作品タイトル不明
第143話 覚醒
カプセルは繭に似た形をしていて、不可思議な模様が描かれている。斜めに傾いていて、カプセルの上部の透明な部分から中が見えるようになっていた。
近づいて顔を近づけて内部を覗き込むと、人形めいた整った容姿を持つ少女が入っている。
「眠ってるのかな?」
ただ、目を瞑っているし、呼吸している様子もなくて、生気を感じない。それに、内部が薄暗くて、まるで電源が落ちているみたい。
いかに高度な技術があったとしても、光も熱も駆動音も一切ないというのはおかしいと思う。
もしかして、中の人は死んじゃってるのかな……。
『■■■■■■■■』
一通りあちこち見て回ってから、より詳しく調べるためにカプセルに触ったら、音声とともにカプセルの前に小さなホログラムが浮かび上がった。
スマホの充電不足みたいなマークになっている。このカプセルはエネルギー不足を起こしているみたい。
「なんだこれは」
「多分エネルギーが足りないってことかな」
「ピピィ?」
「このカプセルもお腹が空いてるってこと」
「ピピッ!!」
私の説明を聞いてエアが納得顔になる。
とにかく中の少女が生きてるにせよ、死んでるにせよ、エネルギー不足を解消できれば、何かが変わるはず。
死んでいたら、どこかに埋葬しよう。
ただ、肝心のエネルギーがなんなのか分からない。
この世界の魔道具は魔石や魔力で動いている。古代文明も同じように動力源にしていたとすれば、試してみる価値はある。
だけど、どうやって充電(?)充魔(?)すればいいんだろう。
「あっ、ここに入れろってことかな?」
ホログラムが変化して、矢印でカプセルの一部を指し示した。そこだけ黒くなっていて、その上で手のひらのホログラムが点滅している。
ここに手を置いて魔力を流し込め、という指示に見える。
私はホログラムに従って黒い場所に手のひらを置き、魔力を流し込んだ。
『■■■■■■■■』
音声が流れると、電池マークが充電中みたいなイメージに変わり、ゲージがグングン増えていく。
「とんでもない勢いで魔力を注ぎ込んでいるが、なんともないのか?」
アークが私の隣に座り、手のひらを見ながら呟いた。
「え? うん、特には」
「エアの卵を手に入れた時以上だぞ? 本当になんともないのか?」
「うーん、ないね」
抜けていく分、補充されるのでなんともない。
「やはり、お前を人間と呼ぶのは無理があるであろう」
「そんなことないよ、私は人間だよ」
アークがじっとりとした目で顔で私を見つめるけど、もう気にしないことにした。
気にするだけ無駄だからね。
『■■■■■■■■』
音声が聞こえたと同時に、カプセルの電源が入ったように光が灯り、内部がハッキリと見えるようになった。
エネルギーが満タンになってカプセルが起動したみたい。
──プシュー!!
空気が抜けるような音と白い煙が吹き出し、カプセルの前面が少し浮き上がる。私はすぐにその場から距離を取った。
カプセルの前面が扉のように開き、中から裸の女の子が姿を現す。
よく見ると、所々に繋ぎ目や不自然な切れ目が見えた。この子はアンドロイドに近い人型ゴーレムなのかもしれない。
少女の瞼がゆっくりと開いて私を捉え、虹彩がカメラのレンズのようにピントを合わせる動きを見せる。
「■■■■■■■■」
少女が何か呟くと、頭から足先まで光が照射された。まるでスキャンでもされたかのよう。
二人の人間が額をくっつけているシルエットがホログラムとして浮かび上がる。どうやら、少女と額をくっつけろ、ということらしい。
仕方ないので、指示に従って少女に近づき、その額に私の額をくっつけた。
「■■■■■■■■」
少女が何かを言ったあと、その瞳の中を無数の文字列が流れ、体が仄かに発光し始める。
「マスター登録完了、使用言語習得完了。起動に成功しました。マスターご指示を」
しばらく待っていると、光が収まり、突然少女の話す言葉が私たちと同じものになった。
「マスターっていうのは私のこと?」
「はい。その通りです」
魔力を流し、額を合わせた人がマスターになる仕組みなのかな。
「あなたは何者なの?」
私は気になったことを投げかける。
「私は、マスターの身の回りの世話などの様々なサポートを目的として造られた人型ゴーレム『メイドフェアリー』です。道具の作成に秀でています」
「そうなんだ。どうして言葉が分かるようになったの?」
「マスターの記憶を読み取り、使用言語を把握しました」
「この施設は何?」
「エラー。情報がロックされています」
「この街はなんなの?」
「エラー。情報がロックされています」
色々質問してみたけど、目の前の少女が人型ゴーレムだということ以外ほとんど分からなかった。
「これからどうしたいとかある?」
「できれば、マスターの側にお仕えさせていただきたいですが、ご指示に従います」
ちょっと得体の知れないところはあるけど、マスター登録されてしまった以上、この子をこんなに寂しいところに放っておけない。
遺跡も大体見て回ったし、そろそろいい頃合いだ。
「アーク、エア、連れて行ってもいい?」
「我は美味いものが食えればそれで構わん」
「ピピィ!!」
二人の許可も得られたので、私は人型ゴーレムを連れて帰ることにした。