軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第36話 従魔無双

「そういうことだったんですね……」

「はい……」

村長さんの話を聞いたところ、今年は不作の上に、どういうわけか最近モンスターまで襲ってくるようになったとのこと。

そのせいで、ただでさえ不作で作物が少ないのに、食い荒らされてほとんど作物が収穫できない状態らしい。

おかげで食べられる物もなくなって、いよいよ、という場面で私たちが到着したんだとか。

なんとか間に合ってよかったと思う。

でも、支援物資を渡したとしても、モンスターの脅威は消えてないし、不作の原因も分かってないし、その対策もできてない。

どうにかしなきゃ、元の木阿弥になるだけ。

「悪いけど、アタイらの仕事はここまでだ。アイリス、帰るよ」

「え?」

これからこの村をどうやって助けようかと考えていたところで、突然マリンダさんがそんなことを言い出した。

「忘れたのかい? 私たちが受けたのは支援物資を村へ届けることだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「それは……」

そうだ、なんだか流れで助けようと考えたけど、それは依頼とは関係ない。

「それとも何かい? あんたらはアタイらにモンスターを討伐してくれとでも言うつもりかい? タダで」

「い、いえ、滅相もございません。ただ、聞かれたので答えたまでです」

「そうかい。それなら、アタイらがこのまま帰っても文句はないね?」

「は、はい……それは勿論……」

「だ、そうだ。帰るよ、アイリス」

マリンダさんは村長を睨みつけると、私の手を引いて馬車の方に向かおうとする。

「……りません」

でも、私はその場から動かず、マリンダさんの手を振り払った。

「なんだって?」

「帰りません!!」

だって、このまま見て見ぬふりはできそうにないから。

マリンダさんが不機嫌そうな顔だ振り返る。

「あんた、分かってるのかい? 依頼とは何も関係ないんだよ? タダ働きだ。冒険者は報酬を対価に依頼を受ける職業だ。なのに、依頼も受けずにタダでやるってことは冒険者が軽んじられかねない。それに、一回タダでやったら、次もここまでやってくれるんだ、なんて勘違いを生むかもしれないよ?」

「……それでも、だとしても、目の前で死ぬかもしれない命を放っておくことは、私にはできそうにありません」

命はたった一つしかないとっても大切なもの。確かにこの世界では、地球よりも命の価値が軽いのかもしれない。

だとしても、私にできることがあるならしたいと思う。

だって、一度死んだ私は、命の大切さを身に染みてるから……。

アークならモンスターの撃退はできるはず。最悪、私が戦えばいい。

「……」

お互いに無言で睨みあう。

「はぁ……分かった、分かった。アタイの負けだ」

しばらくそうしていると、マリンダさんが降参とばかりに両手を上げた。

まさか折れてくれるなんて思わなかった。

「いいんですか!?」

「ただし!!」

そう言って、マリンダさんは村人たちを睨みつけながら指を突きつける。

「いいかい。今回は、この嬢ちゃんがとんでもないお人好しだから、《《たまたま》》引き受けたんだ。他の冒険者が同じように対応してくれると思ったら大間違いだよ。それが普通なんだ。いいかい、それをくれもぐれも肝に銘じておきな。分かったかい?」

村人たちは青い顔になって顔をぶんぶんと縦に振った。

そうか、マリンダさんは憎まれ役を引き受けてくれたんだ。ホントは自分も助けるつもりだったんだと思う。

だけど、わざわざ私に教えるために、村人からの印象が悪くなるにもかかわらず、嫌な役目を買って出てくれたんだ。

本当に優しい人だ。

この依頼についてきてくれたのが、マリンダさんで心から良かったと思う。

「それで……どうするつもりだい?」

村人に釘を刺したところで、マリンダさんが私に向き直る。

「それは――」

「助けてくれぇえええ、モンスターの群れが襲って来たぞぁああっ」

私の考えを言おうと思った所で、突然大きな叫び声が響き渡った。

場に緊張が走る。

声がした方を見ると、村人たちが、こっちに向かって必死に走ってきている。

その後方には、十頭以上の猪型のモンスターが、砂煙を上げながら突進してきていた。

「あれは、ファングボアの群れかい」

「ファングボア、ですか?」

「あぁ、本来群れを作るようなモンスターではないはずなんだが……」

マリンダさんが、異常な状態のファングボアの群れを見て少し考え込む。

「それよりもあの人を助けないと」

「っと、そうだね。どうする? 私がやるかい?」

「それには及びません。アーク、お願いできる?」

私が引き受けたのに、マリンダさんに何かさせるわけにはいかない。

『ふんっ、昼に食べたばかりだが?』

アークが何か言いたげに念話で返してくる。

対価を寄越せってことだ。

『はいはい、分かったよ!! お腹いっぱいになるまで宿のご飯つけてあげるから!!』

『そこまで言うのなら仕方あるまい。我が一掃してやろうではないか』

我が意を得たり、と言わんばかりに口端を吊り上げるアーク。

はぁ……またお金が減りそうだけど仕方ないよね。

『じゃあ、お願いね』

『心得た』

「わふっ」

契約成立。

アークが、解き放たれた矢のようにファングボアの群れ目掛けて走り出す。

『な!?』

その速度に、村人たちが目を見張った。

「ウォオオオオオンッ!!」

その直後、アークがまるで稲妻のように群れの中を駆け抜けた。

――ブシャァアアアアッ!!

アークが立ち止まってこちらを振り返ると、ファングボアの群れは全て、その場に崩れおちる。

さっすが、アーク。一瞬だったね!!

「ファングボアは私の従魔が退治しました!! もう安心して大丈夫です」

村人たちに向かって笑い掛けると、全員が突然大声で叫んだ。

『はぁあああああああっ!?』