軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

320話 魔王様に謁見中

リーンが真剣に、若干涙ながらに質問した。

魔王様の答え。

「古の契約で、そうあるべきだとされているのだ。断じて人柱ではない。魔族の勇者が供を連れて王城を滅ぼすべく向かい、他の者は禁ずる。これが契約だ。私が行けば簡単に片付くだろうが、古の契約で禁じられている。禁を犯せば、魔王国が滅ぶ」

リーンは息を呑んだ。

私はその回答に首をかしげる。

まぁ、そういう契約なら、勇者だけが向かうしかないよね。誰がそういう契約にしたのかは問題だけどさ。

でも、その理由だと人柱には違いなくない?

魔王様は続ける。

「古の契約では砂漠越えの際、休憩場所が設けられていたはずだ。その休憩場所がないのが間違っている。それは調査をし、契約を見直しておく」

ふーむ。つまりは、昔はオアシスがもっと点々とあったということか。

今の言い方だと、ハーラと同じく魔導具がオアシスを作っていて、それが全部壊れたんだろうね。そこにいたスライムは気の毒だったな。

リーンは何か考え込み、私たちを振り返った。

「……お前たちからは、何かないのか?」

ソードと顔を見合わせた。私は顔を戻すと叫ぶ。

「ダンジョンで遊ばせてくれ!」

「了承した」

魔王様、即答!

シーン。私とソードとリーンは固まった。

えええええー。そんな簡単に、いいの?

「なーんて☆うっそーん!」とか言い出したりしない?

私が驚いていたら、リーンに怒られた。

「違う! お前たちは、いろいろと俺に言っただろうが!」

言ったからなによ。私は言い返した。

「だから、魔王国の事情は知らん、一般論だと念を押しただろうが。まぁ、お前が納得出来たならいいんじゃないか? ただ、今の話だと『人間が悪』ということではないな。単に、『魔族の勇者とされる者を王都に行かせなければならない』という契約を、むかーし昔にした、ということだけだ。――だけども、お前たち魔族はあんまり人間と交わらない方がいいだろうなぁ。ちょっと悪口言われてメソメソ泣くような甘ったれの弱虫は、人間とはやっていけないぞ」

……と、ここまで言って思い出した。

「あ、でもなかったな。知り合いの、人間に拾われた魔族の少年は立派にやっていけてたな。王都の学園で、きっての女ったらしとして君臨しているぞ!」

私の反論を聞いたリーンがあんぐりと口を開けた。私は続ける。

「解釈は自由だ。古の契約にのっとり少数で向かわせるのを、『多勢の魔族が生き残るための人柱だ』と考えるのか『皆を救うための名誉』だと考えるのか。ちなみに、今代の二人の勇者は前者と後者に考えが分かれ、前者は怒り心頭でうちで魔物の世話係をやることにしたそうな」

リーン、口を開けっぱなしにして私を見つめ続けた。理解出来ているのかなー?

「だから、どう解釈しようとも結果は一緒だ。お前以外の大勢の幸せのために、勇者に選ばれたお前がどうするのか。まぁ、古の、誰だかもわからない古ーい契約でまだ王都は滅んでないので、お前が王都に行って滅ぼさなくても魔族は滅びない気がするがな」

そう締めくくったらリーンがうつむいた。あ、また泣きだしたらどうしようかな……と考えていたら声がした。

「人間は、そう考えるのか」

全員が、声の主――魔王様を見た。

「古の理に感情としての理由を求めるのか。魔族の勇者が王城を目指し滅ぼそうとするのは、人柱でも名誉でもない。古の理による古の契約だ。『そうなっている』のだ。それを覆すからには、相応の報いがある。それだけだ」

ふむふむ。

……魔王様は、少なくとも魔族ではなさそうだな。その冷静で冷徹な言葉は、甘ったれの弱虫の魔族の性質ではない。私は魔王様に問うた。

「なるほど、言われてみれば確かに。ですが、覆すとはいかないまでも現時点で王城は滅んでおりません。そして魔族も滅んでおりません。これはいかなる理でしょうか」

「古の契約は『勇者は王城を滅ぼすべく向かう』である。いつまでに勇者は王城を滅ぼせ、ではない」

ふーむふむ。

なんというか……ザルなのかわざとなのかわからないなぁ、その契約。

「……ですが、古の契約で勇者の感情がわかるものなのでしょうか? 滅ぼすつもりで魔王国を出立したのか、それとも運命に逆らうべく途中で逃げ出す気満々で魔王国を出立したかかどうかなど、それこそ感情としての理由を判定基準に入れなければ難しい……いえそもそも、魔術で考えていることがわかるものなのですか?」

それってもはや妖怪の類なんだけど。魔術サトリ、とかかな?

魔王様、一言。

「わからない」

おぉう、そうですか……。私は腕を組んだ。

「……つまり、建前として『王城を滅ぼすぞー』って言いながら、魔王国の留学生として王都の学園で楽しく過ごしても問題はなさそうですね」

リーンとソードにガン見された。

「王国の勇者も『魔王を倒すぞー』って言いながら、魔王城のダンジョンで遊んでても構わない、ということですね、なるほどなるほど」

なぜか皆さんが黙る。

「…………確かに、古の契約には反していない」

沈思黙考ののち、魔王様がおっしゃった。うん、そうだろうね。

魔王様にうなずいた後、私はリーンを見て問いかけた。

「リーンよ、お前はどうする? 今の理屈でいったら、お前は確かに王城を滅ぼそうと目指した。義務は果たしたぞ。まだその気があるなら私が王都まで送ってやろう。ただ、その場で私と戦うことになるがな。そうしたら私は冒険者ランクがSになるし、お前も初志貫徹出来るしで、お互いハッピーだ。

――だが、お前のその弱さでは絶対に私には勝てんぞ。まず、私に何か言われて泣かないようにならんと、戦う前に負けるぞ?」

「お前にかなうやつなんているわけがない。絶対いない」

なんかひどいこと言われた気が? 私はふくれた。

「むぅ。じゃあ、王都には行かないか?」

「お前みたいな邪悪なやつがたくさんいるところには行きたくない」

心外な!

「もう、お菓子をやらんぞ!」

「ごめんなさい」

私が叫んだとたん謝ってきたよ。子供か! いや、子供だったな。