作品タイトル不明
ただいま、登録者数が四百万に到達しました
それから二日後。俺はとりあえず新しい専用ダンジョンとやらに挑戦してみることにした。
今は電車に揺られて、かなり地方のほうに来てるんだけど。多分秋とかに来たら紅葉が凄いんだろうなーっていう素晴らしい景色。
ちなみにここに来るまで何時間もかかったので、今日は泊まりになりそうだ。
「いいなぁ、なんか旅してるって感じ」
とてもこれからダンジョンで戦いまくるとは思えない。もうこれ観光でいいんじゃね? なんてことを思いつつ、目的の駅で降りるとしばらく歩いた。
『ダンジョン出現地まで、あと五分ほどで到着予定です』
「え? マジか。この辺り、温泉とかあるみたいだけど……」
『ダンジョンは温泉の近くです』
すげえ所にあるんだな。っていうかダンジョンって、なんでそんなとこにできちゃったの? っていう場所がけっこうある。
しばらく歩みを進めていくと、なんだかモヤモヤとした霧に包まれ出した。
『この付近はダンジョンの影響により、地形に変化が生じています』
「なんかゴツゴツしてて、岩山みたいになってきた。って、え!? もう温泉あったぞ」
岩山を登った先に、なんとビックリなほど大きな温泉を発見。
『ここです。専用ダンジョンキーを使用することで解放が可能です。その前に、配信をスタートしますか?』
「あ、そうだね。じゃあ配信お願い!」
『準備を開始します。配信開始まで残り五秒……四、三、二……スタートです』
ふっと配信画面がゴーグル右上に表示される。この瞬間が最近マジで緊張する!
「こんにちはー! 今日はある温泉が出る山に来てるんだけど、そこで専用ダンジョンっていうのに潜ろうと思う。ってかこの景色、ヤバくね? めちゃくちゃ綺麗なんだが」
振り返って山から見える景色を、みんなにも共有。するとチャット欄は、あっという間に人でいっぱいに。
:こんちゃーー!
:待ってたよぉおお
:雑談からずっと待機してた
:思ってたより探索再開早くて助かる
:こんにちは!!
:カゲさんちーす
:癒される景色
:こんな所にダンジョンが!?
:へー!
:こんちゃ
:おおおー!
:なんか面白そう
:今回も期待してます!
:うおおおおおお
:待ってた!
:へええー
:温泉!?
:なんか旅番組みたい
:とてもこれからダンジョン行くとは思えないんだが
:あれ、観る配信間違った?
:散歩系のテレビ番組かな
:あ、温泉!?
やっぱみんなも戸惑ってるみたい。
「そうなんだよ。めちゃくちゃ長閑な場所なんだけど、ここにダンジョンがあるんだって! じゃあ早速だけど、ダンジョンキー使ってみるか」
俺は振り返り、かなりデカい温泉の前に立つ。そして金で作られたような鍵を天に掲げてみた。
「……ん? なんか、ちょっと揺れてる?」
『ダンジョンが浮上しています』
「浮上? う、うおおおおお!?」
予想の斜め上というか、温泉のど真ん中からデッカいダンジョンが頭を出した。そのまま浮かび上がってきたんだけど、外観がメタルとゴールドが入り混じった凄まじい色合いだった。
『成長の洞窟が出現しました。挑戦できるのは一名限定です』
「そうそう。この洞窟って、一人しか入れないんだって! 専用のキーが必要なだけじゃなくて、入れる人も制限があるらしい。じゃあとりあえず、行ってみるか」
本当はギルド【リベリオン】で仲間を誘ったり、以前から誘われてた玲奈や葵ちゃんと来ることも考えたんだけど、『専用キーの所有者しか入れません』と教えられたのでやめていた。
というわけで、早速中に入ろうと思ったんだが。
「湯気で画面が凄いことになってんなー」
入り口から中に入るまでは、普通に温泉なので、画面が凄いことになった。
ダンジョンの中に入っていくと、しばらく歩いた先に階段がある。そこをずっと降りていったところで、ようやくコメント欄が見えてきた。
:専用ダンジョン!?
:凄まじいもんを見たわ
:演出がヤバすぎて草
:これって超貴重な映像じゃない?
:一人しか入れないの?
:今後ろから入ろうとしたらどうなるんだろーか
:カゲ君、今日はどんなミラクルを見せてくれるのかな
:洞窟出てくるシーンすげー!
:圧巻だったなさっきの
:専用ダンジョン自体初耳だけど
:おおー!
:これから何があるか楽しみだじょ
:いきなりけっこう降りていくんやね
:洞窟ってわりには床の質が変じゃない?
:ちょっとキラキラしてる?
:ここ、確かに普通のダンジョンじゃないよ
:あ、おめでとー!
:おお!?
:もう四百行ってたかー!
:すごーい
:すげえええーーー
:最短かな?
:登録者数やばい
:いよいよここまで来たか!
:おめでとうーー!
「え? 登録者数?」
とりあえず集中して階段を降りていたら、コメント欄に気がかりな言葉が。
そういえば登録者数が増えてるのは知ってたけど、最近見てなかったっけ。
『おめでとうございます。ただいま、登録者数が四百万に到達しました』
ふと階段を降りる足が止まってしまう。
「え? よ、四百? この前百じゃなかったっけ」
『はい。現在も順調に、今まで以上の速度で登録者数が増加しております。ちなみにですが現在の同接はスタート時点で六十万となっており、過去最高のペースです』
「へ、へー………えええええ!?」
階段を降りきった段階で、俺の頭の中は完全に真っ白。ちょっと待って、めちゃくちゃヤバくね!?
でもテンパってばかりもいられない。もう探索は始まっている。
俺は慌てまくった心をどうにか静めようとしながら、地下一階へと足を踏み出した。