作品タイトル不明
メタルモンスターの王が出現しました
しばらく進むこと数分。今度はまさに迷路で、いきなりモンスターと遭遇する危険性が上がってしまう。
「うおおおお!」
……が、今回のモンスター達は特に強くもないメタル系ばかりなので、ばったり会っちゃうのは逆に好都合。
いきなり出てきたメタルビッグイノシシに、俺は渾身の一撃を浴びせた。すぐにぶっ倒れて消えていく姿は哀愁が漂ってる。
「よっし。このフロアでもけっこう倒してるな」
『二十五体討伐しています。とても良いペースです。このまま奥まで進みましょう』
「オッケー。あ、そうだ。みんな退屈してないか? 同じような場面ばっかでごめん」
AIミリアが、モンスターを倒した数をカウントしてくれてるので助かる。ただ、視聴者を退屈させてないかが心配だ。
やっぱ配信をするからには、観てくれる人のことも考えないとだなぁ。なんて思っていたんだが、コメント欄は意外な反応で溢れかえっていた。
:すっげえ……
:えええ、なんか慣れてきてる?
:あのスピードで突然出てきてるのに、よく瞬時に倒せるわ
:順応してる感凄い
:あの、モンスターもカゲ君も早すぎて、何が何だか分かりません
葵:こんなにメタル系をあっさり倒せるなんて。景虎さんは天才です!
:最初振り回されてたの何だったんってくらい、今楽勝やな
:強い……!
:だんだん癖になってきたこの配信
:メタルモンスターが溢れ出るダンジョンなんて初めて聞いたぞ
:俺もこのダンジョン潜りたい!
:これ超速でレベルアップしてるだろ
:専門家が見たら気絶するような場面のオンパレード
:速すぎて草
:メタルモンスターの動きを読んでる??
:こりゃ今の有名探索者より強いかもよ
:このまま突き進んで!
:葵ちゃんすっかりファンやなw
:葵ちゃんが夢中になるほどの配信
:マジで瞬殺じゃん!
:ひえええ
:葵ちゃんがコメント欄の常連と化してる
:いろんな意味で羨ましすぎる配信
:コメント欄嫉妬してて草
あれ? 俺、そんなにうまくやれてるのかな。
なんだかみんなとの温度差を感じつつ迷路を進むと、ひらけた場所へとやってきた。
奥のほうに赤地に金枠の大扉がある。でもその前に、なんかデッカいメタルモンスターが待ち受けてる。
『メタルモンスターの王が出現しました。素早い攻撃にご注意ください』
「メタルモンスターの王? デッカイスライムっぽい? よっし、行ってくる」
『いいえ。メタルグーミンです。グミのモンスターです』
グミがモンスターになるの!?
どの配信でも、そんなモンスター見た事なかったなぁ、と思い近づいてみるとこれがデカい!
普通に五メートルくらいあるんじゃね? っていうくらいのサイズ感。しかも頭に王冠乗っけてるし。
ある程度近づいてみると、メタルグーミンはこちらに気づいたのか、体を震わせ始める。
「っしゃあ! かかって——うわ!?」
デモリッション・スティックを構えた俺に、奴は猛然と体当たりを喰らわせようとしてきた。
かわしたけれど、巨体なのに動きが素早い。しかも振り向きざまにファイアボールを連発してきたんだが。
「おおおおっ!」
とにかく交わし続ける俺。また奴がタックルに向かってきたところで、ドンピシャのタイミングでスティックを振った。
「!?」
「当たった! ……けど」
一撃で奴の体がぶっ飛んだ。しかし、ダンジョンの壁に当たった後、普通に行動を再開してる。
『メタルグーミンは他メタル系と比較し、大きな体力を有しています。マジックカードが有効です』
「あ、このカードか!」
俺は懐にしまっていたマジックカードを取り出し、使用してみた。ずっと前から持っていたけど、一回も使うことがなかった魔法【オルターエゴ】だ。
次の瞬間、シュン! という音がした。でも、音がしただけにしか感じられないんだが。
「あれ? なんか変わった?」
『一定時間分身が二体出現しています。また、分身も同様に攻撃が可能です』
「分身? うお!」
よく分からず周囲を見渡したら、確かに俺と同じ姿の奴が両隣にいる!
しかも俺が動くたびに、分身も同じ動きをしてる。これはかなり驚きだわ。
『グーミンが爆発魔法を放とうとしています』
「おっと!」
ミリアの声を聞き、ハッとした俺は奴が放ってきた魔法をひたすらかわした。
ドン、ドーンという音がフロア内に響き渡る。これかなり強めの魔法じゃね?
戸惑いつつも、こちらも負けてはいられないとファイアボールを一発投げる。
「!?」
すると、なぜかメタルグーミンはビビったように逃げた。でも通路が狭すぎて、結局逃げれないと判断したのか、今度は猛然と突っ込んでくる。
「この体当たりは、こうかわして」
なんとなく読めてきたので、すっと回避しつつ、今度は追いかけてみる。
「で、大体こっちに動くはずだから——こう!」
予想が当たるようになってきた。モンスターがランダムに動く方向に狙いを定め、スティックを振り下ろす。
すると俺を含めて分身二体の攻撃もヒット。グーミンは大きくよろけると、そのまま消え去っていった。
「やった。勝てた!」
『おめでとうございます。メタルモンスターの王を討伐しました。巨大なメタル素材をドロップしておりますので、回収します』
「ありがとう! これでけっこうレベルも上がったかな」
『はい。大きくレベルアップしています。また、同接が八十万に到達しています』
「へえーはち……八十万!?」
驚いてコメント欄を見ると、もう大騒ぎになってる。
:なんだこれええええええ!?
:はああああああ!?
:え、え?
:さっきのモンスター何者だ?
:しれっと倒してるけど、多分国内で初めて見つかったモンスターじゃない?
:メタルグーミンって何
:名前かわいい
:ミリアちゃんが名付けてないだろうな
:愛らしい見た目とは対照的に、攻撃も魔法もエグすぎたんだが
:よくあんな速いの捕まえられるね!
:さっきモンスターが使ってたの、エビルフレアっていう超爆発魔法だと思う
:あの火球も普通のファイアボールじゃなかった
:ってか、分身する魔法って……カゲくんそんなの使えたのか
:分身魔法がエグすぎる。威力三倍ってこと?
:こんなにメタルモンスターをあっさり倒せるなんて凄くね?
:強い強い強い強い強い強い
:どんだけレベル上がってるの?
:主が普通に超反応すぎる!
:あ、ああああああ?
:メタルモンスターに普通に攻撃当てて草
:さっきまで笑ってたけど、ちょっと凄すぎて……
:毎回期待値を超えてくる主
:ミリアちゃん、なんとなく嬉しそうな声
:だんだん成長してる感ぱない
:え、え? もしかしてメタルモンスターの動き読めてる?
みんなとんでもなく騒いでる。なんか赤いチャットも徐々に増えてるし、これはヤバい。
「な、なんか。盛り上がってんな。よし、じゃあ次……行くか」
『はい。次が最後になります』
どうやら次で終わりっぽい。ミリアに教えてもらいホッとしつつ、俺はやたらと豪華な赤い扉を開いていった。