作品タイトル不明
第126話 観光
「あ、エリア。もういいの?」
「はい。終わりましたわ」
どうやら商談は終わったらしい。
「そうなんだ。座ったら? カリヤさんも」
「失礼しますわ」
「失礼します」
二人は私の対面に腰を下ろす。
「それで、どうしたの?」
「あのままお別れというのも寂しいので、ご一緒に観光などいかが?」
「いいね。でも、二人はご飯は?」
元々街を見て回ろうと思っていたから否やはない。ただ、この街に着いてそのまま商談に行ったのなら何も食べていないはず。
「観光ついでにいただこうかと」
「分かった。アークたちも食べ終わってるみたいだし、いつでも大丈夫だよ」
「それでは、時間がもったいないですし、すぐにいきましょうか」
私たちはレストランを出て、アークとエア迎えにいって、歩いて街を見て回ることに。
大通りは真ん中に馬車用の道、その両脇に屋台や露店、さらにその外側に歩行者用の道、そして、その脇に商店が立ち並んでいる。
改めて行き交う人たちを見ると、いろんな場所の商人らしき人が多い。服の特徴が全然違っていて凄く分かりやすい。香辛料を買い付けに来ているのかな。
大通りを歩きながら、ふと気になったことがあってエリアに尋ねる。
「イードゥって香辛料以外にも名所みたいな場所ってあるの?」
「強いて上げるならこの大通りですわね。二つ目独立都市の港町ヴェルナスの方面に一直線に通り抜けられますし、こんな風に屋台や露店が立ち並ぶの姿はなかなか見られませんわ。ラビリス共和国とは気候が大きく違うので、扱われている野菜や果物、それに工芸品なんかが見所ですのよ」
「なるほど」
確かにまっすぐに伸びたこの道の向こうにはそのまま城門が見える。街の中心部にはいろんな建物が立っている街が多かったけど、この街は違うみたい。
「特に有名なのは、バーナ、パル、マゴリンなどの果物ですわね。後は、南国ならでは衣装やヴェルナスから流れてくるガラス工芸品も人気があります」
「へぇ〜、面白そう」
「それでは、屋台から回りませんこと?」
「いいよ」
エリアとカリヤさんと一緒に屋台を冷やかしながら歩く。
「あれがこの辺りの名物のスパイシー肉串ですわ」
「肉串はどこにでもあるんだね」
「まぁ、そうですわね。ただ、胡椒をふんだんに使った肉串はここ以外で食べるのは難しいと思いますわ」
カリヤさんがエリアの代わりに店主に注文する。
その光景を見ていると、アークから念話が飛んできた。
『我にも寄越すのが筋ではないか?』
『さっき食べたばかりでしょ?』
ついさっきカレーを二十七人前は食べたはず。
『あの程度。腹の半分も満たされぬわ』
『ピピィッ』
アークがぐちぐち言う一方でエアが『食べたい』と鳴く。
『エアみたいに素直に頼めば可愛いのに』
『我は災厄ぞ。可愛げなどいらぬ』
『全く……減らず口ばっかり叩いて』
なんだかんだ憎めないアークとエアの分も購入して皆で肉串を食べた。
カレーとは違い、胡椒を主軸としたピリッとした味付けが肉の臭みを消し、旨味を引き出していてとても美味しい。
胡椒を使っている上に、かなりボリュームがあるにもかかわらず、とても安くて驚いた。
それも、沢山の商品が飛び交う交易都市ならではなのかもね。
『まぁ、悪くないな』
『ピピッ』
アークとエアもご満悦だ。
「久しぶりに食べましたが、美味しいですわね」
「えぇ、本当に」
「美味しいね」
エリアは私と違ってお上品な感じに肉串を食べている。おかしい。私って一応貴族令嬢だったはずなのに、明らかにエリアとカリヤさんの方がお貴族様してる。
ほとんど教育を受けた覚えなんてないし、まぁ、いっか。
「次の名物は南国の果物を使ったジュースですわね」
「それは美味しそうだね」
肉で油ぎった口の中をスッキリさせるのによさそうだ。
「私はマゴリンのフルーツジュースにしますわ」
「同じものを」
「私はパルにしようかな」
『我はバーナにしよう』
『ピピッ』
今度はアークたちもちゃっかり混ざってくる。エアは私と同じパルのフルーツジュースを選んだ。
「あ、美味しい」
「サッパリしますわね」
「食後に丁度いいですね」
私が飲んだジュースはパイナップル味のジュースだった。お見舞いに来てくれた親戚がもってきてくれたのを食べたことがある。
パイナップルはこの世界ではパルというらしい。エリアが飲んだジュースは何味なんだろう。
「飲みたいんですの?」
ジッと見つめていたら、エリアが勘違いしてしまった。
「いや、そういうわけじゃ」
「ふふっ、それじゃあ、お互いに一口ずつ交換ということにいたしましょうか」
エリアが自分のコップを差し出してくる。
「……そうだね」
勘違いとも言えず、私はコップを交換してジュースを飲んだ。
あぁ、マゴリンってマンゴーのことなんだ。
マゴリンジュースはマンゴーの味がした。
そういえば、こうやって誰かと飲み物を交換し合うのは初めてだ。アニメや漫画でたまに見かけて少し憧れていたけど、今それが叶った。
枕投げもそうだったけど、エリアと一緒に旅していると修学旅行に来てるみたいで楽しい。
「これ、可愛いね」
「そうですわね」
「アイリスさんにはこれが似合いますわ」
「ちょっと派手過ぎない?」
「そんなことありませんことよ」
それから私たちは工芸品を見たり、この辺りの服を買ったりしながら街を散策した。
「それでは、本日の宿に参りましょうか」
気がつけば、すっかり夕暮れ。そういえば、うっかり宿を取るのを忘れてた。
「私、取ってないけど……」
「これで最後ですもの。一緒に泊まりませんこと?」
「いいの?」
「もちろんですのよ」
エリアがニッコリと笑う。
「ありがとう!!」
好意の甘えて同じ宿に泊まらせてもらうことにした。