軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第124話 散財

日本にある香辛料専門店ならこんな雰囲気かもしれない。

無数の香辛料に目を奪われていると、身なりをしっかり整えた、三十代くらいの男性店員が私たちを出迎えた。

「これはこれは、エリアお嬢様ではございませんか。お久しぶりでございます」

「えぇ、御無沙汰しておりますわ」

「本日は商会長はいらっしゃらないので?」

「今回は私だけですわ。父に頼まれましたの」

「そうでございましたか。それでは、こちらへどうぞ」

お互いに知り合いらしく、とんとん拍子に話が進んでいく。

「その前に、こちらの方に香辛料を見せていただけますか?」

「こちらは?」

「Cランク冒険者のアイリスです。よろしくお願いします」

「そのお年でCランクとは大変優秀でいらっしゃいますね。私はクアトロ商会のトルマと申します。以後お見知りおきを」

エリアに促され、自己紹介すると、トルマさんは芝居がかった仕草で頭を下げた。

「アイリスさんにはミノスからイードゥまで護衛をしていただいたんですの。香辛料に興味があるというのでお連れしたんですわ」

「そうでございましたか。それはありがとうございます。誰か!!」

トルマさんが声を上げると、若い女性の店員がやってくる。

この女性店員も頭の先からつま先まできちんと整えられていて、教育がきちんと行き届いているのを感じた。

「トルマ様、どうされました?」

「アイリス様が香辛料をお求めだそうだ。ご案内して差し上げて」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

「よろしくお願いします」

私は女性店員の案内に従い、後をついていく。

エリアたちはトルマさんと一緒にお店の奥に消えていった。

「どのような香辛料をお求めですか?」

「クアリ(?)に使えそうな香辛料があれば欲しいんですけど……」

「クアリにご興味がおありで?」

「はい」

クアリ――カレーはあるにしても、味はスパイスによって千差万別。

匂いから察するに、イードゥのカレーは、どちらかというとスパイシーなカレーだ。私が想像している日本のカレーとは多分少し違う。

ここから私の知る日本のカレーを作るには、試行錯誤が必要になると思う。

幸い YoTTube(ヨッチューブ) でスパイスから作る日本のカレーの作り方を見たことがあるし、こっちの食材もある程度分かってきたからきっと大丈夫。

「それでしたら、この辺りがよく使用される香辛料になります」

「できれば、全部まとまった量が欲しいんですが」

「えっと、それなりに値が張りますが、大丈夫ですか?」

店員さんは目を丸くした。

私みたいな小娘は、お金を持っているようには見えないから当然の反応だよね。

でも、護衛依頼とかミノスでこなした依頼報酬とか、モンスターの買い取りとかで懐は結構温かい。

相当高くない限りは大丈夫だと思う。ただ、中世ではコショウが金と同じくらいの金額で取引されていたと聞いたことがある。

ちょっと心配になってきた。

「ちなみに、いくらくらいですか?」

「そうですね、まとまった量となると、一種類で金貨数十枚程になります」

「あっ、それくらいなら大丈夫です」

確認すると、思ったより安くてホッとする。

多分、原産地っていうのがかなり大きいと思う。これから何度も作ることになると思うから、ここでガッツリ買い込んでおこう。

「かしこまりました。それではご用意させていただきます。少々お待ちください」

「分かりました」

店員さんが店の奥に消えたので、私は香辛料を見て回る。

本当にいろんな種類がある。全部で百種類を超える香辛料が並んでいた。カレーに使わない香辛料も気になるかも。七味唐辛子とかも作ってみたいし。

「お待たせしました」

店員さんが、沢山の人を連れて戻ってきた。全員が麻袋を両肩に背負っている。そして、その麻袋が私の目の前に積み上がっていった。

目の前に麻袋の山ができあがる。一つの麻袋は数十キロはありそう。分かりやすいように麻袋にどの香辛料が入っているのか書いてくれている。正直、助かる。

結局、カレー用の香辛料だけで金貨で二千枚くらいになった。

これで二千万かぁ。日本円にすると、とんでもない金額だけど、いつでも食べられるようにするためだからしょうがないよね。

これで試作して私好みのカレーを創り上げてみせる。

ついでの他の香辛料も色々買い込んだ。めっちゃ散財してしまった。オークションのためにお金を貯めるとか言ってたな。あれは嘘だ。

「クアリ食べたいんですけど、隣のお店に行けばいいですか?」

「もしよろしければ、無料でご提供させていただきますよ」

たくさん買ったおかげか、元々良かった対応がさらに良くなった。

店員さんもホクホク顔だ。

でも、さすがにタダで食べさせてもらうのは良くないと思う。

「いやいや、それは申し訳ないですよ」

「いえいえ、沢山ご購入いただきましたから。お気になさらず」

「……そうですか?」

「はい、ぜひぜひ」

「それではお言葉に甘えさせてもらいます」

でも、店員さんのニコニコ顔に抗うことができず、隣の併設されているというレストランにお邪魔することになった。