作品タイトル不明
おめでとうございます。同接が百万を超えました
ゴゴゴゴ、という重々しい音とともに扉は開かれた。
中にどんなモンスターが? と思ったけど、地下に降りる階段があるだけ。
その階段を降りていくことしばらく。ようやく降りきった先は、フロア全てが一つになっている大部屋だった。
「うん? ちょっと待ってくれよ。これって……」
『メタルグーミン、ゴールドグーミンの群れがいます。三十二匹おりますので、冷静に戦いましょう』
「分かっ——たぁ!?」
AIミリアのアドバイスが終わる前に、スッゲー勢いで突っ込んでくる金と銀の王冠グミ達。俺は盛大にビビり散らかしてしまう。
しかも爆発魔法とか火球とか、吹雪の魔法とか黒い球とか、めちゃくちゃ飛ばしてくるんだけど。
「おおっととと! こりゃあぶねえ!」
一匹ならいけると思ったが、この数はヤバい。しかも沢山飛び交ってるし、どうしたらいいんだこれ。
コメント欄のみんなも、メチャクチャ過ぎて混乱してるっぽい。ゴーグルの自分視点だから、酔ってる人いないか心配だなぁ。
いや、そんな呑気なこと考えてる場合じゃない。どうするかな。とりあえず召喚カードを使うか。
「魔法がうざい! 行ってくれレジェンドタートル!」
めちゃくちゃカッコいい亀の召喚カードを投げてみた。すると、一瞬だが巨大な亀がフロアに登場し、全体に何か重々しい魔法をかけてくれる。
派手な演出が終わると、グーミン達は魔法を一切使わなくなった。いや、使えなくなったんだ。
レジェンドタートルは一定時間、敵の魔法を完全に使用不可にしてくれる便利な召喚カードだった。
これでしばらくは落ち着けるわー……と思ったが、体当たりの数が増えたのでやっぱキツい!
『景虎様はレベルアップにより、スキル【回転斬り】を覚えています』
「回転斬り!? え、もう使える?」
『はい。剣を持っていないのですが、デモリッション・スティックでも効果があります』
「じゃあ試してみるか。どうやるんだ?」
『武器を持ったまま回転しましょう』
え? そ、そんな簡単なことで?
俺は思わず本当かよと突っ込みたくなったけど、ミリアのアドバイスはいつも的確だ。
だから何も考えず、とにかくスティックを持ったまま回ってみる。
……ん?
「おおおおおお!?」
武器を持ったまま軽く回ったつもりが、どんどん速度が加速していく。まるで自分が竜巻にでもなった気分。
向かってくる金と銀の王冠を被ったグーミン達は、体当たりすると同時に吹き飛ばされていく。
ちなみにオルターエゴの効果がまだ続いているので、分身もいるので当たる範囲がかなり広くなってる。
「目、目が回らーーない?」
『ご安心ください。スキル使用中は、使用者の目が回ることはありません』
「よ、よし! このまま突っ込めるか?」
回転したまま前に進んでみる。意外というか、かなりの速度で前進できるみたいだ。
俺は回転斬りを続けながら、硬いグーミン達を次々とぶっ叩いていった。
:目、目が回るー!
:ミリアちゃん、俺たちはどうなるの!?
:この攻撃……有用すぎん!?
:ただのスキルでこんな技使えるのか
:ヤバい……そもそも主は才能が違ったわ
:ずっとぐるぐるしてて草
:このスキル絶対欲しい
:いやいや、強すぎるって
:化け物みたいなモンスターたちが、あっさりと倒されてる!
:ここに来てカゲ君の強化っぷりが凄い
:あれ? 魔法使ってこなくなった?
:モンスター自分から突っ込んできては倒されてるやんw
:魔法使ってない?
:爽快すぎぃ!
:もしかしてさっきの召喚カードって、魔法全部封じ込めるの? だとしたら便利すぎる!
:ああああああああ
:見てられないよおお
:EXPどれだけ稼いだんだろ??
:すげえーーーーー!
コメント欄のみんな……やっぱ目を回してる人がいるな。ごめんと思いつつ数分後、俺は静かになったフロアに立ち尽くしていた。分身はすでに消えている。
気がつけばモンスターは全部倒れてて、もう金銀財宝の山に囲まれているわけで。
「すげー光景だわ……夢みたいじゃん」
『ゴールドグーミン、メタルグーミンを全て討伐しました。只今より、報酬を全てボックスに回収します』
「ありがとう。そろそろ、ダンジョンも消えるっぽいね」
ミリアがボックスに金銀の財宝を集めまくっているうちに、ダンジョン全体がぐにゃりと歪んできた。
『ダンジョンクリアです。おめでとうございます』
「ありがとう! やったー」
なんて喜んだのも束の間、ダンジョンが消え去って数秒後に、俺は唐突に温泉の中に落っこちていた。
「ぶわ!? そっか。ここ温泉だった!」
慌てて温泉から顔を出し、濡れながらも外に出る。天気は今も快晴で、山の風景がなんとも素敵だ。
「終わったー。なんか今回、かなり手応え感じたかも」
『今回の探索で、景虎様は大きなレベルアップを果たしています。そして、おめでとうございます。同接が百万を超えました』
「そっかー。いやーだからか分からないけど、体がだいぶ怠くなってるんだよな。うん……百万……え、マジ?」
『マジです』
「……………え、ええ」
俺は絶句した。こんなにも多くの人たちに観られている事実に、動揺が止まらない。そして少しして、山が綺麗だなー……としか思えなくなっていた。
『景虎様? ……どうやらフリーズを起こされたようです。そのため、今回の配信は終了とさせていただきます。ご視聴、ありがとうございました』
しばらく黙っていたので、ミリアが気を利かせてくれたらしい。マジで助かるAIだわ。
「あ……ありがとうございました」
:ウケる
:同接百万!?
:今回の配信で確信したわ。絶対この配信者は強い
葵:ありがとうございました! とっても勉強になりました!
:うおおおお!?
:軽い放送事故になってて草
:何から何までびっくりだわ
:同接百万とか国内でほとんどないぞ!
:とんでもねえ配信だった!
:安定の葵ちゃんで草
:おめでとー!
:途中からめちゃカッコ良かった
:すげええええええ
:これはダンフェスの台風の目
:葵ちゃんもハマってるなー
:同接百万は強すぎて草
:次も待ってますー
:葵ちゃーん!
:もうダンフェス参加っしょ
:召喚カードも規格外だし、主自身も規格外
:カゲ君お疲れ!
:怪物爆誕!
:カゲ君、ミリアちゃんお疲れー
:ありがとうー!
:多分この配信は世界中で騒ぎになるぞ
:ミリアちゃんもお疲れ!
:お疲れ様ー! 次はダンフェス!?
:おつおつー!
どうにか最後の挨拶はできたけど、コメント欄が大変なことになってて更にビックリ。
ちょくちょくダンフェスについてもコメントされているようだった。
次はどうしようかな……そう思いつつ、俺は配信が終わってもしばらく山の景色を眺めていた。