軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

じゃあ虎、今度あたしと一緒に潜る?

『自動周回機能が開放されました』

「え!? 自動……何?」

次の日の夕方。急いで面接から帰ってきた俺は、飲み会に向かう準備に急いでいた。飲み会とは言っても、大学時代の友達数名と会うってだけ。

急いでるからミリアの声もちゃんと聞けてなかったんだけど、また変わったお知らせが来たなーくらいの認識だった。

ってか飲み会の場所とか見てなかった俺が悪いんだけど、マジでバタバタしてる。

『自動周回機能です。これまでクリアされたダンジョンの階層を、景虎様の分身が周回し、経験値と報酬を獲得できる機能となります』

「ぶん、しん? な、なんかすげーじゃん。俺が実際に回ってなくても経験値稼ぎできる、みたいな?」

『はい。早速スタートしますか』

「あ、ああ。じゃあ頼むわ。……あれ? ってかあれだな。なんでゴーグル起動してるんだ? 電源入ってたっけ?」

『………電源は入っていました。景虎様は前回、ログアウトしておりませんでした』

なんだ、俺が忘れただけか。そういえばこのゴーグル、けっこうな時間充電してないけど、電池持ちもめっちゃいいな。もう一週間くらいそのままだわ。

……いや、いくらなんでも電池持ち過ぎな気がする。うん?

