軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本日のログインボーナスが届いています

次の日、俺は新しい仕事を探すべく、職安だったり求職サイトに登録したり、とにかくいろいろやった。

だが、ちょうど春のこの時期、求人を出している企業は少ない。っていうか、あるにはあるんだけど、ブラック臭がやべえ。

というのも、求人を出しているのは、ネットの評判でよく登場する悪い噂ばかりの企業だらけだったんだ。

「うわー……俺、入っても続かないんじゃね」

自宅のノートパソコンを睨みながら、小さくため息を漏らしてしまう。ネットの噂って意外と当たってるからなー、ついこの前退職代行使って辞めた友達も言ってたし。

俺なんか退職代行とか使わなくても、社長直々にクビだからな。しかも自己都合扱いにされてるし。

「ああ! もうー、早くしないと家賃払えなくなっちまう」

このままじゃ滞納しちゃう。家賃払えなくなるのはマジキツイんだよなー、と思い寝っ転がって頭をくしゃくしゃしていたら、変な電子音がした。

「ん?」

ふと気になって顔を上げると、本棚に置きっぱなしにしていたゴーグルが光ってる。

『本日のログインボーナスが届いています』

「ログインボーナス?」

そういえば朝から変な光は発してたけど、忙しいから放置してたわ。

っていうか、今どきの配信機器はログインボーナスなんてものを届けるのか。

……ん?

「そういえば、昨日はあんま気にしてなかったけど、ログインボーナスって何が届くの?」

ログボってよくスマホゲーとかで聞くけど、あれはゲーム内の話であって、このゴーグルにはゲームは付いていない。

あれかな、お得な割引クーポンとか?

『1日目のログインボーナスはこちらです』

そう一言発した後、部屋の天井付近に金色の光が。そして何かがテーブルの上に落ちてきた。

「……え……」

俺は愕然とした。どう見ても落ちてきたのは剣である。銀色のグリップと黒い鞘。よくダンジョン探索者が使っているような物と同じ。

「……何これ?」

『鋼の剣です』

「なんで落ちてきたんだ?」

『ログインボーナスです』

「え、えええ」

いや、ログインボーナスです、とか言われても。もうちょっと説明してくれよ。こんなんただの怪奇現象やん。

一応手にしてみると、それは重量感バッチリ。鞘から剣を抜いてみると、白く光る刃が現れる。

うん、これきっと本物だわ。

「あの、もしかして毎日剣が届く感じ?」

『初月ログインボーナスは、剣以外にも様々な特典がございます』

「例えば?」

『盾に鎧、ダンジョンに役立つアイテム、特別な召喚カード。特別なダンジョンチケット、進化用アイテムなど多種に渡ります。続いて、毎日配布のガチャチケットも送付いたします』

また天井が輝いた。ハッとして見上げると、今度は白いトランプサイズのカードが落ちてきた。

「これが、ガチャチケットなのか。どうやって使うんだ?」

『私に指示していただければ、いつでも利用可能です』

「これ使うと何が貰えるの?」

『召喚カードです』

召喚カードについては、俺はなんとなく理解していた。探索者が配信内で使っていたし、以前同行したアイも使ってた。

『召喚カードとは、探索者が基本五枚までダンジョンに携帯していけるカードのことです。カードに描かれたモンスターにより、様々な効果が発動します』

「へえー! カードが手に入るって、なんか凄そうじゃん。じゃあ今できる?」

『承知しました。召喚ガチャを実施します』

すると、またしても天井付近が輝き出した。

「お、おおおお!?」

だが、今回の演出はかなりやばい。光が発せられたどころじゃない。突如として六畳のボロマンションが、星々に包まれた幻想的な空間に様変わりする。

そして、上と下からキラキラした雷が飛び、真ん中に直撃した後、一枚のカードがちゃぶ台に落ちてきた。

「うわー!?」

俺は突然の演出にびっくりして転がった。訳がわからなすぎてビックリだわ。

『景虎様、大丈夫ですか』

「だ、大丈夫……と思う」

いつの間にか周りは普通の我が家に戻っており、心臓バクバクながらもなんとか起き上がった。

丸テーブルに載っているカードは、表面にモンスターの絵が描かれており、裏面はよくわからない文字で埋まっていた。象形文字が並んでいるようなイメージだ。

「これ、普通によくいるモンスターだな」

『Rレア:ゴブリン(棍棒)をゲットしました』

なんかゴブリンの割にはカッコいいポーズ取ってんな。心なしか顔もキリッとしてる。

『召喚カードはダンジョンに潜る際、一度だけ使用することができます。使用後は、ダンジョンを出て再度潜るまで、利用することができません』

「そうなのか。ってかこういうカードって、みんな持ってるよな。普通は買ってるの?」

『ダンジョン内の宝箱から手に入れることが可能です。または、特定のモンスターを討伐した際にドロップするか、ガチャチケットを手に入れることで獲得できます』

そうか。わりと獲得手段はいろいろあるんだな。ガチャチケットっていうか、こんなガチャがあること自体初耳だったけど。

『明日以降も、ダンジョン探索に有用なアイテムをお届け予定です。お試しにダンジョン探索をされてみるのはいかがでしょう』

「ダンジョン探索かぁ……ストレス発散にはいいかもね」

ダンジョン配信。今や配信界隈では最もアツく、最もお金を稼げる夢のような世界ではあるけれど、ここ一ヶ月で全く芽が出ない人達を俺は目にしていた。

あの姿を見る限り、本当に配信だけで生活しているのは一握りであり、命の危険もあるしで、とにかく厳しい世界っていう印象が強くなっていた。

だから、俺としてはストレス発散がせいぜいのところ。まさか本業でやっていこうなんて、考えてもいない。

「明日は面接の予定とか入ってないし、いっちょ気分転換に潜ってみようかな。低層までなら、一人でもいけるかな……」

『問題ありません。サポートは完璧に行いますので、ご安心を』

「マジで? ありがとう。よろしく」

せっかくゴーグル買ったりいろいろしちゃったし、一回くらいはやってみよう。

そんな軽い気持ちで、俺は初めてソロ探索者として、ダンジョン配信をすることになった。