ?

:強いとは聞いてたけど、まさかこれほどなんて

:今何レベルだっけ?

:相当強くなってない?

:一ヶ月前はゴブリン数匹にわりと手こずってたような

:化け物に遭遇したモンスター達

:どうなってんだ今の!?

:ああああ!

:これは期待できるぞ

:えっぐ!

すぐに氷堂さんが隣に来たけど、彼もちょっと青い顔になってる。

「驚いたな。まさかこれほどのスピードで、しかも素手とは」

葵ちゃんと玲奈も遅れてやってきた。

「私、景虎さんの動きが見えませんでした。なんていうか、普通の動きが魔法そのものって感じです」

「ガチエグいっしょ! マジ鍛えすぎじゃん!?」

「俺、そんなにエグいかー?」

ここまで言われると、確かにそんな気がしてくる。

『最も初級のモンスターのため、こういった差が出ることはよくあります。また、物理主体の探索者であれば、打撃のスピードやパワーの違いにより、実際よりも速く映る場合があります』

「へえ、そうなんだ。確かにレベル差あるもんな。じゃあどんどん行きますか」

「あ……ああ」

氷堂さんが戸惑ってるみたいだし、みんなもなんか「ええ?」って感じだが、世界中の探索者データがあるミリアが言うんだから、きっとそうなんだろう。

「そ……それにしても……やべえ」

ってか、同接が開始して数分で百五十万超えてるんだが。そっちのほうが気になるというか怖い。

ちょっぴり緊張が増しつつ、俺は氷堂さんと先頭を歩き続け、地下への階段を降りていった。