軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第35話 不穏な気配

――パチパチッ

マリンダさんと見張りを交代してから焚き火をジッと見てる。

『火の何がいいんだか』

隣で寝そべるアークは呆れた声色で念話を送ってくる。

YoTTube(ヨッチューブ) で焚き火だけをずっと流している動画があったけど、病院のベッドで寝てる時はその良さが分からなかった。

でも、今目の前で焚き火を見ていると、なんだか吸い込まれそうな、それでいて優しく包み込んでくれるような、そんな良さがある。

それに、一秒として同じ炎がなくて、いくらでも見ていられそう。

だけど、焚き火に集中しすぎず、音、匂い、空気にも気を配って周囲への警戒へも忘れない。

『あの人間は特に問題ないぞ』

『ありがと』

アークからの報告を受けて仲間の状態も確認する。眠気は寝ようとしなければ、全くないから問題なし。

時折、薪をくべながらぼんやりと火を見続けた。

しばらくすると、周りが明るくなってきているのに気づいた。

「もうそんなに時間が経ってたんだ」

顔を上げると、空が白んでいて、山の向こう側が明るくなってきている。そういえば、日の出を見ることなんて今まで一度もなかった。

私は立ち上がって体を伸ばす。

陽が昇ってくるのを今か今かと待ち受けた。

「わぁああああっ――」

そして、山から太陽が顔を出した瞬間、世界が一気に色づいていく。まるで、モノクロのアニメがフルカラーになっていく過程を見ているみたい。

世界にはこんなに綺麗な瞬間があるんだ……。

私は、太陽が完全に昇るまで、その光景に見入ってしまっていた。

「おはよう」

「おはようございます」

起きてきたマリンダさんは、そのまま顔を洗いに川へ。

保存食で朝食を済ませ、荷物をそそくさとまとめ始める。他の野営グループも起きていてすでに荷造りを始めていた。

「行こうか。忘れ物はないかい?」

「はい。大丈夫です」

私たちは一足先に出発する。

それからは特になんの問題も起こることなく、穏やかな道のりだった。

「見えてきたぞ」

「あれが村ですか!!」

そして、お昼前には村が見えてくる。

YoTTubeで見た日本の田舎の風景みたいなものを思い出して興奮してきた。

「なんだか様子がおかしいな」

懐かしさを感じていると、マリンダさんが真剣味を帯びた声色でポツリと呟く。

「どうしたんですか?」

「この時間なのに、外に人がいない。本来ならとっくに畑仕事でもしている時間だ」

「なるほど」

この世界の常識も怪しいから気づけなかった。もう少し常識を勉強するべきかも。

「アークがいるから大丈夫だと思うけど、警戒しておきな」

「分かりました」

何が起こってるか分からないけど、周囲を警戒しながら先へと進む。

しばらくしてようやく村の人を発見した。

「こんにちは」

今回の依頼は私が受けたもの。一応村人との対応は私がする。

「あ、あぁ」

「支援物資を持ってきたんですけど、どこに持っていったらいいですか?」

「本当かい!? それなら村の中央の村長の家にいっとくれ」

「分かりました」

支援物資と聞いて村人は目を輝かせた。

なんだか服がボロボロで頬がこけている。病人だったころの私みたい。もしかしたら、あまり食べられてないのかも。

改めて見渡すと、村に暗い雰囲気が漂っている。外から見えた雰囲気とは真逆だ。それに、ところどころ畑が荒れてる。もしかしたら何か関係があるのかも。

私たちは村の中でも、ひと際大きな家に向かった。

「こんにちは」

家の前にいたご老人に声をかけると、暗い声色で返事をする。来る途中で見かけた人たちと同じように痩せこけていた。

「……お嬢さん方は?」

「私は、支援物資の配達の依頼を受けた、アイリスと言います。村長さんですか?」

「おおっ、なんと!! それはそれは……あぁ、あ、は、はい、私が村長です」

さっきの村人同様に村長さんも支援物資と聞いて目の色を変える。

やっぱりこの村では何かが起こってそう。

「どこに下ろせばいいですか?」

でも、今はひとまず依頼の完遂を優先する。話を聞くのはそれからだ。

「いえいえ、それくらい私どもでやりますよ」

「いえ、多分私がやった方が早いので」

超健康チートがあるので、このくらいの荷物なら私がやった方が早い。

「そ、そうですか? それでしたら、あそこの倉庫にいれていただけますか?」

「分かりました」

村長さんは半信半疑みたいだけど、私の見た目が華奢だからしょうがない。

高床式倉庫みたいな建物を指さされたので、馬車を傍に寄せて倉庫の扉を開けた。

「これは……」

「どうやら、マズい状況のようだね」

私とマリンダさんは中を見て絶句する。

ほとんど何も入ってなかった。それは備蓄が何もないってこと。

かなり状況がひっ迫しているみたい。すぐに対応しないと村が危ない。

私は荷台に載せられていた支援物資を全て倉庫の中に詰め込んでいく。

「おおっ……これでしばらくは生きていける」

「ありがたやありがたや……」

仕事中に何人かの村人がやってきて涙を流しながら喜んだ。

相当辛かったんだろうな。

「ありがとうございました」

「いえ、村の雰囲気が暗いみたいですが、いったいどうされたんですか?」

村長さんの所に戻り、仕事の完了処理を済ませた後で尋ねる。

「実は――」

村長さんは静かに語り始めた。