作品タイトル不明
あれ? 俺ってそんな強いか?
「あ、あああー! あー! えーとみんな、おはよう! 今日はAIミリアに教えてもらった進化の洞窟、だっけ? っていう場所に潜ってます」
とにかくなんか喋ろう。超絶テンパった俺は、もう自分でも何を喋っているのか分からん状態に。
:落ち着けw
:めっちゃ焦ってて草
:急に同接一万超えたらパニくるわ
:大丈夫ー
:葵ちゃんを助けてくれてありがとう
:がんばれー
:溢れ出る初心者感
:応援してる
:いけー
:進化の洞窟??
:ビギナーっぽくて可愛い
:挑んでるダンジョンから謎で草
コメント欄がちょっとしたことに反応するせいか、慣れていない俺は盛大に緊張してしまった。
落ち着け、とにかく落ち着け俺。深呼吸深呼吸。
『前方にモンスター出現中です』
「ん? モンスター?」
そんななか、AIミリアがモンスターの出現を教えてくれた。でも待てよ。ここってダンジョンの中だけど、木がいっぱいあるがモンスターはいなそうだぞ?
「おかしいな。俺が見てる限り、モンスターが見つからないんだけど」
『悪魔の木が出現しました』
「ん? あああ!?」
見つからんなーと思って木々の間を歩いていると、突然前にあった木が立ち上がった!
急に目と口が現れて、ズイズイとこちらに向かってくる。ビックリした俺はとりあえず距離を置こうとするも、意外と足が速い。
いや、木のモンスターだから足というより根っこか? とかどうでもいいことを考えていると、ミリアの涼しげな声がした。
『バトルアクスが有効です』
「そうか! よ、よし」
今日はミッション報酬で獲得していた強そうな斧を用意していたんだった。背中に預けていたそれを手に取り、一気に距離を詰める。
「うおおおおお!」
そして思いっきり横から切りつけてみた。木こりの一撃をイメージしてみたんだけど、どうやら上手くいったようで、木のモンスターは切断されて地面に転がった。
すると、モンスターはシュウシュウ音を立てて消えていったんだけど、束になった木材とすげー色んな林檎が落ちてきた。
『進化素材を獲得しました。ボックスに収納します』
「ありがとう! これ全部進化素材なのか」
初見の俺にはよく分からないが、こういうアイテムが必要なんだろう、きっと。
そういえばだけど、チャット欄のみんなにも説明がいるな。もう同接ゼロじゃないんだし、まめに交流するようにしないと。
いやー……ってかいつの間にか盛り上がってるじゃんチャット欄。
「今日はこうやって、進化素材をできる限りゲットしたら終わりにするつもりです。よく分からんけど、普通のダンジョンみたいに上層、中層みたいに続いてるのかな」
『本ダンジョンは、基本的なダンジョンとは異なり、地下一階と地下二階のみです。モンスターを全て討伐するか、一日経過するとダンジョン自体が消滅します』
「へえー! すげー変わったダンジョンじゃん」
ダンジョンは奥が深いっていうか、モンスターを全部倒したら消滅するところもあるのか。
そんなやりとりをしていると、チャットがさらに盛り上がっていることに気づいた。
:すげええええ! 悪魔の木を一撃かよ
:ボックス?
:あれ、めちゃタフなモンスターだったよな?
:しれっとやってるけど、一撃で倒すとか凄すぎん?
:うわああああああ
:なんか急にアイテム消えてなかった?
:全然自覚ないみたいだけど、強いわこの人
:ミリアちゃんの声好き
:ってか、そんなダンジョンの話初めて聞いたぞ
:ミリアーーーー
:さっきのボックスが謎すぎて草
:ってか進化アイテムなんて聞いたことないんだが?
:なんなのこれ
:カゲチャンネル強すぎて草
:待って、なんか知らないワードばっかりですよ
:悪魔の木ってランカーでも苦戦する時あるぞ
:スルーされてるけど、進化の洞窟ってなんぞ??
:今全然知らない話ばっかりで困惑してる
:自然体だけど強すぎることは理解した
:ミリアちゃん、説明して
:謎ワード連発で同接も跳ね上がってて草
:こりゃ後々騒ぎになるぞ
:前情報欲しいっす!
「あれ? 俺ってそんな強いか? ってかミリア、進化アイテムとか専用ダンジョンとか、みんなも知らないってよ」
やっぱ知らないの、俺だけじゃないじゃん。そう思いながらダンジョンを歩く。なんていうか、薄暗いの森の中を歩いてるような気分だ。
『いえ、景虎様は普通です。ダンジョンについても一般的です。当チャンネルは初心者の方も視聴されているのでしょう。それよりも、おめでとうございます。同接が五万に到達しました』
「へ?」
ふとゴーグルの右上に表示されている、同接の数値を見ると、確かに五万超えてる。
:いやいやいや!
:一般的じゃないってwww
:AIの声かわいい
:AIに初心者認定される五万人
:これは嘘の匂いがしますね
:うん、きっとそうだよ一般的だよ
:そういえば聞いたことあるかもなー(遠い目)
:五万到達おめ!
:すげー! もう同接五万人届いてんの!?
:ってかAI音声自体謎じゃない?
:ひえ!
:すげーーー
:今どき開始数分で同接五万は、なかなかないぞ
:急上昇ランキング入り確定
:AIの知識がおかしいw
:ここから伸びるかは内容次第だな
:がんばれ!
:おおおおおおお!
:AIが言うならそうだよ! ってかAI、君何者なの?
:このやりとり好き
:草ぁ!
チャット欄がわけ分からん。もう何がなんだか全然分からん。しかも、もうすぐ六万いくじゃん。さっきまで一万ガーって騒いでたんだけど。
「な……な……やばい。いくらなんでも、いきなり上がりすぎだって」
もう俺、過呼吸になりそう。五万人に俺の姿が見られてるって思うと怖い。
ってかゴーグル配信だから、俺自身は映ってないからまだいいんだけど。
『モンスターが出現しています』
「ん? 何処だ?」
『囲まれています。冷静に一匹ずつ倒しましょう』
「囲まれてる?」
『はい』
ミリアのお知らせの後、周囲にあった木々が一斉に立ち上がった。
「う、うわあああああ!?」
一体何匹いるんだこれ? 俺は悪魔の木達と鬼ごっこ状態になりながらも、とにかく一匹ずつ倒していった。