作品タイトル不明
本日登録者数が百万に到達していました
酔っ払って帰った次の日。ちょっぴり頭が痛いなか、俺はバスに揺られてある場所へ向かっている。
その最中に、この前知り合った葵ちゃんからチャットがあったので、少しだけやり取りをしていた。
葵:おはようございます! ギルドのことなんですけど、今度景虎さんをお招きすることに決まりました!
:マジ? ありがとう!
葵:とんでもないです! こちらこそ助けていただいて、本当にありがとうございます。じゃあまた、お日にち決まったらチャットしますね。
:了解!
なんかキラキラしてんなー。最後にゆるキャラ? みたいなスタンプも送ってくれたし。
玲奈とのチャットなんて、そういうの全然ないんだよな。あいつ「〇〇に何処来て」とか短文で送ってくるのがほとんどだし。
そんなことを考えながらバスに揺られていると、どうやら目的の場所についてらしいので降りてみる。
さらにしばらく歩くこと一時間。とある湖の橋までやってきた。ここで俺はゴーグルを起動させてみる。
「おはよう! ここでいいんだよな? 俺場所間違ってない、よね?」
『おはようございます。はい。こちらで合っています。それでは、ダンジョンキーをご使用ください』
「こうだっけ?」
実は今日、俺は専用アイテムとやらが沢山貰えるダンジョンに挑戦することになったんだが、なぜかダンジョンは地方の湖にあるとかで、かなり遠出をしてここまで来ていたんだ。
ミリアが言うには、俺はそろそろ探索者ランク的に、レベル上限に到達しちゃうらしい。だから探索者ランクを上げるために、あるアイテムを収集する必要があるんだと。
とりあえず、ミリアに教えてもらったとおりに、わりかしデッカいダンジョンキーっていうアイテムを空に掲げてみた。
「あれ? なんも起きなくね?」
少しの間は、特に変わらない光景だった。のどかな湖の橋で、マンガにありそうなデカい鍵を空に掲げている俺。ヤバい奴にしか見えん。
「お、おおおお!?」
でも突然変化は起きた。地震!? と思うほど周囲が揺らまくっていると思ったら、急に湖面からダンジョンの入り口が湧き上がってきたわけで。もうビビりまくり。
「……え、マジで出てきた」
『はい。マジです』
「よ、よっしゃ! じゃあ挑戦するぜ」
俺は気合を入れつつ、ダンジョンの入り口へと足を踏み入れる。すると、地下へと続く先が見えないほど長い階段があった。とにかく降りてみよう。
「大丈夫かなぁ、これちゃんと帰れるかな」
『問題ありません。それより、配信はいかがなさいますか?』
「ああ、配信か。まあ今日も同接ないと思うけど、一応やるか」
正直、全然誰も観てないと思うとやる気は起きないけど、多少のメリットはあるかもしれない。
『では配信をスタートします……三……二……一……スタートしました』
「みんなおはよう! 今日はAIミリアから紹介してもらった専用ダンジョン【進化の洞窟】に挑戦するからよろしくー!」
はい挨拶と説明終わり!
後は虚無のコメント欄が最初から最後まで続く……はずだったんだけど。
始まってすぐ、ゴーグル画面に違和感を覚える。なんかコメントが嵐のように流れてきてる気がするんだが。
「あれ? ミリアー。配信、なんか間違ってね?」
『特に間違いはありません』
「すげえコメント来てるんだけど」
『はい』
「え? なんか同接……一万超えてるよ」
『はい』
「え、え、ちょっと待って。なんかおかしくね?」
『特におかしいことはありません。景虎様のチャンネルは、多数の視聴者の獲得に成功しています』
多数の視聴者の獲得だって? そんな突然獲得するとかあるか?
疑問で頭をいっぱいにしていると、コメント欄が減るどころか加速した。
:おはよ
:おはーー!
:これが噂の配信者か
:葵ちゃんを助けてくれてありがとう
:この人で合ってる?
:どこに潜っとるん?
:専用ダンジョンってなんだ
:やあ
:おはよう!
:初めまして
:うひょおおおおお
:配信機材ドローンじゃないんだ
:どんどん降りて行ってる所からスタートって斬新だな
:初めてリアタイで観るわ
:すげー楽しみ
:数日で登録者数百万は草
:こんな唐突に始まる配信初めてだわ
:おは
「お、おおお!? な、なんだなんだ。めちゃくちゃコメント来てんじゃん! ミリア、これどうした!?」
俺は軽いパニック状態になった。だってこんなにコメントが来るなんて、全く予期してなかったわけで。
ゴーグル画面の右上が忙しいことになってるんだけど!
『景虎様のチャンネル……通称カゲチャンネルですが、本日登録者数が百万に到達していました。これは先日有名な探索者を救助したことにより、アカウントが特定され、一部のユーザーが好奇心から集まっていると推測されます』
「有名な探索者って、もしかして葵ちゃんのこと?」
『はい。彼女はどうやら国内、海外ともに多くのファンを獲得している配信者のようです』
「し、知らなかった。マジかよ」
『マジです。おめでとうございます』
俺はもう驚きというより、呆然としちゃって何を語って良いのか分からなかった。
どうしようとか思っていたら、いつの間にか階段を降りきっていて、開けたダンジョン内に辿り着いていたんだ。