作品タイトル不明
すでに僕は、君をチームに招き入れたいと思っている
それから一日が過ぎた。俺は電車に乗ってギルド【リベリオン】へ向かってる。
もう夕方くらいなので、電車はかなり空いていた。でも気分はけっこう憂鬱というか……猛烈に緊張してる。
なにしろ国内トップランカーの一人に会えるんだから、こうなるのも無理はない。
ライバー関係の仕事でも、実際にダンジョンに潜っていた日々の中でも、マジでトップクラスっていう探索者に会える機会は滅多にないんだ。
ちなみにトップランカーっていうのは、ダンジョン組合っていうのが決めてる様々な探索ランキング上位にいる人達で、こればっかりは人気じゃなくて確実な結果に基づいて決まる。
だから、正直目立ってるだけの俺なんか、到底叶わない次元の人達なんだよなぁ。
嫌われちゃったらどうしよう、なんて不安が過りつつ、電車を降りた俺はとうとうリベリオンに辿り着いた。
「あ! 景虎さん! お久しぶりです!」
「久しぶりー。今日は誘ってくれてありがとう」
とりあえず交流スペースに行ってみると、葵ちゃんが待っててくれた。
「私のほうこそ、お礼が言いたいです。実は、景虎さんとできればパーティを組んでみたいって、ずっと思ってました」
「マジかー」
「はい! じゃあ早速氷堂さんを呼んできますねっ」
小走りで奥の部屋へと入っていく葵ちゃんをみて、俺は小さく深呼吸する。
そういえば今日はゴーグル持ってきてないんだけど、失敗だったかな。ミリアは俺が緊張してたらアドバイスしてくれそう。
いやいや、最近AIに頼りすぎなんだよなぁ。これは良くない。
手に人って字を書いて飲み込んでみるか、とか考えていたら、葵ちゃんと氷堂っていう人がやってきた。
「君が景虎君かい。僕は氷堂トウヤ。君の噂はかねがね聞いているよ」
「あ、どうも。初めまして」
なんてこった。想像の斜め上のオーラが出まくってる。この人がトップランカーの一人、氷堂さんか。
整った黒髪と長身。メガネがまた似合うというか、スーツが凄えキマってんなぁ。
「あの部屋に、僕とよくチームを組んでいる人達がいるんだ。良かったらそちらで——」
「分かりました。……あれ? どうしたんすか」
「いや……なんでもない。では行こう」
一瞬、執事みたいなイケメンフェイスが戸惑いまくってたけど、なんか気になることでもあったんだろうか。
◇
リベリオンの中には面談室がいくつかあって、そこでチーム同士の交流や会議が行われたりしてる。
俺と氷堂さんと葵ちゃんが入った部屋には、他に二人のメンバーがいた。どっちも大人の男女で、見るからに強そうな雰囲気が出てる。
葵ちゃんに紹介されて挨拶を終えると、とりあえず自己紹介をした。その後すぐに面談がスタートした。最初から進行がサクサクだ。
「景虎君。僕は君の不思議な配信もさることながら、その実力も大いに気になっていたんだ。スタンダードなダンジョンに潜った経験は、どのくらいあるのかな?」
「ああ、まあ。何回かありますよ。だいたい荷物持ちですけど」
「荷物持ち? 君がか」
「はい。チーム袋小路っていう会社で働いてて、その時によく」
「「「!!」」」
この時、葵ちゃんと二人の探索者仲間がハッとした顔になる。
「あれ? なんか俺まずいこと言った?」
「い、いえ! 違うんです。最近あそこの会社の人達、凄いことになってて。みんな気になってたんです」
「凄いこと?」
よく分からず困惑していると、「実はね」と氷堂さんが説明してくれた。
「彼らは最近、かなり強引な手段でギルドから探索者を引き抜いているんだ。しかも事前に伝えていた条件とはほど遠い、劣悪な報酬で。そして気に入らなければさっさと捨ててしまうんだ。ダンジョン界隈はまだ法整備が甘いから、ああいう露骨な真似をする人間がいつかは出てくると思ってはいたが……」
メガネの奥に苛立ちが見える。まあ、あの社長なら普通にやってそう。
「私も街中で、強引に誘われて困っていたんです」
どうやら葵ちゃんも、引き抜きをされそうになったらしい。
「とにかく、君も苦労をしたらしいな。僕らは彼らと、今度のダンフェスでは徹底的に争うつもりでいるんだよ。流石に我慢ならなくてね。一つ気がかりなんだが、もし君が参加するとなった時、彼らと競うことができるかい?」
チーム袋小路は、相当嫌われちゃったみたいだ。以前に所属していた俺が全力で戦えるかを心配するのは、当然の懸念だと言える。
「できますよ。ってか絶対に勝ちたいです」
「景虎さん……!」
あれ? 葵ちゃんがなんかキラキラしてる。向かい側にいる氷堂さんも、心なしかメガネの奥がキラっと光ったような。
「良い返事だね。動機は充分と見える。さて、あとは君の実力がいかほどか……という点が気になるのだが。すでに僕は、君をどうしてもチームに招き入れたいと思っている。正直に言えば、是非とも欲しい」
「え? なんでですか?」
いきなりグイグイ来られると、逆に不安になっちゃう俺。だって今まで、そんな歓迎されたことないし。
「僕には元々霊感に似た、特別な力があってね。ある程度の実力を感じ取ることができるんだ。どういうわけかこの瞳は、その人の強さを視覚化できる」
「視覚化?」
パーティメンバーの二人も、うんうんと頷いてる。みんな知ってる事実って感じか。すると、葵ちゃんも小さく首肯した。
「私も最初、ビックリしたんです。覚えている魔法とか、得意なこととか、なんでもすぐに当てちゃうんですよ。氷堂さんは探索者カードを見なくても、力が分かるんです」
霊能者か何かかな。やべー怖くなってきた。ずっとこっち見てるし。俺ってばどんな風に見られてんの?
「当初こそ僕は、君の実力を疑っていた。人気ある配信者が、優秀な探索者とは限らないからね。チーム袋小路のような偽者もいる。しかし景虎君、君は違った」
そしてメガネを外した。端正な顔に汗が浮かんでる。なんだなんだ、どうした?
「はっきり言って、君は人間じゃない」