軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦闘に勝利しました

次の日、俺は早朝から電車に揺られて、ある地方のダンジョンへと向かっていた。

AIが言うには最も基本的なレベルのダンジョンらしく、初心者にはちょうど良いとか。

ここに来るまで、やっぱソロじゃなくて、誰か誘った方がいいんじゃね? と考えたものだけど、平日にダンジョン探索に気楽に同行してくれる友人なんて俺にはいない。

っていうか、そんな友人自体レア過ぎる気もするが。ちなみに仲間を集めるために便利なものとして、以前話した探索者ギルドっていうのがある。

簡単にいえば、ゲームでいう仲間を作れる酒場みたいなもん。でも付き合ってもらうには、当然ながらお金を条件にしている人がほとんどなわけで。

懐が寂しくなりつつある俺は、結局のところソロしかないと思った。あと、やっぱ知らない人に声かけまくるのも、陰キャな自分には厳しいっす。

前途多難というか闇しかない気がしたが、とりあえず移動自体は順調だった。電車から降りると、そこは閑静な住宅街。どうやらここからしばらく歩いた山の中に、ダンジョンができているらしい。

『この先、前方五百メートルにT字路がありますので、そちらを右折してください』

「ほーい。場所もナビしてくれるなんて、便利だな」

普段は土地勘がない場所は、スマホを見ながら歩いて行くんだけど、ゴーグルがナビしてくれるので楽ちんだ。

そういえば、今日のログインボーナスは皮で作られた鎧だった。軽いのでもう着てるんだけど、けっこういい感じな気がする。

ちなみに召喚カードは、Rレア:ヒールバードとか呼ばれる鳥モンスターだった。これは一回だけ回復魔法を使ってくれるカードらしい。

しばらく歩くこと二十分ほど。気がつけば山の中にある、小さな洞穴の前で立っていた。ここが件のダンジョンのようだ。

『これよりダンジョンになります。実況配信をスタートしますか?』

「あれ? そっか。配信もしてくれるんだっけ。じゃあ頼むわ」

いろいろとあってすっかり忘れていたが、このゴーグルはそもそも配信機材であり、動画配信を主目的としたもの。

ゴーグルを見ると、準備中だったのがスタートの画面になり、配信が始まっていることが分かる。画面右上には視聴者数や同接数、視聴者のコメント欄が見えるようになっていた。

しかし、当然ながらついこの前Utubeアカウントを作った俺は、登録者は一人もいなければ、今のところ同接もいない。

「さて、とりあえず行ってみるか」

まあしょうがない。それに俺は、別に探索配信で食っていこうというわけじゃないんだし。

気を取り直して、いよいよダンジョンに入ってみた。

思いの外簡単な作りで、本当にただの洞窟を進んでいる感覚だ。しかもしばらく一本道っぽいので、何も考える必要なさそう。

ただ、ダンジョンお決まりのモンスターはやっぱり早くから登場する。

『前方にスライムが二匹出現しました』

「おお!? い、いる?」

ただ、そもそも薄暗いので、モンスターがいるのかどうか分かり難い。すると、ゴーグルから淡いライトが発せられた。

『モンスターに検知されにくい明度で、ライトを使用します』

「サンキュー! 助かる」

いたいた。青くて粘ついたあいつらが。某国民的RPGでは可愛さの権化みたいなルックスになっていたスライムだが、ここにいたのはめっちゃ気味の悪いデカゼリー。

なんか二匹ともウニョウニョしながら近づいてきたよ。マジ勘弁と思いつつ、俺は背中から抜いた鋼の剣を構え、近くにいた一匹に振り下ろした。

「だぁっ!」

すると、ゼリーの体が真っ二つに。シュウシュウという音を立てながら消えていき、その後には変な草が残っていた。これは何かの素材になりそうなやつだ。

『スライムの攻撃がきます』

「ん? うおっ!?」

それはいきなりだった。青いゼリーが丸くなったかと思うと、なんかの球みたいに飛んできた。

俺はほんの僅かにガードしたけれど、そのまま吹っ飛ばされてしまう。

「いてて。思っていたより硬いな」

あんな柔らかゼリーな見た目なのに、ギャップを感じる一撃だ。続けてもう一回体当たりしてきたので、慌てつつもかわす。

「せい!」

気合いだけは一丁前に、今度は横なぎに剣を振る。ダンジョンの壁に当たって跳ね返り中のスライムに当たり、奴もまた真っ二つになった。

そしてまた消え去っていく。今度は地面に青い瓶が落ちていた。

『戦闘に勝利しました。おめでとうございます』

「ありがとう。でもスライムって、いざ戦ってみると意外と強いんだな」

先輩探索者はサクサクっと倒していたけど、スライム体当たりってけっこうヤバイじゃん。多分体に痣ができていると思う。

『戦利品は、ヒール草と解毒薬です』

「ありがたい。貰っておこうっと」

とりあえず二つとも懐に入れて、先に進むことにした。

「またいつ出てくるか分からないから、気をつけないと。お? 同接1名! ど、どうもこんにちは! ここはカゲチャンネルです。えーと、今日初めて配信を、」

『前方からモンスターの反応あり。曲がり角にご注意を』

「ん? おわぁ!?」

初の視聴者登場に勝手に浮き足だった俺は、突然襲いかかってきた魔物にビビり散らかした。恥ずかしー。

今度の相手は、巨大バッタである。どのくらい巨大かというと、多分二メートルくらいある。

そんな奴がいきなり跳躍して、噛みつこうとしてきたからさあ大変。俺は奴の歯を剣で受け止めたが、重みと衝撃で倒されそうになる。

「ぐ、ぬぬぬ」

『カードを使用しますか』

「カード? そうか!」

俺はギリギリと押されながらも、剣を片手持ちにして懐からカードを取り出し、配信でよく観た感じで投げてみた。

するとカードが輝き出し、ゴブリンの姿になってジャンプした。そのまま上空からバッタめがけて、棍棒を全力で叩きつける。

先ほどまで猛烈な勢いだった昆虫モンスターが、悶絶して後ずさった。ここを逃さないとばかりに、俺は一気に距離を詰めて剣を振り下ろした。

ちょっと感触が硬かったけど、どうにか斜めに切り裂くことに成功。バッタはそのまま動かなくなり、どうにか勝利した。

「ありがとよ、ゴブリン。あれ?」

ゴブリンはいつの間にか消えており、ひらひらとカードが俺の手元に戻ってきている。あの一撃は強烈だったけど、多分それをしただけで召喚が終わるっぽい。

召喚カードを使っているうちには、どんなモンスターでも所持者の役に立ってくれるんだけど、その活動時間はほとんどが短いと聞いたことがある。

でも、一人で戦ってたらヤバかったなぁ。やっぱ大事だわ召喚カード。

そんなことを考えていたら、ゴーグルから黄色い光が発せられた。

『戦闘に勝利。レベルアップしました』