作品タイトル不明
第156話 敗北の原因
「なんでそんなことになってるの!!」
『いだだだだだっ、やめろ、やめるのだ!!』
アークの顔を掴んで上下左右に引っ張る。
悪い狼の顔はこうしてやる!!
金貨五万枚は渡したチップの百倍。何をどうすればそんなことになるの!?
「しばらく反省してなさい!!」
「ウォオオオオオオンッ!?」
私は強めにデコピンをしておいた。
アークは頭を抱えて床を転げ回る。
「ピピ~」
エアがチップをたくさん持った警備員を従えて私たちのところにやってくる。
あの後もずっと勝ち続けたみたいだね。
「エア、おかえり。満足した?」
「ピィ!!」
エアは嬉しそうに私の周りをクルクルと飛んで、腕の中に収まった。
やっぱりエアは可愛すぎるなぁ。
顔を擦り寄せてしばらくの間モフモフふわふわの体を堪能する。
すぅ~、お日様の匂いと最高の触り心地……ほんのりやさぐれた気持ちが癒される。
「よかったねぇ。あっ、聞いてよ、アークが金貨五万枚分も負けちゃったんだって」
「ピピピ!?」
「だよね、信じられないよね」
エアが愕然とする。
今まで見た表情の中でも一番衝撃を受けてるかもしれない。
「ピヨピヨ」
エアが自分のチップを私の前に差し出した。
「え、いいの? それエアが勝った分だよ? 自分で使っていいんだよ?」
「ピピッ!!」
私の言葉を聞いてもエアは「使っていいよ」と鳴く。
良い子すぎて、思わずギュッと抱きしめて頬ずりしてしまった。
「ありがと。エアは偉いねぇ。アークに爪の垢を煎じて飲ませてあげたいよ」
こんなにいい子に育つなんて、いったいエアは誰に似たんだろう。
未だに床を転がっているアークを見つめる。
アークではないのは確かだ。
「マスター、私の分もお使いください」
「いいの?」
レインも同じようにチップを渡してくれる。
「はい。お金に興味はございませんし、マスターの役に立つことこそ私の本懐です」
「分かったよ。料理で返すね」
せっかく二人が稼いだチップだし、各々に使ってもらおうと思ったけど、そこまで言うのなら使わせてもらうことにしよう。
「楽しみにしております」
料理の話をした途端、表情は変わらないのに嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
《《二人には》》飛びきり美味しい料理を作ってあげよう。
ひとまず、どのくらい稼いだのか分からないので従業員さんに確認してもらった。
「これで足りそうですか?」
「はい、むしろ多いようです」
「良かったぁ……」
アーク以外が爆勝ちしていたおかげでどうにか事なきを得た。
借金を背負ってどこかの貴族に買われて、目も当てられないようなひどい扱いを受ける奴隷生活が幕を開ける!!
そんな物語にならなくて本当に良かった。
ひとまず、ツケてた分を全部清算し、残った分で気を取り直して遊ぶことにする。
今度は私はアークと一緒にポーカーをする。
お目付け役だ。目を離すとまたやらかすかもしれないからね。
それに、アークがあれだけコテンパンに負けた理由が気になった。
「ウォンッ」
その理由はすぐに分かることになる。
アークが新しいカードを受け取った後、自分のカードを見て掛け金を吊り上げた。
私も役が完成したので掛け金を上げる。
そして最後までお互いに譲らず、カードを見せ合って勝負となった。
勝負は私の勝ち。
「ウォウォウォウォオン!?」
アークは一つも役が揃っていなかった。
「なんで分かったんだ!?」って顔をしている。
そりゃあ、分かるよ。だってアークは表情にはあまり出ないと思ってるかもしれないけど、尻尾があまりに素直な反応をしているんだもの。
良いカードがくれば尻尾が激しく動き、よくない時はしょんぼりと垂れ下がる。
それで気づくなっていう方が無理な話だ。
他のお客さんたちもクスクスと笑っている。
自信満々なのが面白くて完全にカモにされてしまったんだろうな。
何度か試してみたけど間違いない。
『なぜだ!? なぜ、我は勝てぬのだ!?』
アークは皆から集中砲火されて一瞬で退場することになった。間違いなく、さっきも同じような展開になったに違いない。
ルールを理解するのに時間がかかったけど、ポーカーは駆け引きが面白い。レインが圧倒的なポーカーフェイスで他のVIPプレイヤーを叩きのめしていた。
そのおかげでバッカーノでの初日は勝ちで終了。
とても楽しむことがことができた。
「モンスターレースやコロシアムも見ものですよ」
「カジノ以外にもギャンブルがあるんですね」
「そりゃあもう、ここはギャンブルの街ですから」
「そういえば、そうでしたね」
それから、ポーカーを一緒にやった人から他の遊びの情報を入手。
「どちらもプレイヤーとして参加することもできますよ」
「へぇ」
前世では競走馬を題材にした作品や、コロシアムで戦う作品はよく見かけた。
どちらも面白そう。
大オークションの日程はまだ先なので、明日以降に行ってみようかな。
カジノで遊んでいる内に迷惑を掛けたアークに対する罰を思いついた。
食いしん坊のアークにはこれ以上のお仕置きはないはず。
「アークはしばらく私の料理は食べるの禁止ね」
「なんだと!?」
アークは目を大きく見開いた。