軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

また来たら追い返してやるよ

ダンフェスは毎年開催されているが、年々しっかりしたイベント感が増してるらしい。

まずは開会式が始まり、ダンジョン組合の会長挨拶や諸々の祝いの言葉、細心の注意を払い犠牲がないように挑んでほしいと言った注意事項が語られた。

俺はといえば、なんだか始まるまで退屈だなーなんて思っていたんだけど、「挑戦者宣誓」という言葉と共に、アイが登壇してきたので眠気がぶっ飛んだ。

「宣誓! 私達探索者一同は、安全かつ効果的、細心の注意を持って正々堂々と挑戦し、モンスターと戦い抜くことを誓います」

ピンクと黒のツートンカラー、今もやってるのか。アイが降壇した先には道宗やノエル有栖川達がいる。

そういえばだけど、この宣誓っていうのはなるべく以前やったことがない人に回したいものらしい。

実績からすれば最有力の氷堂さん、次元が違う人気がある葵ちゃんが選ばれるはずだが、二人は以前宣誓したことがあるんだとか。

「それでは、これにて開会式を終了します。探索者の皆さんは、それぞれ指定された入口に集まっていただくようお願いします」

実は闇竜の魔窟は、入り口が一つだけじゃなくていくつも存在する。組合から渡された地図にアルファベットがつけられており、俺たちは入り口Aから入ることになっていた。

開会式が終わった後、氷堂さんはダンフェス委員会のメンバーと会話した後、こちらにやってきて微笑を浮かべた。

「玲奈さんの参加申請が通ったよ。状況的に致し方ないという判断をもらえた」

チームメンバーが抜けちゃったことと、代わりに玲奈をメンバーにしたいとダンジョン組合に申請していたんだけど、どうやら通ったらしい。

「っしゃ! じゃあ虎、暴れよーぜ」

「程々にしろよ。お前加減知らねえんだから」

『葵さんが一般人に絡まれています』

「ん?」

ミリアが教えてくれた先を見ると、ちょっと離れたところで葵ちゃんが男に話しかけられて困っていた。

やだなー、まさかのダンフェス開始前にナンパとか。

「あの時は本当にごめん。でも俺、どうかしてただけなんだ。今度こそちゃんと守るから、今からでもこっちに来てくれない?」

「……ごめんなさい」

「俺を信じて。葵はあのチームにいちゃダメだ。今こそチーム袋小路に——」

「ちょっといいっすか。もうイベント始まるんで」

なんか熱く語ってるみたいだけど、チーム袋小路の奴なのか。

でもこのタイミングで話しかけられるのは迷惑だし、なんか引き抜きしようとしてるっぽいし。すぐに引き離したほうが良さそうだ。

「ああ? お前……カゲトラか! 引っ込んでろよ、関係ないだろうが!」

「同じチームだから関係あるだろ。ってかお前誰?」

「う……こ、この俺を、ノエル有栖川を知らないだと! クソにわかが!」

ノエル有栖川? ああ、名前でうっすら思い出した。でも詳しくは知らない。俺と有栖川が睨み合ってると、間に氷堂さんが入ってきた。

「君、うちのチームメンバーを引き抜こうとしているのか。これ以上続けるなら、迷惑行為として通報するぞ。このようなくだらないことで、脱落などしたくはないだろう?」

「ち、ちくしょう! 覚えていろよ、カゲトラ!」

「え、なんで俺?」

なんか知らないうちに逆恨みされてるんだが。こういうの一番迷惑だからやめてほしい。

ちょっと遠くから見ていた玲奈は、なんだか楽しそう。

「ガチ喧嘩売られてるじゃん。終わったなアイツー、死んだわ」

「誰も殺さねーよ」

「キレた虎ってエグいじゃん。あたしの知り合いはガチビビりしてたぞ」

「そうだっけ?」

大学時代の頃、そういえば玲奈に絡んでた奴がいて、喧嘩になったんだった。最初はけっこう大変だったけど、なんとか勝てたことを覚えてる。

でも、警察が来て慌てちゃって、玲奈と一緒に逃げちゃった。あれ今考えたら必要なかったわ。

とか今更なことを思い出しつつ歩いていたら、闇竜の魔窟へと辿り着いていた。

あと五分くらいで探索を一斉にスタートさせる決まりになっている。

『配信の準備を始めます』

「サンキュ! よーし……葵ちゃん、大丈夫?」

「あ、はい! ……大丈夫です」

さっきのことを引きずっているのか、葵ちゃんがなんとなく元気がない。ストーカーみたいな感じだし、やっぱ怖いよなぁ。

「さっきの奴なら大丈夫。また来たら追い返してやるよ。葵ちゃんには近づかせないから、安心してくれ」

「……カゲトラさん……ありがとうございます」

なんかめっちゃ感動された?

葵ちゃんの瞳がウルウルしてて戸惑っちゃう。

でも普通のことを言っただけだと思う。すると玲奈がツンツンしてきた。

「またそうやって首突っ込むの? 正義感ありすぎー」

「普通だろ。困ってる人がいるんだから」

「ま、そこが虎の良いところだけどね。アホなとこも多いけど」

「アホは余計だ」

「あー心配。虎が他で女作らないか心配!」

「なんでお前がそんなこと心配するんだよ」

『配信開始一分前です。玲奈さん、お静かに』

「AIに名指しで注意された!?」

おっと。そろそろ視聴者さんに挨拶の準備しなくちゃ。

氷堂さんと玲奈、葵ちゃんもそれぞれ配信準備が整ったみたい。

ダンフェスではあらゆる映像が探索の証拠になるから、同じチームであっても別々に配信するのが普通なのだとか。

『配信開始五秒前……三……二……』

AIミリアのカウントは正確であり、ダンフェスのスタート時間ギリ手前で配信スタートするようにしてくれた。

配信画面が起動し、チャット欄が映し出される。

まずは元気よく、今日も応援に来てくれた視聴者さんに挨拶をしなくちゃ!