軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

319話 魔族とは、図体のデカい子どもです

「むむぅ……」

うなったら、ソードが笑った。

「こういうやつだ。本気にするな」

リーンが呆気にとられている。

「魔物を飼っているのか? テイマーなのか?」

リーンの問いに、ソードと私が首を横に振った。

「違う。魔物と意思疎通が出来るというだけだ。賢い魔物は思念を魔素や音波に乗せて意思を飛ばせる。受信側が受け取る魔術を使えるか否かなのだ。私はもちろん使えるので、会話をして、安全を保証する代わりにミルクを放出してもらったり、卵を産んでもらったり、糸を排出してもらったりしているのだ。……お前は会話出来ないのか? 屋敷で魔物の世話係に就任した王国側の勇者は、そんなスキルを持ってるぞ? 楽しげに会話してるぞ? 魔物にじゃれつかれて遊ばれているぞ?」

リーンは呆気にとられたまま首を横に振った。私はあごに手を置いて思案する。

「ふーむ。王国側の勇者の固定スキルかな? まぁ、まるで言葉が違う場所からいきなり連れて来られるんだからな、『この世界を創造し異世界からの召喚魔術という概念を作った』神か何かが、初心者セットとしてスキルに加えてるだろうな」

ソードが私を呆れた顔をして見る。

「……お前の知識にある神って威厳もへったくれもねーよな」

とか言われましたが。

「むぅ。私は無神論者なのだよ。『他人が思う』神はいるかもしれないが、私はその神については『いる』とは信じていない。『いる』と仮定した架空の話として楽しんでいる。実際に体験してみない限り、話として楽しむが信じているかと言えば、ノーだ」

「……にしては、空飛ぶ箒があるって信じてたじゃねーかよ」

ソードがすかさずツッコんできたし。

プイ~っと。

実際作ったからいーじゃんか!

「空飛ぶ箒があるのか!?」

リーンが完全に泣きやんで驚いた。

「……なんでこの星の人間、あ、魔族だったか……二足歩行の知的生命体は空飛ぶ箒に食いつくのだ? ――作ったぞ、ホラ」

取り出して見せてやった。

リーンの瞳がキラキラしている。

コイツは絶対、図体のデカい子供だ!

「乗って見せてやるよ」

と、これまた図体のデカい子供が言い出したぞ。

ソードが私の手から箒を奪い、ひらりとまたがって空中を飛び回る。

「おぉ! すごいな!」

リーン、大はしゃぎ。オイ、さっきまで泣いて落ち込んでいたのにもう泣きやんだのかい。

「俺にも乗らせてくれ!」

図体のデカい子供、リーンががねだってきた。

「また男か……。いいけどな、かわいい魔族の少女はいないか? コレは、かわいい少女の乗り物なのだぞ? 百歩譲ってかわいい少年の乗り物だ!」

うーんざり。

まぁ、美魔女が飛んでもいいけどさー。オッサンばっかり飛んでもなぁ。

ソードが私の言葉を聞きとがめ、空から降りてきてグリグリしてきた。

「大体が、少年少女が乗りこなせる乗り物でもねーだろが。特にスカートで乗るなんて普通の少女じゃあらゆる意味で自殺行為だろ」

むぅううぅ~。

リーンが再度ねだってくる。

「乗らせてくれ!」

「……まぁ、いいぞ」

渋々リーンに貸し出した。

まぁ、美形らしいからいっか。写真を撮ってスカーレット嬢に送ったら喜ばれるかも知れない。

ソードが軽く教えて、リーンがひらり、と乗って飛んだ。

「おぉ、さすが勇者スペック」

すぐに乗りこなしたのは、美魔女エリー公爵夫人以来だな。

リーンが飛んでいると、わらわらと魔族が寄ってきて、口を開けてリーンを見上げた。

リーンを見上げている私に、そっとソードが寄ってきて囁く。

「アレ、俺専用の……」

「リョークに言いつけるぞ!」

私は間髪をいれずにソードに怒鳴った。

まったくもう!

空飛ぶ箒になんでこだわるんだよ!

満喫したリーンがようやく降りてくると、乗りたい乗りたいと魔族たちに囲まれた。

人間に敵対心を持っているのではなかったのか、魔族たちよ。

私を人間とは思っていないとか言わないだろうな。

……というか、魔族っておっきな子供のようだな。

『人間は悪い生き物だ!』と教えられたら「なぜ悪いか」なんて考えずに素直に信じて、ちょっとキツいことを言ったり意地悪を言ったりするとすぐ泣いて、お菓子をあげると泣きやんで、面白そうな玩具に飛びつく。

子供だ!

「落ち着け、そしてとりあえず魔王様への謁見をお願いする。その後で貸してやるから。この人数に貸し出ししてたら、日が暮れてしまうだろうが」

私が諭すと、ガックリと肩を落としてしょぼくれる魔族たち。

「魔族とは、子供なのだなぁ」

私がつぶやくと、

「同感!」

と、ソードが思い切り同意してくれた。

そもそもが、謁見で私たちを呼びに来たらしい魔族たちに案内されて、謁見室へ入る。

まずリーンが進み、魔王様にひざまずいた。

その後ろに控えた私たち、ソードが私に思念で『どうする?』って聞いてきたので、

『ひとまずは、様子見で立っていよう。遊ばせてくれそうだったらひざまずく。他、ダンジョンコア様なのがわかった時点でひざまずく』

と、ソードに思念で返した。

――魔王様は帳の向こう側にいるので姿が見えない。

気配はする。しかも、かなり魔素が大きい。今までで会った中で最大級だ。

ダンジョンコア様かラスボスなのか判断出来ないな。

ただ、ラスボスなら手順を踏んで最後に戦いたいし、ダンジョンコア様なら、遊ばせてくれるなら先にケミルミネセンスの魔術をお披露目しても良いのだけれどね。