軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第05話 良い物は誰かと共有したい

そんなことを言われているとはつゆ知らず、私は森に足を踏み入れていた。

森は木々が生い茂り、枝の間から差し込む光はまるで天然のステンドグラスみたいで、とても幻想的だ。

前世でも今世でも、家に軟禁状態だったから森を歩くのも初めて。ひんやりとした空気に木々のざわめき、そして、青臭い匂い。どれをとっても新鮮で面白い。

「まずは……っと」

「何をしているのだ?」

「入れ物がないから作ろうと思って」

「なるほどな」

薬草を集めるにしても、今の私には運ぶ手段がない。せいぜいワンピースの裾を、ザル状に広げて載せるくらいだ。

それじゃあ全然量が持てないし、両手が塞がってしまうのでとても不便。

だから、植物を使ってカゴを作ることにした。

カゴは前世で手慰みに作っていたことがあるので、多分作れるはず。

「あっ、あった!」

「おい、ちょっと待て!」

私はちょうどよさそうな蔓状の植物を見つけたので駆け寄っていく。

ただ、引き留める声が聞こえた時には、時すでに遅し。

「ギャォオオオオッ」

「きゃああああっ」

蔓がぶら下がっていた木が突然動き出して、枝に絡めとられてしまっていた。

私は宙ぶらりんになる。

「人間!!」

「きゃっ!!」

でも、声が聞こえたと思った瞬間、アークの口に咥えられていた。

助けてくれたみたい。

「ありがとう、アーク」

「森に入る前に注意したばかりだろう。全く……世話の焼ける……」

私を下ろした後、アークが不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「あははははっ、ごめんね」

「もういい。ここで大人しく待っていろ」

アークは木の化け物に向かって走った。

多分あれってトレントってモンスターだよね。初めて見た。ゲームで見たモンスターの実物が見られるなんて、感動しちゃうなぁ。

「ふんっ!!」

「ギャアアアアアアッ!!」

アークとトレントが交錯した瞬間、トレントはバラバラになって死んだ。

「アークって本当に強いんだね」

「ふんっ、この程度準備運動にもならん」

「助けてくれてありがと」

戻ってきたアークの体をギュッと抱きしめる。

うふふっ、もふもふ最高。

「勘違いするな。たまたま走った先におまえがいただけだ」

「うんうん、それじゃあ、私はさっきのモンスターの蔓を使って籠を作るね」

「我は腹が減った。モンスターを狩ってくる。戻ってくるまでここを動くなよ」

「分かった」

アークは凄いスピードで森の中に消えていった。

一人でどこかに行くつもりはないので、蔓を集めてカゴを組み上げる。

「戻ったぞ」

「あ、おかえり。え、なにこれ」

私がカゴを編み終えた頃、アークが戻ってきた。

今までモンスターに襲われなかったことを考えると、傍に居たモンスターも、アークが一掃してくれたみたい。

アークは私の前に、沢山の金色の洋梨っぽい果物をボトボトと落とした。

こんな果物は図鑑でも見たことない。

「歩いていたらたまたま見つけた果物だ。食後の口直しに食おうと思ったが、もう入らぬゆえ、お前が食え」

「アークは優しいね」

「勘違いするな。別にお前のために持ってきたわけではない」

アークに近づいて体を撫でると、そっぽを向きながらも受け入れてくれる。

しっぽがゆっくり揺れてる。可愛い。

そういえば、記憶が戻ってから何も食べてなかったけど、お腹が空かなかった。

記憶を辿ると、前世の記憶と人格が蘇る前は、食事もほとんど摂ってなくて、水さえろくにもらえなかったらしい。

それでも問題なく生きられたのは、やっぱり超健康のおかげなんだろうね。

それにしても、こんなのネグレクトよりひどい。

休みもなく、働かせるだけ働かせて、食事も与えず、挙句の果てに自分たちの罪を擦り付けるなんて、そんなの家族なんかじゃない。

元々未練はなかったけど、より一層この国に留まる気が失せた。

――ぐぅ~

洋梨を持ったら、都合よくお腹が鳴る。

急にお腹が空いてきた。

何かを食べる時は、お腹が空いていた方が美味しく感じる。空腹が最高のスパイス、と言われるくらいだから当然だよね。

もしかしたら、超健康は何かを食べる前に、都合よくお腹を空かせる力まであるのかもしれない。まさに痒い所に手が届くとはこのことじゃないかな。

――シャクッ

私は金色の洋梨を皮も剥かずに齧る。

「おいしい!!」

「ふんっ、果物ごときで大げさな」

余りの美味しさにアークを見ると、アークは不機嫌そうに明後日の方向を向いた。

味も食感も洋梨に近いけど、こんなに美味しい洋梨は前世でも食べたことない。この美味しさを独り占めなんて勿体ない!!

「本当だって。アークも食べてみてよ!!」

顔の前に回り込んで洋梨を差し出した。

「我はもう腹がいっぱいだと言っただろう。それは全部お前のものだ」

「はぁ~、そっかぁ。一緒に食べたらもっと美味しいと思うんだけどなぁ……」

「……ふんっ、気が変わった。寄越せ」

伏せをして口を開けるアークに、洋梨を放り込む。

「どう? 美味しいでしょ?」

「まぁまぁだな」

アークが、ムシャムシャと咀嚼しながら満更でもなさそうな顔で呟いた。

「もうっ、素直じゃないんだから」

「本心だ」

おしゃべりをしながら洋梨を頬張る。

沢山採ってきてくれたけど、美味しすぎて全部食べてしまった。