軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第06話 妖精の雫

程よい満腹感に包まれる。

誰かと一緒に食べる食事がこんなに美味しいとは思わなかったなぁ。ついてきてくれたアークには感謝感謝。

「よく食べるな」

「美味しすぎてまだまだ食べられそうだよ」

「太るぞ」

「女の子にそんなこと言っちゃダメだよ?」

楽しい食事を終えた後、私たちは作ったカゴをもって薬草採集に向かう。

薬草のことは覚えさせられたからよく知っている。倒木の根元や苔むした岩の隙間など、ちょっとした場所に有用な薬草は生えている。

私はしゃがみ込み、葉の縁がギザギザした薬草を摘んだ。

「これはアルーエ……そのままでも胃薬にもなるし、ポーションにも使えるやつだ」

それから、倒木の根元に生える小さな白い花を摘み取る。

「ミルフォーゼ……見た目は地味だけど、乾かして煎じれば凄く効く風邪薬になるんだよね」

続けて、私はめぼしい薬草を採取していく。

この森は薬草の宝庫で、街で売れば結構なお金になりそう。

「お前は薬草を全部覚えてるのか?」

不意にアークに尋ねられる。

「そんなことないよ? 数えてないから正確には分からないけど、千種類くらいじゃない? 私なんて全然知らない方だよ」

「一介の薬師はそんなに覚えてないと思うぞ?」

「そうかな?」

比べる相手がいなかったから、全然分からない。毎日ネチネチと怒られていたから、あんまり優秀ではなかったんじゃないかな。

勿論、少しくらいは稼げると思うけどね。

アークと話しながら薬草を採取しながら奥へと進んでいく。

森の中が少し暗くなってきた。少し日が傾いてきてるのかも。

「なにこの沼……」

「明らかに毒だな」

森の奥には、いかにも毒ですよと主張してる紫色の沼があった。

「あっ」

「どうした?」

「あの沼の真ん中に生えてる細い木になってる小さな実は、妖精の雫と言ってかなり貴重なものだと思う。本物なら一つ食べるだけで、魔力とか体力とかあらゆる疲労を完全に回復して、体をベストコンディションの状態に整えてくれるはず。高価で買い取ってもらえると思う」

「ほうっ、しかし、沼の真ん中だぞ? どうやってとるつもりだ……ってまさか」

話している途中で意図に気づいたアークに、私は口端を釣り上げる。

「そのまさかだよ。沼に入って取ってくるね」

「バカ者。死んだらどうするつもりだ!?」

「大丈夫。奈落の谷の毒の霧も効かなかったんだもん。沼もどうにかなるよ」

「おいっ、待て」

私は制止を振り切り、頭にカゴを乗せて沼へと入っていく。

ねっとりとまとわりつく液体が少し気持ち悪い。でも、それ以外に体に影響はなさそう。

私はどんどん奥へと進んでいく。

沼は大体私の胸下くらいまでの深さ。どうにか真ん中までたどり着いて、木の実を全部取ってかごに入れ、アークのいるところに戻ってきた。

「ほらっ、全然大丈夫だったでしょ?」

「大丈夫だったでしょ、ではないわ。全く無茶ばかりしおって」

「いけると思ったからね。それよりもほら見て、たくさん採れたよ。これで資金はバッチリだと思う」

今まで採集した薬草と合わせれば、必要な道具は全部揃えられるはず。

早く街に行って揃えたいなぁ。お買い物に冒険者登録。今からとっても楽しみだ。

「(我に取りに行かせればいいものを……)」

「何? 何か言った?」

「なんでもない。そんなことより全身ドロドロではないか……ほら、乗れ」

呆れたような顔で私の前に伏せるアーク。

何か言われたみたいな気がしたけど気のせいだったみたい。妄想トリップしてたから空耳かもね。

「いや、そんなことしたらアークが毒を受けちゃうよ」

「その程度の毒、我には効かん。さっさとしろ。それにカゴを渡せ」

「わ、分かった」

有無を言わさぬ雰囲気に押されて、私はアークにカゴを渡し、背中によじ登った。

アークが走り出す。

「アーク、森の中をこんな速さで走れるなんて凄いね!!」

「我に掛かれば、この程度容易い」

「凄いから撫でてあげるね!!」

「やめろ!!」

崖を駆け上っていくときにも思ったけど、アークは凄い。障害物のある森の中なのに、一切ぶつかることなく軽やかに進んでいけちゃうんだから。

そして、あっという間に綺麗な沢のほとりの傍へ。

「もうすぐ暗くなる。今日はここで野宿したほうがいいだろう」

「そうだね」

アークの言う通り、辺りはオレンジ色に染まっている。街の門は日が落ちる頃には閉まってるはず。

それに、処刑されたとは言え、どこに私の姿を知っている人がいるか分からないんだよね。

ほとんど軟禁状態だったにしろ、家族や元使用人とかに会っちゃう可能性もある。身バレを避けるなら、入る街は遠ければ遠い方がいい。

それなら今日無理して近くの街に行くより、野営して明日別の街に向かう方が良いよね。アークもいるから他のモンスターも寄ってこないだろうし。

「お前は体と服を洗ってこい」

ぼんやりしていると、アークが私を促す。

「分かった。ありがとね」

「ふんっ」

私は服を脱いで川に入り、薬草採集の時に見つけた石鹸みたいに使えるクリーン草で、全身と服の汚れを落とし始めた。