軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一緒にダンフェス頑張りましょう!

俺が人間じゃないだって?

いきなりとんでもないことを言われたので、次に何を言われるのかと怖くなってくる。

「僕にはその人の力が、まるで影絵のように見えるんだよ。大抵の人は、それなりの姿で映る。しかし君の姿ははっきりと分からない。まるで無数の魔物達がひしめているような、不気味な姿に映っているんだ」

「へ……へえー。そうなんすね」

うーん。そんなこと言われても、いまいちピンと来ないんだけど。

「僕としては、そんな強さと可能性に溢れた存在は是非とも仲間にしたい。彼女が推薦していたということもあるけれど」

ちらっと、氷堂さんは葵ちゃんに視線を向ける。彼女はちょっと照れているようだった。

「君は恐らく、レベルも相当に上がっているんじゃないかな。戦い方を見る限り物理攻撃が得意なようだが、魔力も相当にある気がする」

「ある程度は高いほうだと思ってますよ。でも、氷堂さん達トップランカーには、全然及ばないと思います。もうちょいで100くらいだし」

「レベルについては、僕達と……ん?」

氷堂さんのコーヒーを飲もうとした手が止まる。葵ちゃんと他の探索者二人も、ちょっと固まっているようだった。

「え? 景虎さんって、もうレベル100近くまであるんですか?」

「あ、うん! でもトップランカーやベテランの人は、もっとあるらしいじゃん?」

「景虎君。君はたしか、本格的に探索を始めたのは約一ヶ月前だったはず。それは間違いないね?」

「はい。それまではレベル4とか、そのくらいでした」

すると、氷堂さんとみんながざわざわ、という反応になった。

「え、ええ! それってすっごく早いレベルアップですよ! 私、そんなに早くレベルが上がってる人見たことないです!」

葵ちゃんがめっちゃビビってる。続いてチームリーダーが急に立ち上がった。

「君は以前配信で探索者カードを見せたことがあったようだが、つまりその後に40レベル以上一気に上げたということになる。これは凄まじいことだよ。もしかしたら君は、もう国内探索者ではトップクラスに位置しているかもしれない」

「お、俺がですか!?」

青い顔ですげー興奮してる氷堂さんの話は、正直信じられないというか……。

「今日、探索者カードを更新してみるといい。恐らく騒ぎになるはずだ。とにかく景虎君、僕は君がチームに加わってくれることを楽しみにしている。結論が出たら、ここに連絡をくれないか」

そう言いつつ、懐から取り出した名刺を渡してきたので、俺は呆然としつつ受け取った。

氷堂さんとの話はその後も軽く続いて、終わった頃にはけっこういい時間になっていた。

なんで俺なんかにそんなに……と思えるくらいのリアクションだったけど、やっぱ知識や実力が相当ある人なんだっていうのが伝わってきて、かなり勉強になる時間だった。

その後は言われたとおり、探索者カードの更新をしようとしたんだけど、なぜかローディングが長くて今日は終わりそうにないらしい。

「たまにあるんですよ。カード自体に故障があるのかもしれません。すみませんがお預かりして、後日ご連絡でもよろしいでしょうか。カードは責任を持って管理いたします」

「故障かー。じゃあお願いします。今日は帰るか」

帰り道、途中の駅まで葵ちゃんと一緒になった。わりかし空いている電車の中で座りながら、今日のことを喋っている。

なんだか葵ちゃんも、けっこう興奮してる気がする。

「やっぱり氷堂さんも、景虎さんを高く評価してましたね!」

「俺、そんなにすげーのかな?」

「すっごいと思いますよ。もし良かったら、一緒にダンフェス頑張りましょう!」

「あ、うん。ありがとう」

ここまで押してくれるなんて、マジでビックリ。俺なんかが入っていいのかな、なんて悩みつつあったけど、歓迎してくれるならお願いしようかなぁ。

その後も少しの間雑談してたんだけど、途中から疲れていたのか、葵ちゃんはすやすや眠ってしまった。

「ん……」

(や、やっべ)

小さくて可愛い頭が肩に寄りかかってきて、俺はなんとも言えずドキドキしてしまう。アイドル感ぱない。

少しして、葵ちゃんの降りる駅が見えてきた。俺が声をかけると、

「ふぁ……! あ、す、すみません! 寄りかかってました!?」

「あ、全然大丈夫! 今日はいろいろとありがとう。お疲れ!」

「はい! こちらこそありがとうございます。お疲れ様でした!」

とやたら焦って顔を赤くしながら降りていった。葵ちゃんはきっと、アイドルをしても成功間違いなしだろうな。

青春っていいなぁ、なんてことを思いつつ、俺は家に帰ったわけだけど、充電していたゴーグルはすでにピカピカ光ってる。

「ただいまー」

『おかえりなさいませ。完了した自動周回の報酬が、未受け取りとなっております』

あ、そうだった。自動周回の報酬受け取ってなかったわ。ってかせっかくだからそれは置いといて、今日あったことをミリアに話しておくか。

しばらく話を聞いていたAIは、ひととおり聞き終えると、氷堂さんのことについてこう説明を始めた。

『人間ではないと語っていたのですね。それは彼の勧誘テクニックの一つでしょう』

「え? どういうこと?」

『氷堂氏は自身が探索者として活動する傍ら、指導者としても高い評価を得ている人物です。ダンジョン組合が彼を評価する点の一つに、探索者を育てることが非常に上手であるという点があります。その彼のテクニックの一つ……それはずばり、誉め殺しです』

「ほ、褒め殺し?」

意外な単語が出てきたぞ。ちなみに俺は今までの人生で、誉め殺しをされた経験なんてなかったと思う。

『とにかく見込みのある人に対し、褒めて褒めて……ひたすらに褒め続けるのが彼の育成方針です。それは高い効果を発揮しており、彼のもとで優秀な力を開花させた探索者はすでに十名以上存在しています。葵さんもその一人です』

「そっか! 葵ちゃんを教えてるのも、氷堂さんだったっけ」

周りも成長させられるってすげーな。俺なんか自分のことだけで精一杯なのに。

『ですので、景虎様のことについても、オーバーな表現を使用し勧誘を試みているのでしょう』

「そっかー。じゃあ別に、俺は普通なのか。まあでも、ダンフェスはあの人のチームに入ってみようかなって思うんだ」

『!』

「氷堂さん、マジで探索知識すげーんだよ。かなり勉強になるし!」

『…………』

「あれ? ミリア、どうした?」

またフリーズした? 最近多いな、故障してないか心配。

『失礼しました。一時的な通信の途絶がありました。チームでの攻略も良いですが、次のダンジョンフェスティバルについては、お一人でも充分に攻略は可能です。ソロで攻略されたほうが、ダンフェスにおいては高いアピールができます』

「え? でもダンフェスの舞台である闇竜の魔窟って、超ヤバいダンジョンらしいよ?」

『問題ありません。成長の洞窟で手に入れた素材を利用し、武具を錬成すれば安定感のある攻略が可能です。錬成を開始しますか?』

「マジか? じゃあちょっと、試してみようかな」

そんな凄い素材拾ってたっけ?

俺はとりあえず、ミリアがオススメする錬成をやってみることにした。