「あ、やべ! 行ってきます!」

『行ってらっしゃいませ』

いろいろと疑問が湧いたけど、それどころじゃない。時間にだけはルーズだと思われたくなかった俺は、とにかく必死で家を飛び出した。

……が、間に合わなかった。

「おそーい! 虎だけ遅刻してんだけど」

「わ、悪い。マジでごめん」

居酒屋の個室にたどり着いた時、もうみんな揃っていた。集まったのは大学の時よくつるんでた六人で、女が二人で他は男。みんな垢抜けた感じになってんなー。

あと、真っ先に苦情を言ってきたのは、大学でなぜか俺をよくからかってきた 霧雨玲奈(きりさめれな) っていう奴だ。

金髪ロングが鬼のように似合う、すげー色白美人ギャルである。なんで俺みたいなのと接点があるのか、学校の七不思議以上の謎を感じる。

「おお、虎! 変わんねえなー」

「いや、なんかガタイ良くなったんじゃね?」

「さっきまで虎くんの話してたんだよ」

「虎ぁ! 会いたかったぜ」

一体どんなこと言われてたんだろ。まーロクな話はなさそうだ。

とりあえず久しぶりにみんなと喋ってみたけど、やっぱほとんどは大学の頃の話か、社内恋愛の話か、または仕事話になる。

ああ、なんか気まずい話題になってきたな、とビールを飲みながら考えていると、

「虎はもしかしてあれか、今日も仕事で残業してたのか?」

なんて嫌な質問が飛んできた。

「あ、いや……ってか俺、就活してるんだ」

すると、アレ? という顔になる男友達。

「は? なんで? ライバーの事務所に入ったばっかでしょ?」

続いて玲奈が質問してくる。みんなが「え!?」っていう顔になってる。気まずい、マジで気まずいこの展開。

「あーあれ。あれはその、クビになったんだよ。ヤバかったぜー。なにしろ社長に、ビルの玄関から蹴り飛ばされたし。まあ、もう気にしてねーけど」

そんな説明を笑いながらしてみたが、みんなは「うわぁ」というまさにドン引きの反応だった。

男数人は「ひでえ社長だなおい」とか、「お前ならもっと良いところで働けるよ」とか励ましてくれる。なんか泣きそう。

「マジありえなくない? 入ったばっかでクビにするとかさ。なんて事務所だっけ?」

でも、一人だけなぜか憤慨してる女が。金髪ギャル玲奈だった。

「え、あー。チーム袋小路」

「イタ電しちゃおっか」

「おいおい、やめろって」

「おいコラァー、今度お前らの会社に殴り込みかけてやるからな! って言ってあげる」

「いやいやいや、絶対やめろ」

「いいか、俺の名前は景虎だ。竜牙景虎だ! 逃げるなよオラ! って伝えてあげるね」

「勝手に俺の名を騙るんじゃねえよ!」

「あはは! この元気があれば大丈夫だよね」

ニヤニヤしながら見てくる金髪ギャル。コイツまたからかってやがる。イラッとしたので俺はそっぽを向いた。

すると、今まで静かに酒を飲んでいた大人しめの女友達が、心配げに口を開く。

「景虎くん、生活は大丈夫なの?」

「あ、うん。とりあえずまだ。ダンジョンに潜って、いろいろ手に入ってるから、それ売ったらまだ凌げる気がする」

と、心配かけたくなかったので甘い見通しで語ったけど、どうしようかなマジで。

「え? ダンジョン潜ってんの? あたしも最近潜ってるよ」

なんて悩んでいたら、隣の能天気ギャルが何か言っとる。

しかも他の連中もダンジョンというワードに反応して、そこからはみんなの探索トークが始まった。

「ってか、みんな潜ってんだなぁ」

「当たり前じゃん! じゃあ虎、今度あたしと一緒に潜る?」

「お前、俺をモンスターの囮にするんじゃねーの?」

「え? なんでわかったの?」

「やっぱそうかよ。絶対お前とは潜らねえよ」

NOを突きつけたけど、玲奈は楽しそうに笑ってた。なんだかんだ気を使わないで済むので、楽ではあるんだけど。

そんなたわいもない会話を続けながら、久しぶりの飲み会は終電近くまで続いた。

お会計の後、店の前で集まったみんなは、もう顔が真っ赤だったりヨロヨロしてたり様々だ。

「じゃあ俺こっちだから。またな!」

そう言うと、酔っ払ってテンションが上がった連中が一斉に応えて手を振ってくれる。

良い奴らだけど、やっぱそれなりに苦労しているみたいだった。そりゃそうだ、だって社会人一年生なんだから。

きっとあれだよ、これからどんどん出世しちゃったり、するだろうなー。

「あー、俺も早く仕事決めねえと。それまでは面接とダンジョンの往復だ」

「良いじゃん! いっそ探索専門になっちゃえば」

「いやいや……あ、お前いたのか」

ハッと隣を見ると、ニヤニヤ顔の玲奈がいる。勘弁してくれよまったく。

「あたしもこっちなの忘れたの? ひどーい」

「そうだっけ? あれ?」

「ってかどのくらい強くなったの?」

「うーん。よく分からん。AIが言うには、まだまだらしいんだけどさ」

「AI?」

俺はとりあえず悪友に、AIミリアの話をかいつまんで説明してみた。話が進むほど、小顔がどんどん傾げて斜めになってきてる。

「何それ? AIのサポートなんかないっしょ。虎さぁ、なんか騙されてない?」

「え? いやいや、あるって。だってミリアの言うことはいつも当たってるんだぜ。モンスターの情報も全部記憶してるらしいし、いつも助けてくれてるよ」

「サブスクなんて、そもそもないんじゃないの?」

「え?」

今度は俺が戸惑う番だった。「そうかな?」「そうだよ」と繰り返し喋っているうちに、なんか本当に騙されている気になってくる。

いろんなことを考えつつ、玲奈と別れた俺は家にたどり着いた。ちょっとミリアにさっきのことを聞いてみるか。

「ただいまー! あのさーミリ、」

と思っていたら、部屋の上から大量の物が落下してきた!

「うわあああ!?」

『お帰りなさいませ。自動周回が完了し、報酬を獲得しています』

「な、なんだぁ!? この山は!」

あまりに突然の事態に、俺は何を聞きたいのかもすっかり忘れてしまい、ただAIの説明を淡々と聞いていた。

なんか少しずつ、とんでもないことになってる気がするけど、大丈夫かなぁ。