作品タイトル不明
第125話 すごく惜しい!!
「こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
店員さんに案内されて、すぐ隣のレストランにやってきた。
店内は、いかにも古いヨーロッパ風の雰囲気を残しながら、それでいて現代的な一定の規格に沿っているような、整然さを感じさせる造りになっている。
結構席が埋まっていて、それなりに繁盛しているみたい。
店員さんがレストランの店員に何事かを話すと、バトンタッチして、窓際の席に通された。
「いらっしゃいませ。お話は承っておりますので、料理はご自由にお選びください」
「分かりました」
メニューを受け取って開いてみる。
ポーククアリ、ビーフクアリ、チキンクアリなどのお肉別のカレーや、香辛料を使った様々な料理が並んでいた。
他の料理も食べたいところだけど、何はともあれ、今はカレーが食べたい。口がカレーになっているので、それ以外受け付けそうにない。
「ご注文はお決まりですか?」
様子を窺っていた店員さんが、目ざとく注文を取りにやってくる。
「はい、ポーククアリをお願いします」
「かしこまりました」
ひとまず、私は豚肉が一番好きなので、豚肉のカレーを頼んだ。
「それと、料金を払うので、外にいる従魔にも食べさせてもらうことはできますか?」
「はい、承らせていただきます」
私だけ食べるのは悪いので、アークとエアの分も欲しい。アークが沢山食べるので多めに頼んでおこう。
「それなら、クアリをそれぞれ十人前ずつもらえますか?」
「え?」
店員さんが目を丸くする。
流石に三十人分ともなると、ダメかな?
「あ、ちょっと多すぎますかね?」
「お、おそらく問題ないかと思いますが、確認して参ります」
「よろしくお願いします」
店員さんはお辞儀をすると、慌ててお店の奥に消えていき、すぐに戻ってきた。
「問題ございませんので、ご準備いたします」
「ありがとうございます。外に狼と鳥の雛がいるので、それぞれのクアリ一人前ずつを鳥の雛に、残りを全て狼の従魔に出してもらえますか?」
「承知しました。従魔は裏庭にご案内してもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です」
アークたちの分もちゃんと確保できたので、これで私も心置きなくクアリを楽しむことができる。
『アーク、エア、これからレストランでクアリって料理を食べるんだけど、アークたちの分も頼んだから、そっちに行く店員さんの指示に従ってね』
『ふんっ、仕方あるまい。我は寛大ゆえ指示に従ってやろう。断じて食べ物のためではないないからな』
『はいはい、分かってるよ』
『ピピィッ!!』
アークたちに念話して状況を説明しておいた。これで突然店員が行ってもアークがおかしなことをしたりしないはず。
「お待たせしました」
しばらく待っていると、料理が運ばれてきた。
「あぁ、そうなんだ……」
料理を見て、ガックリしてしまった。
なぜなら、白い粒々がなかったから。出されたのは、器に入ったカレーと二つの大きめのパン。
クアリ料理と聞いてカレーライスを想像していた私は、すっかり騙された気分になってしまった。せめてついてきたのがナンだったらもう少し喜べたのに。
それに、お米があったら、おかずに合うし、もっといろんな料理が作れるようになったのに、残念で仕方ない。
「どうかされましたか?」
態度に出てしまったのか、店員さんが不安そうな顔で尋ねてくる。
「いえ、大丈夫です」
「さようですか。それではごゆっくりお召し上がりください」
「ありがとうございます」
でも、これはお店のせいじゃない。勝手に期待した私が悪い。気を取り直して目の前で湯気を立てているクアリに集中する。
日本で嗅いだことのある匂いよりも、もっとスパイシーでピリッとした香りが漂っている。とても食欲をそそる匂いだ。
それに、私が知っているよりもとろみが少なくなくてスープっぽい。
「いただきます」
カレーをスプーンですくって口に含み、しばらく味わった後、呑み込んだ。
「……」
私は思わず、黙ってしまった。
だって、私が食べたことのあるカレーとは似ても似つかない味だったから。
マズくはないけど、美味しいわけでもない。
日本風に寄せていないにしても、ただピリ辛なだけで、旨みやコクが足りないカレーのスープを飲んでるような気分になった。
カレーだけど、カレーじゃない、絶妙に惜しい感じ。
まさかここまで違うなんて……。
『これがクアリか? おまえが期待していた割には、なんとも言えぬ味だな』
『ピピィ……』
愕然としていると念話が届く。アークとエアも私と同じような感想を抱いていた。
私の舌だけがおかしいわけじゃなさそう。
『これがクアリだと思わないで。今度私が本当のクアリを作ってあげるから』
『そうか、それではこの前の働きの報酬はそれで返してもらおう』
『分かったよ』
微妙な気分になりながらも、カレーもどきを完食した。
なんとも言えない気分のまま水を飲んでいると、ふと声をかけられた。
「アイリスさん、少々よろしいでしょうか?」
顔を上げると、クアトロ商会で別れたばかりのエリアが立っていた。